日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
29 巻, 8 号
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  • 金子 憲太郎, 黒坂 光江, 前田 安彦
    1982 年 29 巻 8 号 p. 443-450
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    漬物の食味は加工原料である塩蔵野菜の“歯切れ”いわゆるテクスチャーに左右されるがその判定は経験と勘にたよっている。そこで,本報では漬物の代表的加工原料である塩蔵大根のテクスチャーについてテクスチュロメーターの切断法による“硬さ”の機器測定法を検討し,それが官能検査の評価値と相関することを明らかにした。さらに,塩蔵中におけるテクスチャーの変化の機構についても考察した。
    (1) 塩蔵大根の“歯切れ”を部位別に官能検査したところその評価値は上部と下部に5%の危険率で有意差があった。また,機器測定値とは1%の危険率で相関しており,それらの間にはS=0.09H-2.36 (S:官能検査値,H:機器測定値)の一次回帰式がなりたった。
    (2) 塩蔵大根の“歯切れ”の官能検査値は塩蔵期間が長くなるほどすぐれており,それらの評価値は1%の危険率で有意差があった。また,機器測定値とは1%の危険率で相関しており,それらの間にはS=0.26H-6.01の一次回帰式が成り立った。
    (3) 大根の“硬さ”は塩蔵期間の増加に伴って増加しており,それはカルシウム及びマグネシウム含量とも相関していた。そして,硬さ(H)とカルシウム含量(Ca)の間にはH=0.015Ca+13.90の一次回帰式,マグネシウム含量(Mg)との間にはH=0.015Mg+17.76の一次回帰式が成り立った。
    (4) 大根は塩蔵することによって塩類結合型のヘキサメタリン酸可溶性ペクチンの増加とペクチン質の低メトキシル基化が起っていた。しかし,ペクチン総量はほとんど変化しなかった。
    以上の結果,塩蔵による“硬さ”の増加は塩蔵中に起る食塩の脱水作用による組織構造の変化の他に,塩蔵中に低メトキシル基化して粘度の増加したペクチン質にカルシウムやマグネシウムのような2価イオンが結合した結果生ずるペクチン質の物性変化も大きく影響していると推察した。
  • 吉田 博, 菅原 龍幸, 林 淳三
    1982 年 29 巻 8 号 p. 451-459
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    26種の野性食性キノコ,6種の栽培食用キノコの遊離糖ぺ遊離糖アルコールおよび有機酸分布を検討し,以下の結果を得た。
    (1) 各種キノコ類の乾物重量100g当りの遊離糖は0~22.3g(平均4.2g),遊離糖アルコールは0.1~19.2g(平均7,4g),有機酸は0.3~5.8g(平均3.8g)の広範囲に分布し,キノコの種により含量にかなりの差異が認められた。
    (2) キノコ類の遊離糖および遊離糖アルコールとしてトレハロース,グルコース,マンニトール,アラビトールおよびグリセロールが確認された。各種キノコ類を構成する遊離糖および遊離糖アルコールは3~5種類の糖および糖アルコールよりなり,それらの8割以上が1~2種類の糖および糖アルコールで構成され,その分布パターンもキノコの種により特徴を有していた。
    (3) キノコ類の有機酸としてリンゴ酸,コハク酸,フマル酸,ピログルタミン酸,クエン酸,α-ケトグルタル酸,蓚酸,乳酸,酢酸および蟻酸が確認された。各種キノコ類を構成する有機酸は6~10種類の有機酸よりなり,総有機酸量の8割以上が2~3種類の有機酸で構成され,その分布パターンもキノコの種により特徴を有していた。
  • 大豆タンパク質のゲル化に関する食品工学的研究(第4報)
    三浦 芳助, 米安 実
    1982 年 29 巻 8 号 p. 460-465
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    高温高湿度(40℃・R.H. 75%)に30日間貯蔵した“古大豆”から調製した酸沈殿タンパク質溶液の粘性とゲル形成性に及ぼす電解還元処理の影響について検討を行い,次の結果を得た。
    (1) 電解還元処理(電流:10mA,電流密度:2.5mA/cmcm2)にともない,溶液のpHならびにSH基含量は増加する傾向を示した。
    (2) 溶液の粘度は,処理時間経過とともに上昇し,120分処理区で最大に達し,それ以降はやや減少した。加熱による粘度上昇は,電解還元処理を施していないものが最も顕著であった。
    (3) GDL-ゲルの硬さは,電解還元処理を行ったものが未処理のものより硬くなる傾向を示し,粘度変化と同様に,120分処理区で最大値を有した。
    (4) 過度の加熱を受けたタンパク質溶液をゲル化した場合,電解還元処理を施したものについては,ゲルの硬さの低下がかなり抑制されることが認められた。
  • 大豆タンパク質のゲル化に関する食品工学的研究(第5報)
    米安 実, 三浦 芳助
    1982 年 29 巻 8 号 p. 466-471
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    貯蔵大豆から調製した酸沈殿タンパク質溶液の誘電的性質に及ぼす電解還元処理の影響について検討した。
