鶏卵卵黄を超遠心分離して得たLDL,リベチン画分,HDLの酸,アルカリによる変性を濁度,遠心分離による沈殿量,粘度,ディスク電気泳動から検索した結果を要約すると次のごとくである。
(1) 1%卵黄溶液のpH 2からpH 12までの処理で,濁度はpH 4からpH 9が最も高く,0.1%卵黄溶液ではpH 5.5濁度が最も高かった。また遠心分離による沈殿量もやはりpH 5.5が最も多かった。(2) LDL,リベチン画分,HDLの溶解性は,LDLはpH 7,リベチン画分はpH 4.5からpH 5が最も濁度が高く,遠心分離による沈殿量が多かった。HDLはpH 4より下,pH 11より上で濁度が増加し,遠心分離による沈殿量では,pH 2からpH 4で98.5%から85.5%の沈殿を得た。
(3) 卵黄の異なるpHにおける粘度の変化は,pH 4より下,pH 10より上でそれぞれ酸変性,アルカリ変性による粘度の上昇が認められた。
(4) LDL,リベチン画分,HDLの粘度変化はLDL,リベチンはpHの差による粘度変化は認められず,HDLはpH 5より下,pH 11.5より上で粘度の上昇が認められた。
(5) ディスク電気泳動で,卵黄中で酸またはアルカリにより変化を受けるのはRf 0.2以下の蛋白質バンドであった。HDLではpH 4以下でRf 0.04から0.1の蛋白質バンドが消失し,リベチン画分はpH 5以下でRf 0.3以下の蛋白質バンドが消失した。一方LDLはpH 2とpH 12の処理であらたに4本から5本の蛋白質バンドが出現した。
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