日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
32 巻, 6 号
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  • (コーヒーの香りに関する研究(第7報)
    下田 満哉, 和田 浩二, 柴田 敬二, 筬島 豊
    1985 年 32 巻 6 号 p. 377-385
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    コーヒー香気の客観的評価が,ガスクロマトグラフ分析と主成分分析を組み合せることにより行われた。(1)アラビカ種とロブスタ種のコーヒーは,第1,第2主成分により明瞭に分けられた。アラビカ種の各銘柄の豆は,主成分分析によってカップテストの結果と関係付けることができた。(2) ロブスタ種とアラビカ種の豆を1:1の割合でブレンドした場合,ロブスタ種の特性がより強く現われた。3:1のブレンドでは,ロブスタ種に極めて類似した香気特性を示したのに対し,1:3のブレンドではもとのコーヒーとはまったく異った新たな香気特性を示した。(3) LightからFrenchまでの焙煎度の豆で,焙煎度と主成分値の間に良好な関係が認められ,アラビカ種とロブスタ種の豆では,香気の生成に及ぼす焙煎の影響に違いが認められた。
  • 多重バイト試験による米飯粒の物性の検討と食感との関連(第1報)
    辻 昭二郎
    1985 年 32 巻 6 号 p. 386-390
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    多重バイト試験により,米飯粒の不均一なテクスチャーをうるちおよびもち米飯について解析した。比較のため,既報の米飯レベルの圧縮およびバイト試験もあわせて行い,両米飯の食感との関連および老化にともなう変化を検討した。すべての測定は米飯粒5粒について行った。
    (1) 流体に適用する多重バイト試験は固体にも応用でき,米飯粒の外層部と内層部のテクスチャーの差を推定するのに極めて有用であった。
    (2) 米飯粒のテクスチャーは不均一であり,もち米飯はうるち米飯に比し外層部がとくにやわらかいことが示された。これはもち米飯特有の食感とも関連している。
    (3) バイト試験でも同様にもち米飯がうるち米飯に比し外層部がやわらかい傾向が示された。また,もちとうるち米飯の食感の差や老化にともなう変化もfractuabilityや既報のF.I.で示しうる。
    (4) 圧縮試験によるもちとうるち米飯などの実用的な測定の場合,一点測定では低い圧縮率の測定が有用である。
    (5) 米飯の放置にともなう変化の程度は米飯粒の外層部と内層部では異なることが推定された。24時間放置後の硬化は外層部が大きく,とくにもち米飯ではこの変化が大きかった。
  • 松田 典彦, 駒木 勝, 市川 良子, 後藤 幸恵
    1985 年 32 巻 6 号 p. 391-398
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    変敗缶詰から分離した偏性嫌気性有芽胞細菌122株を簡易法により同定したところ99株(81%)を同定することができた。これらはC. sporogenes 65株,C. thermosaccharolyticum 14株,C. pasteuriarnum 11株,D. nigrificans 4株,C. butyricum3株,C. perfringens2株であった。簡易法により同定できなかった23株のうち10株はC. thermoaceticumであった。
    得られた結果に基づぎ,変敗缶詰由来偏性嫌気性有芽胞細菌の簡易鑑別表を作成した。本表によれば,発育最適温度,好気的発育,芽胞及び芽胞嚢の形,レシチナーゼ及びリバーゼの産生,牛乳の発酵及び消化のほか,必要に応じて,デンプン分解,毒素産生または硫酸塩還元のいずれかを調べることにより変敗原因菌を鑑別できる。
  • 松田 典彦, 駒木 勝, 市川 良子, 後藤 幸恵
    1985 年 32 巻 6 号 p. 399-406
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    変敗缶詰から分離した好気性有芽胞細菌228株を簡易法により同定したところ,199株(87%)を同定することができた。これらはB. coagulans 56株,B. subtitis48株,B. licheniformis 36株,B. circulans 22株,B. stearothermophilus 20株,B. cereus 8株,B.macerans 3株,B. polymyxa 2株,B. pumilus 2株及びB. brevis 2株であった。残る未同定株はすべてカタラーゼ陽性であり,Bacillus属細菌と推定された。
