ショ糖脂肪酸エステルとピロリン酸カリウムを主成分とする洗浄剤と中性洗剤,クエン酸などの酸との洗浄機構の相違について,トマきを使用して検討を加え,以下の結果をえた。
(1) ビルダーであるピロリン酸カリウムの銅イオンに対するキレート能は, pH8.15以下で認められず,トマト洗浄のような弱酸性におけるピロリン酸カリウムのピルダー効果の一環としての銅イオン除去作用は,キレート能によるものでないことがわかった。
(2) ビルダーとして, ピロリン酸カリウムの方が,中性,弱酸性のいずれにおいても,クエン酸ナトリウム,リンゴ酸ナトリウムより分散能がすぐれていた。
(3) ピロリン酸カリウムの銅イオン補そく能力は,弱酸性でのイオン交換反応による方が,アルカリ性でのキレート能による場合よりも大きいことが認められた。
(4) トマト洗浄でのピロリン酸カリウムのビルダー効果には,よごれの分散安定化作用(再汚染防止作用)とイオン交換反応による金属イオン補そく作用が重要な因子となっていると考えられる。
(5) ボルドーのような無機性農薬に対して,ビルダーが配合されていないために,中性洗剤は効力が認められなかったが,マラチオンのような有機性農薬に対しては,界面活性剤の存在により,洗浄液の表面張力低下能が大きく,中性洗剤,洗浄剤Aいずれも除去効果が認められた。クエン酸は表面張力低下能も小さく,マラチオンに対して,ほとんど効果を示さなかった。また,分散能から見たよごれの再汚染防止効果は,洗浄剤A,中性洗剤に比ベて,クエン酸のみでは,比較にならないほど弱いことが認められた。
(6) 酸によるボルドーの除去速度は,洗浄剤A,中性洗剤に比べて,きわめて大きく,しかも酸の化学構造の違いによる選択性は認あられず,いずれもpH3以下で同一の効果を示した。
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