    (1) 誘電率および誘電率増加度は,電解還元処理時間の経過にともなって,いったん増大したのち,減少することが認められた。
    (2) 誘電率は,高い周波数依存性を有し,1~10MHz/secの周波数領域で異常分散を生じることが認められた。
    (3) 誘電損失の分散曲線は,1~3MHz/secの周波数領域に最大値を有し,そのピーク周波数は,電解還元処理時間の経過にともなって,いったん低周波数側に移動したのち,高周波数側にもどることが認められた。
    (4) 電気伝導度は,高い周波数依存性を有し,10~100MHz/secの周波数領域では,電解還元処理時間の違いによって,電気伝導度がかなり異なることが認められた。
    (5) 誘電損失と誘電率を周波数ごとにプロットしたものにCOLE-COLEの円弧則を適用して求めた双極子モーメントと誘電緩和時間およびその分布係数は,電解還元処理時間の経過にともなって,いったん増大したのち,ゆるやかに減少することが認められた。
  • モーラ ゴーラム, 伊藤 三郎
    1982 年 29 巻 8 号 p. 472-476
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) グァバ果実の構成糖は,フラクトース,グルコース,イノシトールおよびシュークロースであり,その量的関係は,フラクトース>グルコース>シュークロース>イノシトールの順であった。
    (2) フラクトースおよびグルコース量は,成熟中に大きな変化は示さなかったが,追熟時に急激な増加が見られた。一方,微量糖成分であるシュークロースおよびイノシトールは,追熟中にわずかに増加した。
    (3) 未熟果並びに成熟果中のフラクトースおよびグルコース量は,成熟果のフラクトースを除き,桃色種よりも白色種の方が高い値を示した。一方,完追熟果においては,フラクトース,グルコース共に桃色種が高い値を示した。
    (4) 追熟中のフラクトースとググルコースとの量比は,白及び桃色種各々ほぼ一定の値を示し,完追熟果では,フラクトースの割合は白色種55.93%,色種58.28%桃であった。
    (5) インベルタゼ活性は,追熟中に現われ,完追熟果で最大となった。また,その最適pHは3.5-4.0であった。アミラーゼ活性は,成熟・追熟に従って増加し,その最適pHは7.0であった。追熟果においては,インベルターゼ活性は白色種が桃色種に比べ高く,一方,アミラーゼ活性は桃色種が白色種の2.1倍の値を示した。
  • トマトstrainsにおけるカロチノイドに関する研究(第4報)
    広田 才之, 佐藤 寿, 露木 英男
    1982 年 29 巻 8 号 p. 477-483
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    純系strain 6種の成熟トマトのカロチノイドを分析し,カロチン11種とキサントフィル類を一括して分離し,それらの含有量を比較検討した。
    カロチノイドの種類や含有量は各strainで著しい特微を示した。すなわちRed strainはリコピンを多く含有し,少量のβ-カロチン,微量のγ-カロチンを含有し,Yellow strainは概してカロチノイド含有量が少なく,ごく僅かのβ-カロチンを含有していた。Tangerine strainはζ-カロチンを多く含有するが,かなりのプロリコピン,プロノイロスポレンなどポリ-シス型のカロチノイドを含有していた。
    Apricot strainはカロチノイド含有量は少ないが,かなりの量のβ-カロチンを含有していた。Beta orange strainはβ-カロチンを多く含有し,このほか,僅かのリコピンと微量のγ-カロチンを含有していた。Delta strainはδ-カロチンとリコピンをかなり含有し,少量のβ-カロチン,微量のα-カロチンおよびγ-カロチンを含有していた。
    なおRed strain, Tangerine strain, Beta orange strainおよびDelta strainはかなりの量のフィトエンと少量のフィトフルエンを含有していたが,Yellow strainとApricot strainはフィトフルエンを痕跡程度含有していた。キサントフィル類はいずれのstrainにも含有され,Yellow strainでは僅かに少ないが,そのほかの各strainでは含有量にあまり差異は認められなかった。
  • カキの脂質について(第3報)
    鈴木 公一, 伊藤 真吾, 露木 英男
    1982 年 29 巻 8 号 p. 484-489
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    未熟期(6月採取)および完熟期(11月採取)のカキ果実(富有・禅寺丸・甲州百目の3品種)を果肉部と果皮部に分け,総脂質および中性脂質の品種別・熟期別・部位別相違について,CC, TLCおよびGLCにより研究を行った。
    (1) 果実の総脂質含有率は0.1~0.3%であり,品種別,部位別,熟期別の大きな相違はみられなかった。総脂質中の中性脂質含有率は73.5~88.6%であり,熟期の進行と共に減少した。
