はたけしめじの液体静置培養における植物ホルモンの影響について検討した。
すなわち,培地成分を種々変化させた42種の培地中,最も良好な発育を示したG5-D培地に,IAA, KIN及びGA
3を種々の濃度に加え,さらに添加回数を変えて静置培養し,本菌糸体の生育状態の比較観察,培地のpHの測定,培地中の還元糖及び総窒素の定量,増殖菌体量及び菌体中の粗蛋白質を定量し,本菌糸体への影響について検討した。
IAA, KIN及びGA
3添加濃度0, 0.01, 0.03, 0.10, 0.30, 1.0, 10, 100, 500及び1000ppmの培地について25℃で2ヵ月間静置培養し菌糸体の生育状態を検討した結果,植物ホルモンの種類及び濃度により菌糸体の生育に相違がみられた。KINの10ppm, GA
3の1ppm次いでIAAの1ppmにおいて比較的良好な生育を示し,添加初期に効果が認められるようであった。ホルモン濃度が高くなるほど発育抑制作用が働き,IAA及びKINの500及び1000ppmでは全く発育がみられなかった。GA
3の1000ppmでは非常に顕著な抑制効果を示した。
IAA, KIN及びGA
3添加濃度0, 1.0, 10, 100, 500及び1000ppmの培地について,1ヵ月間隔で3回,植物ホルモンを添加して培養した結果は,IAAの1ppm,GA
3の1ppm及びKINの10ppmが比較的良好な生育を示した。しかし,添加回数による影響はみられず,1回添加も2回及び3回添加も大差なかった。
25℃にて一定期間培養後,10℃の低温恒温室にて1~2ヵ月間培養したが,その後,菌糸体の生育に変化はなく,子実体の形成にはいたらなかった。
培地のpHは菌糸体の増殖とともに一次低下するが,次第に上昇し,最終値はアルカリ性を呈した。
増殖菌糸体は,乾燥物中,約20%の粗蛋白質を含有していた。
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