糸引納豆10社34点,ヒキワリ納豆8社11点の計45点における,B. nattoが生産する揮発性代謝産物を分析した。粘質物除去のため,硫酸銅溶液を抽出液として用いた。中性揮発性物質であるアセトインと2, 3-ブタンジオールはExtrelut pre-packed column 20を用い,酢酸メチル・エタノール(9:1)にて抽出し,GC分析した。揮発性有機酸は塩化ナトリウム飽和下酒石酸酸性における水蒸気蒸留にて調製し,GC分析した。これらの方法を用いることにより,各揮発性成分はいずれも平均90%以上の回収率を示した。
市販納豆及びヒキワリ納豆から,アセトイン,2, 3-ブタンジオール,酢酸,プロピオン酸,イソ酪酸,2-メチル酪酸及び3-メチル酪酸を検出した。アセトインの含有量は0~1646.5mg/100g(平均319.5), 2, 3-ブタンジオールは0~164.3 (38.1),酢酸は116.1~921.0(378.1),プロピオン酸は1.5~14.2 (7.9),イソ酪酸は20.2~286.5 (123.5), 2-メチル酪酸は5.3~332.5(104.4),3-メチル酪酸はtrace~375.0 (77.0)であった。(乾燥重量値)
アセトインと2, 3-ブタンジオール及び3種の分岐酸の間には,高い正の相関(相関係数0.82以上)が認められた。
納豆から新たに検出された2-メチル酪酸は,そのp-ブロモフェナシルエステルの旋光度,及びその水酸化カリウムによる加水分解物の旋光度が,各々〔α〕21D+10.3,+7.0であったので,(S)-(+)-2-methylbutyric acidと同定した。本物質は納豆の香りに関与するものと推定された。
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