インライン搾汁方式で得た温州ミカン,夏柑,カボス精油およびフロリダで採取したバレンシアオレンジ,グレープフルーツ,テンプルオレンジの精油を用い,物理化学恒数,全カロチノイド量,蒸留残渣物,トコフェロール含量について比較検討を行った。
1) 各精油間に比重,屈折率の差はみられなかった。旋光度はカボスが最も低く,温州ミカン,夏柑が中間値を示し,バレンシアオレンジ,グレープフルーツ,テンプルオレンジは高い値を示した。
2) 精油中の蒸留残渣物は温州ミカンが最も多く11.1%で,カボスの8.5%,夏柑の8%がこれに次いだ。フロリダ産の精油は総体的に少なく1.9~4.8%の範囲であった。
3) 精油の色調はそれぞれのカンキツ果皮の色と同様であったが,とくに温州ミカンの精油は赤橙色で,全カロチノイド量は79.8mg/100gと高く,他のカンキツ精油に比べて10~20倍量であった。
4) POVの測定では,対照に用いた温州ミカンの蒸留油に比し,各精油ともはるかに強い抗酸化力を示したが,なかでも温州ミカンの精油は最も強い抗酸化性を示した。
5) カンキヅ精油中のトコフェロールは,α-,γ-トコフェロールの2種類で構成され,全トコフェロール含量は温州ミカンが最も多く,精油1g中251μgで,カボスの86.8μg,夏柑の65.6μgがこれに次いだ。蒸留残渣物の多い精油程トコフェロール含量が多かったが,抗酸化性からみて本実験に用いた精油採取法は,精油の安定性のために最適の方法であるといえる。
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