(1) 温州みかんの貯蔵を目的とし,150kradの電子線を照射した場合の果皮香気成分の変化について,ガスクロマトグラフィーにより検討を行なった。
(2) 官能によると,照射貯蔵区(試料3,照射区)に褐変を生じ,異臭も感じられた。
(3) 褐変の発生については小島らの報告
24)と一致しなかった。これは貯蔵後,試料を輸送した際の振動や温度変化などの諸条件が関係しているものと思われる。
(4) ガスクロマトグラフィーによると,含酸素化合物は照射直後に変化が現われたが,炭化水素化合物は照射貯蔵後に現われ,D-リモネン,β-ピネンなど,数種の成分に顕著な差が認められた。この事より,各成分の量的割合が変化して官能でも異臭を感じたものと考えられる。
本研究を行なうにあたり,電子線照射その他で大変お世話になりました理化学研究所,岡沢精茂博士,大阪府立放射線中央研究所,小島懋博士,それに香気成分の抽出およびガスクロマトグラフィーについて御助言をいただきましたお茶の水女子大学,食品化学研究室の山西貞博士に厚く御礼申し上げます。
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