    (2) 総脂質中には13~16種の脂肪酸が認められたが,主要脂肪酸はリノレン酸(20.2~31.1%),オレイン酸(20.4~28.2%),パルミチン酸(16.8~23.6%)およびパルミトレイン酸(12.1~18.3%)であった。脂肪酸組成の部位別相違はあまりみられなかったが,熟度の進行に伴いC14酸とC16酸が減少しC18酸含有率が増加した。
    (3) 果肉部にふくまれる中性脂質の主要成分は,トリアシルグリセリン(23.2~33.3%),1, 2-ジアシルグリセリン(13.8~242%)およびステロール(12.0~20.9%)であった。一方,果皮部にふくまれる中性脂質の主要成分としてステロール(9.5~12.1%)が検出されたが,未知成分もかなり多かった。中性脂質を構成する脂質組成の顕著な相違として,トリアシルグリセリンが果肉部では23.2~33.3%であったが,果皮部では5.5~7.9%と低かった。
  • 酒井 信, 三木 正之
    1982 年 29 巻 8 号 p. 490-495
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    Mass transfer in fish flesh has been reported in our previous papers, especially in extraction of fish oils and water-soluble-proteins. In this study transfer rates were measured in extraction of salts at several conditions and in penetration of NaCl. In both operations, under the every conditions employed transfer rates were represented by FICK's law of diffusion, and the mass transfer rates perpendicular to the direction of fiber were in accordance with those parallel to that. The effect of temperature on diffusivity in fish flesh was same as that in water. But the rates of diffusion in denatured flesh by cooking were lowered in comparison with those in raw flesh. Correlation of the diffusivities of several kind of salts in fish flesh were different from those in water depending upon the valencies of the cations. And these phenomena were also observed in the case of simultaneous diffusion of uni and bi-valent cations.
  • 星 祐二, 山内 文男, 柴崎 一雄
    1982 年 29 巻 8 号 p. 496-500
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    大豆酸沈殿タンパク質(APP)を相対湿度11%, 47%, 96%, 50℃で貯蔵してAPPの変化に及ぼす湿度の影響を検討した。相対湿度(RH) 96%では数日で溶解度が急激に低下したのに対して,RH 11%では45日間貯蔵しても溶解度はほとんど減少しなかった。ゲルろ過の結果から大豆タンパク質が重合して貯蔵中に不溶化することが認められた。またRH 11%で45日間貯蔵した時には,タンパク質の4次構造にも変化がなかった。貯蔵中の不溶化には水素結合,疎水結合,ジスルフィド結合が相互に関与していることが示唆された。
  • 遠山 良, 関沢 憲夫, 村井 一男, 石谷 孝佑
    1982 年 29 巻 8 号 p. 501-506
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    玄そば貯蔵中の品質変化におよぼす,温度,水分,および炭酸ガス充填の効果について発芽率および化学的指標により検討を加えた。
    (1) 温度および水分含量が高いほど品質の低下が著しく,30℃で貯蔵した場合には,水分含量で13.8%以上の試験区はすべて10ヶ月以内に品質の低下が見られた。
    (2) 30℃の条件下では炭酸ガスによる品質保持効果はほとんど認められなかった。
    (3) 脂肪酸度上昇の原因物質はほとんどが遊離脂肪酸であると考えられた。
    (4) 長期貯蔵した玄ソバの総脂肪酸と遊離脂肪酸の脂肪酸組成に差が見られ,前者と較べ後者では主としてC20以上の脂肪酸が少なく,リノール酸が多かった。
  • 1982 年 29 巻 8 号 p. A48-A54
    発行日: 1982/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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