生シイタケ(傘の開ききったシイタケ)の傘部および柄部に含まれる脂質の化学的性状を比較するために,ケイ酸カラムクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー,シンクログラフィー,ガスクロマトグラフィーを用いて実験を行い,次のような結果を得た。
(1) 総脂質含有率は,傘部で0.50g/100gfr. wt,柄部で0,45g/100g fr. wtであり,これらを無水物換算すると傘部で4.58%,柄部で2.65%となり,傘部が柄部よりやや多い値を示した。
(2) 傘部,柄部とも総脂質を構成する脂肪酸は約10種認められ,その主要脂肪酸は両部位とも18:2酸(傘部:71.8%,柄部:76.3%), 16:0酸(傘部:19.1%,柄部:15.8%)および18:1酸(傘部:4.8%,柄部:5.0%)であった。
(3) 両部位とも総脂質中に占める各脂質区分の含有率は,中性脂質区分(46.7~48.8%)とリン脂質区分(42.0~43.8%)が高く,糖脂質区分は9.2~9.5%と低い値を示した。
(4) 両部位とも中性脂質区分を構成する脂質は5種認められ,その主要脂質はトリアシルグリセロール(傘部:58.0%,柄部:58.5%)であり,さらにステロールエステル(傘部:16.9%,柄部:17.4%),ステロール(傘部:16.4%,柄部:15.6%),ジアシルグリセロール(傘部:6.0%,柄部:5.8%),モノアシルグリセロール(傘部:1.1%,柄部:1.3%)とつづいた。
(5) 両部位ともリン脂質区分を構成する脂質は5種認められ,主要脂質はホスファチジルエタノールアミン(傘部:60.2%,柄部:58.3%)であり,次いでホスファチジルコリン(傘部:17.3%,柄部:19.5%),カルジオリピン(傘部:14.0%,柄部:12.8%),リゾホスファチジルコリン(傘部:4.8%,柄部:2.8%)とつづいた。
(6) 両部位とも中性脂質区分,リン脂質区分を構成する脂肪酸は約10種認められた。主要脂肪酸は,18:2酸(63.7~92.7%)であり,次いで16:0酸(3.1~21.8%)と18:1酸(1.5~8.8%)であった。
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