マアジ総脂質の含有率,一般性状,脂質組成および脂肪酸組成ならびに各脂質の脂肪酸組成を調べ,部位による相違および漁獲時期による相違について検討し,次のような結果を得た。
(1) 含脂率は肉部,内臓部とも春に高く秋に低かった。TLのヨウ素価は,夏に低く冬に高く変動が大きかった。ケン化価および屈折率には大きな変動はみられなかった。
(2) TLの構成脂質は,PGを含めて7区分に分画された。すなわち,主要区分は,TGであり,次いでCL,ST, PG, FFA, SEおよびDGの順であった。TLの含量は,春,夏に多く,その現象は,TGの増加が主因であった。一方,CLは年間を通じて大きな変動はみられなかった。
(3) TLの構成脂肪酸は,肉部,内臓部とも30種認められ,主要脂肪酸は,16:0, 18:1, 22:6, 18:0,20:5および16:1酸の順であった。TLの脂肪酸組成の季節的変動をみると,16:0酸の比率は,年間を通じてほとんど変動がみられなかった。一方,変動の大きかった脂肪酸は,18:1酸と22:6酸であり,18:1酸の比率は春,夏に高く,逆に22:6酸の比率は秋,冬に高かった。
(4) TGの脂肪酸組成の変動は,TLの場合と同様であった。FFAやSEでは,16:0酸の変動が大きかったが,TLのそれにあまり影響がなかった。CLの場合は,常に22:6酸が多く,特に冬期にTLの22:6酸含有率に影響を及ぼしていると考えられた。
(5) 肉部は内臓部に比べてTL量が少なく,TL中のTGの比率も低かった。脂肪酸組成では,肉部より内臓部の方がFFAを除くすべての脂質でモノエン酸の比率が高かった。
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