日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
29 巻, 12 号
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  • 生化学的手法によるフレーバー生産に関する研究(第1報)
    蟹沢 恒好, 山口 雄三, 服部 達彦
    1982 年 29 巻 12 号 p. 693-699
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    微生物リパーゼにより,乳脂肪を処理し,天然の乳製品フレーバーを作ることを目的に,各種起源のリパーゼによる生成フレーバープロフィルの比較ならびに処理条件の検討を行なった。
    (1) 基質とした全乳,クリーム,バター中の遊離脂肪酸のプロフィルは,前2者では比較的類似しており,バターのみ低級脂肪酸の含量比の小さいことが注目された。これらのプロフィルは以後のリパーゼ処理により生ずる脂肪酸プロフィルと比較された。
    (2) クリーム形態の乳脂肪を各種リパーゼで処理し,その脂肪酸プロフィルを比較したところ,動物リパーゼと微生物リパーゼのそれにおいては低級脂肪酸の分解様態にかなりの差がみられた。微生物リパーゼ間では差は比較的小さかった。官能的にみると,リパーゼの起源によりそれぞれ特有のフレーバーを有しており,未処理クリーム中の遊離脂肪酸プロフィルに近いものでは,クリームないしバター的なフレーバーの増強されていることが認められた。なかでも,Candida cylindracea lipaseにより生成されるフレーバーがパネルテストにより最もよいとの結果が得られ,以後本酵素を中心に検討を進めた。
    (3) Candida cydindracea lipaseにより処理された濃縮全乳,クリーム,バター中の遊離脂肪酸のプロフィルを比較したところ,前2者のそれはよく類似していたが,バターでは低級脂肪酸の含量比が低く,高級脂肪酸のそれの高いことが認められた。これは未処理基質中のそれぞれの遊離脂肪酸のプロフィルによく類似していた。
    (4) Candida cylindacea lipaseの乳脂肪分解においては,分解の進行度により,遊離脂肪酸プロフィルに差の生ずることが認められた。
    (5) Candida cylindracea lipaseによる濃縮全乳,クリーム,バターの分解曲線を取ると,クリームのみに反応に誘導期のあることが認められた。この現象は他のリパーゼにはみられなかった。
    (6) Candida cylindracea lipaseは濃縮全乳,クリーム,バター形態の乳脂肪を効率的に加水分解し,その処理物は各種食品に添加され,乳製品のフレーバーを効果的に発現することが明らかとなった。
  • 芳賀 聖一, 大橋 登美男
    1982 年 29 巻 12 号 p. 700-705
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    Myosin B (MB)と主要調節蛋白質を除去したWashed actomyosin (WA)の加熱ゲル形成能を検討した結果,以下のことが明らかとなった。
    (1) 50°~100℃の温度域における,加熱ゲルの弾性率,破断弾性率及び破断エネルギーは,すべてWAの方がMBより高い傾向にあり,又,WAの温度感受性の低下が認められた。
    (2) 70℃と100℃加熱における両蛋白質間でのレオロジー値の差はネットワークの形態によるところが大きく,70℃加熱ゲルはその緻密性に,100℃加熱ゲルでは規則性に差が観られた。
    (3) SDS-PAGEによると,WAの加熱ゲルは主にミオシンヘビーチェーン,アクチン,ミオシンライトチェーン2が関与するのに対し,MBのそれはMB構成蛋白質のすべてが関与していた。又,70℃よりレオロジー値において劣っていた100℃加熱ゲルには両試料共にミオシンヘビーチェーンのS-1部分が検出された。
    以上の点から,MB加熱ゲル形成向上に2つの主要調節蛋白質の効果は否定的であることが判明した。
  • 阿南 豊正, 高柳 博次, 池ケ谷 賢次郎, 中川 致之
    1982 年 29 巻 12 号 p. 706-711
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 緑茶製造中の脂肪酸の変化を明らかにするため,生葉(S-1),荒茶(S-2),荒茶を130℃で30分加熱したもの(S-3),荒茶を170℃で30分加熱したもの(S-4)の4種類の試料を調製し,粗脂質画分(CL画分)とそれをシリカゲルカラムで分画したクロロホルム画分(CH画分),アセトン画分(AC画分),メタノール画分(ME画分)について,脂肪酸を測定した。
    (2) CL画分では,荒茶製造中および荒茶をさらに加熱した場合に徐々に減少し,S-2ではS-1と比較して約0.8に,S-3では約0.7になっていた。一方,各脂肪酸別にみた場合は,いずれも減少傾向が似たような程度であったため,組成比ではあまり差がなかった。
    (3) CH画分,AC画分,ME画分とも荒茶製造中および荒茶を加熱することにより減少した。又,ME画分の減少傾向が他の画分に比べて若干大きいことが認められた。なお,S-3とS-4の差についてははっきりした傾向はつかめなかった。
    (4) C18:2とC18:3の合計値をC16:0で割った場合,S-1, S-2, S-3の間にあまり差がなかった。又,S-3とS-4を比較した場合も,AC画分のみ若干S-4の方が小さかったが他はあまり差はなかった。
