日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
24 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 浅野 三夫, 宇野 和生, 柴崎 一雄, 大久保 一良
    1977 年 24 巻 12 号 p. 607-612
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    開花後成熟までの各段階の大豆から主蛋白質の分画を試み,共存するプロテアーゼ活性とそのゲル電気泳動挙動に及ぼす影響について検討した。その結果, 40~100%硫酸アンモニウム飽和度で塩析される蛋白質区分を調製することによって蛋白質以外の不活化成分を除くことができ,この区分における成熟に伴う主蛋白質成分の挙動は既報とほぼ一致した。また,この蛋白質区分にはpH5.9と7.7に極大値を示すプロテアーゼ活性がみられ,その活性は未熟ほど高く,成熟するにつれて経日的に減少した。この区分を放置しておくことによってゲル電気泳動パターンにおけるバンドの数が多くなり,明らかに既報での初期蛋白質に相当する数バンドが検出された。しかもこの共存プロテアーゼは100℃, 10分および5M以上のグアニジン処理で失活すると思われるが, 8M尿素および1%SDS処理でも,その分解生成物に相当すると考えられる初期蛋白質バンドが尿素系ゲル電気泳動パターンに検出された。
  • 湯木 悦二, 石川 行弘
    1977 年 24 巻 12 号 p. 613-617
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    種々の組成のバタークリームを調製し,暗所保存および螢光灯照射試験を行なった結果,次のことが認められた。
    (1) 暗所保存の場合には酸化的変質は問題とならず,酸敗による酪酸臭の発生が変質の要因である。
    (2) 暗所保存における酸敗現象は卵白の添加によって著しく促進され,これの防止にエタノールの添加が効果的である。
    (3) 陳列ケース中の螢光灯による光酸化はバタークリームの変質の主たる要因と考えられ,これの防止には抗酸化剤の添加よりも卵白などの添加により光の透過量を小さくすることが効果的である。
  • 高タンパク濃度における乳化挙動
    青木 宏, 長友 るみ子, 堀田 桂子, 山口 尚子
    1977 年 24 巻 12 号 p. 618-623
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    高濃度(約17.5%)の大豆タンパク質-水分散系に大豆油を撹拌しつつ滴下,乳化させ,得られた乳化物の挙動を検討して次の結果を得た。
    (1) 等電点において乳化物は形成されなかった。
    (2) 未変性タンパク質は,熱変性したものに比べて著しく高い乳化力を示した。しかし,中性における熱変性タンパク質の乳化力は,食塩や蔗糖の添加で2倍から3倍に増加した。
    (3) 未変性タンパク質の乳化物(油:タンパク質=4:1)を加熱してから冷凍した場合,等電点付近を除いてほとんど100%の安定性を示すのに対し,熱変性タンパク質では60%に低下した。
    (4) 乳化安定性は食塩や蔗糖によって影響をうけぬ場合が多いが,中性付近における未変性タンパク質の乳化物は,蔗糖の添加により凍結に対する安定性がかなり向上した。
    (5) 乳化物の性状はpHにかかわらず粘りのあるペースト状を呈し,これを加熱すると中性から酸性で脆弱なゲルを,アルカリ性ではかなり強固な咀噛性ゲルを形成した。
    (6) 上記(3),(4)に示した凍結耐性は,高濃度の大豆タンパク質乳化物を冷凍食品に利用する場合の可能性を示唆して注目された。
  • 上田 悦範, 緒方 邦安
    1977 年 24 巻 12 号 p. 624-630
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    本研究はバナナ果実のおもな揮発性物質であるエステルの生成における,酸とアルコールの結合する機構について調べたものである。
    バナナ果肉切片より抽出したエステラーゼの活性は,熟度が進むにつれて増加するが,これを果肉切片に酸とアルコールを添加したときのエステル生成と比較すると大体において平行して増加する。しかしこれら活性には差がみられ,香りの生成のない緑熟果においてもエステラーゼ活性を示すことや,過熟段階での活性低下の時期的なずれを認めた。また維管束部におけるエステル生成の高まる熟度(黄熱果)では,これから抽出したエステラーゼの活性はほとんどなかった。さらにEPN(エステラーゼの阻害剤)を維管束部より抽出したエステラーゼに添加すると低濃度で阻害されたが, EPNを維管束部に添加し,そのエステル生成能への影響をみたところ,かなりの高濃度でないと阻害がみられなかったことから,エステラーゼのエステル生成への関与はないものと考えられた。
    つぎにacetyl CoAを経る経路をみるため, α-phenylbutyrateおよびp-hydroxymercuri-benzoateを維管束部に添加したところ,エステル生成能は著しく阻害された。バナナの果肉より,遊離の果肉細胞および維管束部を作り,これをhomogenateし, acetyl CoAをアルコールとともに添加すると非常に強いアセテートエステルの生成がみられた。このことからバナナ果実におけるエステル生成は,酸基がacyl CoAを経てアルコールと結合することにより行われるものと判断された。この反応は熟度の進んだ過熟果よりのhomogenateにおいて活性が強く,その最適pHは7.5であることを認めた。
