茶の重金属の黒鉛炉原子吸光法による定量法の検討を行い,次のような結果を得た。
(1) 試料溶液をそのまま黒鉛炉に注入し, Pb, Cdを定量する場合は,各測定の間に必ず約2100℃以上の高温空焼を1回行わなければ,次回の測定値が小さくなった。
(2) 灰化試料を塩酸溶液にした場合はPbの測定が不可能になった。硝酸溶液にすると測定が可能になったが,不溶物が生ずるなどの問題点があった。
(3) 干渉作用の一因としては, NaCl, KClなどアルカリハライドが上げられるが,特にNaClは0.04Mで97.6%の阻害率を示した。
(4) KI-MIBK抽出を行えば,測定値の再現性が高くなり,しかも標準添加曲線の傾きは試料間による差がほとんど無くなり,測定回数を減らすことができた。
(5) 各県の茶54点について, Cu, Pb, Cdを黒鉛炉法で測定したところ,同一母集団の試料について既に著者らが報告したフレーム法による場合と同じような傾向が見られた。 PbとCdはフレーム法より測定値がやや小さくなった。Cuの平均値は11.9μg/g, Pbは0.31μg/g,Cdは0.023μg/gであった。
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