リンゴ酒醸造に当り,リンゴ果のmalic enzymeの活性及び安定度を高める目的で,破砕果にアンモニアを加えてpHを3.0から3.8, 4.4,及び5.0にそれぞれ上昇せしめたのち,20時間のmacerationを試みて次の結果を得た。
(1) pHの上昇につれ, macerationの時の酵素作用が活発となり,果汁の酸度,ペクチン,タンニンの減少が著しくなると共に,果汁収量が増加した。
(2) 減少する酸は専らリンゴ酸であり,乳酸及びコハク酸はやや増加した。ただし乳酸の増加は微生物の作用によるものかも知れない。
(3) アンモニア添加により,果汁の発酵速度及びエタノール生成量は増大した。
(4) アンモニアの添加量が窒素として300mg/
l程度ならば,発酵中に95%が消費され,リンゴ酒中に残存する量はわずかである。これに伴なってpHはふたたび低下する。添加量が500mg/
lでは87%, 800mg/
lでは84%が消費された。
(5) mecerationによって特に異常な成分の生成は認められず,酸味の温和なすぐれたリンゴ酒が得られる。
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