小麦胚芽油と大豆油,綿実油,コーン油との熱酸化および自動酸化の安定性を比較した。また,加熱油中に生ずる栄養阻害作用をもつグリセリド二量体を測定した。さらに,小麦胚芽油中の不ケン化物の組成を明らかにするとともに,Toc以外の抗酸化性成分の検索を行った。
(1) 熱酸化油は,180±2℃で1日8時間,計48時間加熱して調製した。熱酸化油の一般特数の測定から,小麦胚芽油の熱酸化に対する安定性は大豆油よりは良いが,綿実油とコーン油には劣っていた。新鮮油と熱酸化油の自動酸化に対する安定性をオーブン試験により検討したところ,熱酸化に対する安定性と同様な傾向にあった。
(2) 熱酸化油中のグリセリド二量体量は各油間にほとんど差はなく,その生成量は栄養的に問題となる量ではなかった。
(3) 小麦胚芽油中の不ケン化物は大部分がステロールであり,Tocの量は少ないが,他の植物油と比べればその量は極めて多く,とくに生理活性の強いαとβが多かった。
(4) 不ケン化物中のToc以外の抗酸化性成分の検索を行ったが,その存在は認められなかった。
(5) 小麦胚芽油は熱酸化に対する安定性は余り良くないので,フライ油には適していないと思われる。しかし,リノール酸と生理活性の強いα-とβ-Tocを多く含むので,かけ油など新鮮油としての摂取が望ましい。
本研究は財団法人食生活研究会の研究費によった。ここに厚く謝意を表する。
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