ナメコの出荷調整過程での根切り処理が,その後のナメコの鮮度・品質に及ぼす影響について調べた。
(1) 根切り処理することで,収穫後のナメコの開傘・菌柄の伸長は抑えられたが,組織は水浸状になり褐変しやすくなった。そのため,20℃における鮮度保持は根切りをしていないもので多少良い結果となった。
(2) 根切りすることにより,CO2排出量は多く,PPO活性も高くなった。しかし,貯蔵中の鮮度低下の一つの指標である組織抽出液のpHの低下,滴定酸度の増加は,根切りをしないものとほとんど差異はなかった。
(3) ナメコ収穫時の可溶性糖類はトレハロースがもっとも多く,貯蔵に伴い著しく減少した。一方,マンニトール,グルコースの含量は,収穫当日,わずかであったが,貯蔵ナメコの主要な糖類となった。以上の変化は根切りの有無による顕著な差はなかった。これに対して,フルクトースは,根切りをしないナメコで貯蔵中蓄積したが,根切りをしたものではほとんどみられなかった。
(4) 可溶性窒素化合物,遊離アミノ酸含量とも貯蔵中増加したが,根切り処理したものでその増加は顕著であった。アミノ酸組成としては,アラニン,バリン,イソロイシン,ロイシン,γ-アミノ酪酸,メチオニンの貯蔵に伴う著しい増加を認めた。一方,プロテアーゼ活性は根切り処理したものが貯蔵期間を通じ高い値を保っていた。
(5) 根切り処理は多くの労力を要し,かつナメコの品質低下を促進することが明らかになったので,根切り処理をせずに鮮度保持をはかる技術の開発が望まれる。
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