  • 芥田 三郎, 太田 英明, 坂根 康伸, 筬島 豊
    1977 年 24 巻 12 号 p. 631-636
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    十勝地方の野生ブドウ3系統(A, BおよびC)とSeibel No.13053ブドウ中のアントシアニン色素含量は,デルフィニジン-3-モノグルコシドとして,各々, 71.9, 37.4, 97.8および64.3mg/100g新鮮重であった。
    12コのアントシアニン色素が単離され,以下のように同定された。デルフィニジン,ペチュニジン,マルビジン,ペオニジンの3-モノグルコシドおよび3, 5-ジグルコシド, p-クマル酸によってアシル化されたデルフィニジン-3-モノグルコシドと-3, 5-ジグルコシド,そしてp-クマル酸によってアシル化されたペオニジン-3, 5-ジグルコシドとマルビジン-3-モノグルコシド。
    上述の色素バターンから,本野生ブドウの種属する種について論議された。
  • 小嶋 操
    1977 年 24 巻 12 号 p. 637-642
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ヘッドスペース法により,カラシ粉,セイヨウワサビ粉および粉わさび加水分解物中のアリル芥子油の簡易定量をこころみた。
    内部標準物質として, n-プロパノールを用い, A'I/A'std値(A'IおよびA'stdは試験液中のアリル芥子油およびn-プロパノールのピーク面積)と材料採取量との関係曲線を求めたところ, 0.5容量%n-プロパノール液20ml以上の一定量の添加で, 3材料とも0.5g採取まで直線を示した。従って,次式より,アリル芥子油含量(mg/100g)は計算できることを知った。
    アリル芥子油含量=(A'I/A'std)×{C'std/(AI/Astd)
    ×(Cstd/CI)}×f
    式中, AIおよびAstdは標準液中のアリル芥子波およびn-プロパノールのピーク面積, C'stdは試験液中のn-プロパノール濃度(ml×0.965/100ml), CIおよびCstdは標準液中のアリル芥子油濃度(ml×1.020/100ml)およびn-プロパノール濃度(ml×0.965/100ml), fは材料の希釈倍数である。
    ヘッドスペース法により求めた,カラシ粉,セイヨウワサビ粉および粉わさび加水分解物中のアリル芥子油含量は, 713.8~1,008.0mg/100gで, 3者間には,ほとんど差はなかった。
  • 田所 洋弌, 中嶋 昭雄, 風間 雍
    1977 年 24 巻 12 号 p. 643-644
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    切りゴボウの変色を防ぐために水さらしによる前処理,あるいは水浸漬した場会,その過程での表面色を測定し次の結果を得た。
    (1) 水さらしを行った切りゴボウを5日間保存しその表面色の変化を検討したところ,水さらし30分以上行えばY%の低下が比較的少なかった。またY%は3日目までは多少変動するが,以後は安定していた。
    (2) 5日間水浸漬した切りゴボウの表面色Y%は4日目までは漸次低下する傾向にあった。
    (3) 切りゴボウの表面色x, yは水さらし後保存または水浸漬したままのいずれの場合もその変動は少なかった。
  • 久武 陸夫
    1977 年 24 巻 12 号 p. 645-647
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    塩漬たけのこの品質におよぼすプランチング,浮かし漬法および貯蔵温度の影響について検討し,次の結果を得た。
    (1) ブランチングを行なわず,生で塩漬したたけのこは,ブランチング区に比して色調,香気の点で劣った。
    (2) 産膜酵母対策として浮かし漬法を試みたが,長期間(4カ月以上)の塩蔵でアルコール臭を増し,品質はふり塩法より劣る。
    (3) たけのこの低温(2~3℃)塩蔵は,成分変化が少なく,生たけのこの味を保持できるが,色調,香気に難点があり,今後検討の余地がある。
  • 飯島 淑子
    1977 年 24 巻 12 号 p. 648-650
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    市販ひき肉に添加されている植物蛋白製品の簡易識別法を開発した。
    本法は,植物蛋白製品のアルカリ抽出多糖成分に着目した植物蛋白製品の分析法を発展させた方法である。すなわち,アルカリ抽出多糖の全糖量に対する「ヨード呈色度」の比率が,大豆蛋白製品と小麦蛋白製品において差があることと, 2種の大豆蛋白製品,すなわち組織状大豆蛋白製品と繊維状大豆蛋白製品の全糖量に差があることとにもとついて, 3種の植物蛋白製品を識別するものである。
    本法によって,ひき肉に添加されている植物蛋白製品が識別されることによって,その検出のみならず添加量の推定が可能になった.
    ひき肉に添加される植物蛋白製品が,さらに多様化してきた場合には,本法の適用性についても検討を行う必要があるが,現在ひき肉代替用に用いられている範囲では充分有用である。
  • 1977 年 24 巻 12 号 p. 651-656
    発行日: 1977/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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