マアジを7月と9月に採取し,普通肉,血合肉,皮膚,肝臓および内臓の5部位を試料として,脂質の性状の部位別相違を調べた。以下に得られた結果を示す。
(1) TL含有量は,内臓で最も多く,普通肉で最も少なかった。
(2) TLの外観および屈折率は,普通肉,血合肉および皮膚ではほぼ同様であったが,肝臓と内臓では前3者と異なっていた。 TLの酸価は, 7月では肝臓と内臓で,9月では血合肉と普通肉で高かった。ケン化価は肝臓で高く,ヨウ素価は普通肉と血合肉で高かった。
(3) TLをNL区分とCL区分に分画した結果, NL区分がTLの79.0~96.4%を占め,特に,皮膚と内臓に高かった。 CL区分の含有量(g/100g試料)は,肝臓で多かった。
(4) NL区分の構成脂質は, TG, ST, FFA, HC, SE,DG, MGの7種であり,主要脂質はTGで93.6~97.5%を占めていた。 NL区分中の各脂質の含有率には部位別相違はほとんどみられなかった。
(5) TLを構成する脂肪酸は約30種認められ,主要脂肪酸は, 16:0酸, 18:1酸, 22:6酸, 20:5酸, 18:0酸および16:1酸であり, 18:1酸含有率が肝臓において特に高かった。肝臓以外の4部位の脂肪酸組成には部位別相違はほとんどみられなかった。
(6) NL区分を構成する脂質のうち, TG, FFA, SEの構成脂肪酸は, TLの場合と同様に約30種認められ,主要脂肪酸は, 16:0酸, 18:1酸, 22:6酸, 20:5酸,18:0酸および16:1酸であった。部位別相違をみると,TGはTLの場合とほぼ同様であり,肝臓において18:1酸含有率が高かった。 FFAとSEは部位別相違に明白な傾向がみられなかった。
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