各種の縮合リン酸塩が蛋白質水溶液に共存した場合,これら溶液の沈澱反応についてpHや共存量を変えて観察し,蛋白質水溶液の沈澱反応と縮合リン酸塩の特性との関連性について試験した。
(1) 蛋白質水溶液のpHを調整した場合,UPやHPがアルブミンあるいはゼラチン溶液に共存すると,混濁程度は蛋白質のみのものより著しく高くなり,そのピークは酸性側にずれるが,沈降速度は早く,沈澱の促進作用がみられた。
(2) UPやHPがカゼインやセリシン溶液に共存すると,低いpH域においても混濁程度は蛋白質のみのものより少なく,ゲルの沈降速度も遅く沈澱の抑制作用がみられた。これらのことは生成ゲルの重量からも明らかであった。
(3) PP, APP及びTPが蛋白質水溶液に共存した場合の混濁程度はいずれのpHにおいても,また,共存量の多少や経時変化についても,蛋白質のみの溶液と大きな相違はみられず蛋白質の沈澱反応にはほとんど影響を及ぼさなかった。
(4) 縮合リン酸塩の金属イオンに対するキレート力が消失した場合は,蛋白質の沈澱作用は大部分失なわれ,縮合リン酸塩のキレート力は蛋白質水溶液の沈澱作用に大きな影響力があることが推定された。鎖状ポリリン酸の鎖長と蛋白質水溶液の沈澱反応との関連性は,鎖長(n) 9以内では関連がみられなかったが,それ以上では平均鎖長の大きいものが沈澱反応に及ぼす影響は大きかった。
(5) 縮合リン酸塩の高分子領域は蛋白質水溶液の沈澱反応に及ぼす影響は大きく,高分子領域を消失したリン酸塩は蛋白質水溶液の沈澱作用に及ぼす効果がみられなくなった。
(6) 環状構造を有するメタリン酸は蛋白質の種類によっては沈澱反応に作用を及ぼし,縮合リン酸塩の環状構造も蛋白質の沈澱作用に及ぼす因子の1つであることが推定された。
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