    得られた結果に基づき,変敗缶詰由来好気性有芽胞細菌のための簡易鑑別表を示した。
  • 福田 靖子, 大澤 俊彦, 並木 満夫
    1985 年 32 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ゴマ種子を37℃,暗所で発芽させ,抗酸化性について検討し,次の結果を得た。
    (1) ゴマ種子は,24時間で幼根が現われ,7日目で全長が約11cm(平均)となり,発芽2日目から4日目にかけて,長さ,生鮮物重量,クロロホルム・メタノール抽出量に大きな変化が認められた。
    (2) メタノール抽出区分の抗酸化性は,発芽により著して増大し,4日目にピークがみられた。(3) メタノール抽出区分の全フェノール量も発芽に伴い増加した。
    (4) セザモリン,セザミンは発芽2日目には著しく減少した。セザモリンの減少にもかかわらず,セザモールの生成は認められなかった。またγ-トコフェノールは,種子では,約200μg/g seed存在していたが,発芽に伴い急激に減少し,発芽7日目には40μg/g seedとなった。アスコルビン酸は,発芽に伴い著しく増加し,4日目で約10mg%(生鮮物重量当り)になり,以後減少した。
    (5) (2)で増えた抗酸化力は,(4)よりセザモール,γ-トコフェロール,アスコルビン酸ではないことが明らかとなった。
    (6) 全フェノール量,280nmに紫外部吸収をもつ物質の増大,TLC上のフェノール呈色反応から,未知の抗酸化性物質は,フェノール性物質の可能性が強い。
  • キノコ類の生理化学的特性と品質保持に関する研究(第7報)
    南出 隆久, 岩田 隆, 沖野 宏士
    1985 年 32 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ナメコの出荷調整過程での根切り処理が,その後のナメコの鮮度・品質に及ぼす影響について調べた。
    (1) 根切り処理することで,収穫後のナメコの開傘・菌柄の伸長は抑えられたが,組織は水浸状になり褐変しやすくなった。そのため,20℃における鮮度保持は根切りをしていないもので多少良い結果となった。
    (2) 根切りすることにより,CO2排出量は多く,PPO活性も高くなった。しかし,貯蔵中の鮮度低下の一つの指標である組織抽出液のpHの低下,滴定酸度の増加は,根切りをしないものとほとんど差異はなかった。
    (3) ナメコ収穫時の可溶性糖類はトレハロースがもっとも多く,貯蔵に伴い著しく減少した。一方,マンニトール,グルコースの含量は,収穫当日,わずかであったが,貯蔵ナメコの主要な糖類となった。以上の変化は根切りの有無による顕著な差はなかった。これに対して,フルクトースは,根切りをしないナメコで貯蔵中蓄積したが,根切りをしたものではほとんどみられなかった。
    (4) 可溶性窒素化合物,遊離アミノ酸含量とも貯蔵中増加したが,根切り処理したものでその増加は顕著であった。アミノ酸組成としては,アラニン,バリン,イソロイシン,ロイシン,γ-アミノ酪酸,メチオニンの貯蔵に伴う著しい増加を認めた。一方,プロテアーゼ活性は根切り処理したものが貯蔵期間を通じ高い値を保っていた。
    (5) 根切り処理は多くの労力を要し,かつナメコの品質低下を促進することが明らかになったので,根切り処理をせずに鮮度保持をはかる技術の開発が望まれる。
  • 志村 進, 伊東 禧男
    1985 年 32 巻 6 号 p. 419-425
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    Penicillum oxalicumと同定された一菌株が,シュクロースからフラクトースを転移して2種類の三糖類を生成することを見出した。本菌の培養〓液を使用して三糖類生成の最適条件を検討したところ,温度は50℃, pHは5.0であった。また本酵素の熱及びpHに対する安定性を調べたところ15分間処理では55℃以下で安定であり,pH 7.9以下では30℃, 20時間の放置でも安定であった。このフラクトース転移酵素の生産のための培養条件を検討した結果,炭素源としてはシュクロースあるいはイソマルチュロースを用いたときにのみ,本酵素は多量に得られた。窒素源としては酵母エキスやコーンスティープリカーが有効であり,無機性の窒素源は適していなかった。また無機塩としては硫酸第一鉄と硫酸マンガンの添加が有効であった。これらの諸因子を改変した結果,基本培地よりも約3倍の酵素活性を得ることが出来た。
