わが国の温州ミカン果汁製造法の代表的搾汁方式であるインライン式とチョッパーパルパー式搾汁機を用いて1973年11月から1974年3月にわたり製造した2種の果汁品質の差,加熱による変化および時期別成分の変化について検討した結果は次のようであった。
(1) 果汁収率はチョッパーパルパー式により搾汁した果汁CPJの方が,インライン式により搾汁した果汁ILJよりも5.8~6.9%高かった。月別にみると両果汁とも11月が最高で順次低くなり3月が最低であった。
(2) 濁度はCPJの方がILJよりも高かった。パルプ含量,ブラバノンおよびヘスペリジン含量もCPJの方が若干高い値を示した。
精油量はILJに0.011~0.022%含まれ,CPJには微量であった。これは両果汁の顕著な差異といえる。
(3) 加熱によるアスコルビン酸含量の変化は両果汁とも少なかった。100℃,120分加熱においてCPJの方がわずかに減少傾向を示した。
(4) 果汁の色調は,ILJの方がCPJより11~1月において強い黄色を示したが,2~3月になると黄橙色であるCPJの色に近くなった。この傾向はΔEによって最もよく示された。
(5) カロチノイド吸収スペクトルは,生果汁のときCPJの方が高いが,90℃,2分加熱でその差が縮まり,90℃,20分加熱でわずかに逆転した。
(6) 生果汁中のペクチンエステラーゼ活性は両果汁とも90℃,30秒加熱で完全に失活した。
以上を総合すると,CPJは果汁収率が高く果汁の色調で黄橙色を示し,ILJは搾汁能率がよいので省力化ができ,色調で黄色を示し,精油を含むため風味の点ですぐれていた。
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