本試験はマルチタイプピックルインジェクターを使用してハム類を製造するための技術的基本条件を確立することを目的に実験した。
ピックル注入率15%,肉中食塩含量2.2%を基本にNaNOa, NaNO
2+NaAsの添加試験を実施した結果,次のことが明らかとなった。
(1) 短期間の塩漬で,NO
2-残存量はNaNO
2添加量に大きく依存していた。すなわち,1日塩漬後はr=0.983(P<0.01),2日後は0.952(P<0.01)であった。
この期間の塩漬で食品衛生法の規制値70ppm以下にNO
2-残存量を抑制するためにはNaNO
2添加量を100ppm以下にすることが望ましかった。
(2) NaNO
2添加量と発色率は相関があり(P<0.01),100,200,300ppmの範囲内の添加で比較すると添加量が多いほど高い発色率を示した。
(3) NaNO
2添加量を100 ppmに保ち, NaAs添加量を増加させるとその増加量に応じて発色率は高くなった。特に300ppm以上添加した時に効果的であり,またNO
2-残存量は食品衛生法の規制値以下に的確に減少した。
(4)退色テストでは,NaNO
2(100 ppm)のみを添加したものは30分後に明らかにa値が減少していた。NaAsを併用したものはa値の大きな減少が認められず,b値が高くなり,添加量が多いものほどこの特徴が強かった。加熱塩漬肉色の経時的変化は最初の30分間で大きく,それ以後は小さな変化しか観察されなかった。
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