アガロースのゲル化に際して,ゼラチンの寄与をさらに詳しく調べるために,ゼラチンを無水コハク酸でアシル化してゼラチンの側鎖基を変えたアシル化ゼラチンとアガロースとの混合ゲルのレオロジー的性質に与えるpHの影響を研究した。低分子量のアガロース濃度を1%(w/w)に統一し,その中に2~18% (w/w)のアシル化ゼラチンを加えて混合ゲルを調製した。さらに高分子量のアガロースの濃度を1% (w/w)に統一し,アシル化ゼラチン濃度を3% (w/w)および12% (w/w)にして混合ゲルを調製した。これらのゲルのpHは4.01および9.18に統一し,動的粘弾性測定を行なった。既報
6)と同様に岡野の式を非圧縮性物質の場合に書きなおした式を用いて混合ゲルの弾性率を計算し,実測値と比較した。さらに,これらとあわせて,アシル化ゼラチンゲルの熟成後のE'の経時変化を調べた。その結果は以下のとおりであった。
(1) 低温領域において,アシル化ゼラチン濃度が3%(w/w)では,等イオン点とpHの値が遠い場合は混合系のE'に極大値が見られた。また,高温領域において,アシル化ゼラチン濃度が約10% (w/w)以上でE'の減少する傾向に差異が見られた。
(2) アシル化ゼラチン濃度が3% (w/w)では,等イオン点とpHの値が遠い場合は混合系のE'の実測値は計算値より高い値を示したが,近い場合はそれの逆になった。
(3) アシル化ゼラチン濃度が12% (w/w)では,等イオン点とpHの値に関係なく混合系のE'の実測値は計算値より低い値を示した。
(4) アシル化ゼラチンゲルをアニーリング後,一定温度におけるE'の変化は約2日間続いた。さらに,ゲルを2日間熟成後,一定温度に保ったとき,E'が一定値を示すのに約4時間以上必要であった。
抄録全体を表示