園芸食品の中でも最も生産,消費の多いダイコンについて生育時期別,部位別の硝酸塩含量の分布を調べ,さらに貯蔵,漬物加工時における硝酸・亜硝酸塩含量の変化,硝酸還元酵素活性について調べた。
(1) 4月播種6月末収穫の春蒔みの早生,8月播種10月末収穫の夏みの早生二号,9月播種11月末収穫の宮重総太ダイコンの根部の硝酸塩含量は,春蒔みの早生では平均215ppmであり,他は平均450ppmであった。
(2) 根部の硝酸塩含量の部位別分布状態は,上部に少なく下部に向うにしたがい多くなることを認めた。また中央部横断切片での皮部,維管束部,髄部の間では大差はみられなかった。
(3) 春蒔みの早生ダイコンの生育中の硝酸塩含量は,播種後40日で葉柄部に1400~1600ppmと最も高く,根部700ppm,葉身部200~350ppmであったが,生育に伴って減少し,収穫適期には約1/10に減少した。また追肥回数の多かった宮重総太の硝酸塩含量の減少割合は約1/2であった。
(4) 生育中の硝酸還元酵素活性は,春蒔みの早生で葉身部が最も高く,葉柄部,根部の順に低く,葉身部は生育後期に高くなったが,葉柄部,根部の活性はほとんど変化がなかった。
(5) 春蒔みの早生,夏みの早生二号ダイコン根部の1℃, 20℃下における貯蔵中の硝酸塩含量の変化はほとんどみられなかったが,宮重総太では減少する傾向がみられた。また硝酸還元酵素活性は,夏みの早生,宮重総太とも貯蔵中比較的低かった。
(6) 根部を糠漬けし,漬け込み後の経時的変化をみたところ,硝酸塩含量はダイコン根部中では減少していくのに対し,糠床中では増加し,漬け込み後26日でほぼ同含量となった。
その間に亜硝酸塩は検出されたが,その量は0.4ppmと低かった。
(7) 根部を塩漬けし,漬け容器を6℃と20℃下において硝酸・亜硝酸塩含量の変化を調べたところ,両温度区とも漬けダイコン中の硝酸塩は漬け込み日数経過に伴い減少し,漬け汁中では増加した。亜硝酸塩は20℃下においたもので漬け込み後3日に漬けダイコン中で30ppm,漬け汁中では230ppmの生成がみられた。しかし,これをピークにその後減少した。両温度区で亜硝酸塩の生成量には顕著な差がみられ,6℃下では生成が少なかった。
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