  • あんに関する研究(第9報)
    塩田 芳之, 松浦 康, 畑中 千歳
    1982 年 29 巻 12 号 p. 712-719
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) アズキ子葉から温和な条件(pH 3.5~4)でペクチン性多糖を抽出し,DEAE-セルロースクロマトグラフィーにより画分I,IIおよびIIIを得た。
    (2) I,IIおよびIIIはいずれも中性糖としてガラクトース,マンノース,グルコース,キシロース,アラビノース,ラムノースおよびフコースを含んでいた。Iの主成分がグルコース(約70%)であり,ほかにキシロースとガラクトースがかなり含まれていた。IIとIIIはほぼ同じ糖組成比を示し,キシロース(約40%)が最も多く,次いでアラビノースとガラクトースが多かった。
    (3) Iは分子量約3×103の比較的低分子中性多糖であり,分画した全糖量に対する割合は約44%であった。主成分はグルコースであったが,ヨウ素反応はマイナスであり,またα-アミラーゼでは全く分解されなかった。この画分はおそらくヘミセルロース系の中性多糖であると思われる。
    (4) IとIIは分子量8×105程度のものが主体であり,ウロン酸含量はそれぞれ約32%と42%であった。いずれもendo-PGによって容易に分解され,分解率はそれぞれ約20%と43%であった。以上の結果から,IIとIIIは通常のペクチン性多糖に属するものであると判断した。
  • 石井 靖子, 山西 貞
    1982 年 29 巻 12 号 p. 720-723
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    渋柿から干柿をつくる際の経時的変化を蜂屋柿と百目柿を用い,可溶性タンニン及び遊離糖について検討した。可溶性タンニンはLowenthal-Proctor法により,遊離糖はベルトラン法及びGCを用いて分析した。
    (1) 可溶性タンニンは皮をむき,乾燥を開始した後,7日で消失した。
    (2) 脱渋される期間にグルコースとフルクトースは一時減少し又増加した。一方スクロースは逆に一時増加して減少した。そして乾燥開始後10日前後で明らかになくなった。
    (3) 全乾燥過程を通してGC分析によるグルコース,フルクトース及びスクロースの合計は,乾物中60%前後で大差はなかった。
    (4) 干柿白粉はフルクトースとグルコースのみで,その割合はフルクトース:グルコース=1:3.5~4.3であった。
  • モモ種子の脂質に関する研究(第1報)
    竹永 章生, 伊藤 真吾, 露木 英男
    1982 年 29 巻 12 号 p. 724-729
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    モモ(白鳳,倉方早生)の種子および核に含まれるTLとNLの脂質組成,脂肪酸組成などについて,各種のクロマトグラフィー(ケイ酸CC, TLC, GLCなど)を用いて研究を行い,次のような結果を得た。
    (1) TL含有率は,種子2~3%,核0.1~0.2%であった。TL中におけるNLの割合は,種子では90%以上,核では48%前後であったが,両品種間では大きな差はなかった。
    (2) 両品種とも,NLを構成する脂質は,種子では8種,核では12種であった。主要脂質は両品種とも,種子ではTG (90%前後)であり,核ではSt (30%前後),1, 2-DG (16%), TG (13%),1, 3-DG (12%前後)であった。
    (3) 両品種とも,TL, NL, SE, TG, FFA,1, 3-DG,1, 2-DG, MGを構成する脂肪酸は,14~19種であり,主要脂肪酸は,種子ではC18:2酸,C18:1酸およびC16:0酸,核ではC18:3酸,C16:0酸およびC18:2酸であった。
  • 久米 民和, 武久 正昭
    1982 年 29 巻 12 号 p. 730-732
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    血液廃液からタンパク質等を回収し飼料化することを目的として,キトサンによる凝集効果と放射線照射効果について検討し,次の結果を得た。
    (1) 血液廃液はキトサンにより凝集され,凝集のためのキトサン最適濃度は6-8×10-3%であった。
    (2) 照射した廃液ではキトサンによる凝集促進効果が認められ,3Mradの照射で促進効果は最大となった。
    (3) キトサンによる血液廃液凝集物や血粉の放射線による殺菌効果を検討した結果,総菌数は1.5-2.0Mrad,大腸菌群は0.2-0.5Mradの線量で検出限界以下となった。
  • 竹尾 忠一
    1982 年 29 巻 12 号 p. 733-735
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ICPQを用い茶の灰からケイ酸分離法により分離したSiO2のアルカリ溶液によるSiの分析法を検討し,茶および茶芽に含まれるSi濃度を定量した。
  • 山根 昭美
    1982 年 29 巻 12 号 p. 736-743
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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