ある種の無機塩,有機酸および糖の添加によって生ずるアントシアニン色素溶液(pH 3.0)の濃色化(E
520nmの増大)機構解明の糸口を得るために,無機塩(過塩素酸ナトリウム)添加に伴う合成フラビリウム塩(3'-メトキシ-4', 7-ジヒドロキシフラビリウム=クロリド)の分光学的およびポーラログラフ的挙動を酸性溶液中で検討した。
(1) 一定pH (3.0~4.0)で,無機塩濃度の増加に伴いフラビリウム塩の吸光度(λ
max 468nm)および波高(-0.35V
vs.SCE)は増大した。これに対して,trans-カルコンの吸光度(λ
max 376nm)および波高(-0.77V
vs.SCE)は逆に減少した。
(2) 無機塩添加に伴う分光学的およびポーラログラフ的挙動はpHによるそれらの変化と良く対応していた。
(3) 無機塩の添加によって,フラビリウム塩(発色形)-カルコン(非発色形)の平衡がフラビリウム塩側に移動した。
(4) 以上から,合成色素溶液の無機塩添加による濃色化効果(E
486nmの増大)はカルコンをフラビリウム塩に変化させることに基づくことを明らかにした。
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