  • 平田 孝, Abdus-Salam SHEIKH, 石谷 孝佑
    1985 年 32 巻 6 号 p. 426-431
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    包装材料の水蒸気透過性を求める手法について検討した。水蒸気透過性を測定しようとする包装材料の小袋に塩化カルシウムを入れて密封し,一定湿度下で温度を連続的に上昇させて経時的な透過水分量をプロットした。水分透過曲線を時間に対して微分し,得られる透過速度をアレニウス式と等置することにより,簡易に活性化エネルギーを求めることができた。この手法で求めた値は従来の定温法で求めた値と良く一致したばかりでなく,この値を用いて任意温度における乾のりの吸湿過程をシミュレートした結果,実測値と良く一致した。
  • 筒井 知己
    1985 年 32 巻 6 号 p. 432-439
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    鶏卵卵黄低密度リポタンパク質をホスホリパーゼCまたはホスホリパーゼDで処理した物の溶解性,粘度,免疫的性質,各種染色液による染色性とその顕微鏡的観察から以下の結果を得た。
    (1) 5% LDL溶液にホスホリパーゼCを75μg添加し,30℃で30分間反応させた場合,透過度は1.7%まで減少し,LDLのホスホリパーゼC処理は,LDL溶液の濁度を著しく増加させることがわかった。
    (2) 1% LDL溶液200mlにホスホリパーゼC溶液(1mg/ml)を1ml加え,30℃で24時間反応させた溶液では,LDLが白濁し上層に浮上した。しかしこの溶液の相対粘度は,元のLDL溶液とほとんど変らなかった。
    (3) LDLをホスホリパーゼCで24時間処理した物の極性脂質の薄層クロマトグラムでは,ホスファチジルコリンのスポットはほとんど消失し,ホスファチジルエタノールアミン等のスポットがわずかに検出された。
    (4) LDLをホスホリパーゼCまたはホスホリパーゼDで24時間処理した物は,LDL抗体に対して,LDLとほぼ同様の定量沈降曲を示した。
    (5) LDLをホスホリパーゼCで24時間処理した物は,免疫拡散法では寒天ゲルへの浸透性が低いためか,LDL抗体と沈降線を生じなかった。一方LDLをホスホリパーゼDで24時間処理した物は,LDL抗体と沈降線を生じた。
    (6) LDLをホスホリパーゼCで24時間処理した物は,スダンIII染色液の染色性が高く,またナイルブルー染色液でも中性脂肪の染色性が高かった。以上の結果,LDLのホスホリパーゼC処理で,LDLは多少の構造変化をおこしており,LDL中の疎水性部位が露出してきているように思われた。
  • 中村 泰彦, 有村 いたり, 木原 和子
    1985 年 32 巻 6 号 p. 440-443
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    デヒドロァスコルビン酸(DHA)の水溶液を30℃に10日間放置したものは大腸菌の増殖を抑制し,その作用はCu2+により強められた。増殖抑制の最低濃度は単独では0.2%であったが,0.1mMのCu2+の存在下では0.05%であった。DHA, DHAの溶液を3日間放置したもの,2, 3-ジケトグロン酸も増殖抑制的に作用したが,抑制力はいずれも,DHAの溶液を10日間放置したものより弱かった。10日放置溶液のDowex 1×8による分画により,酸性下で295nmに吸収極大を持つ1画分と,2, 4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応する1画分に強い増殖抑制作用が認められた。
  • 松田 典彦, 駒木 勝, 市川 良子, 後藤 幸恵
    1985 年 32 巻 6 号 p. 444-449
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    1968~80年の13年間に実施した,変敗缶詰食品の微生物学的試験の成績と変敗原因について述べた。結果は次の通りであった。
    (1) 変敗製品から菌株の純粋分離に成功したのは,供試445検体中の290検体(65%)であった。果実・果汁類製品では分離が困難で,純粋分離に成功したのはわずかに34% (71検体中の24検体)であった。
    (2) 変敗製品の容器が顕著に膨脹しているにもかかわらず,培地中でガスを産生しない菌株のみが分離されたものが供試194検体中24検体(12%)あった。
    (3) 容器の密封性が良好であったにもかかわらず,有芽胞細菌以外の菌株が分離された検体が供試223検体中に73検体(33%)あった。
    (4) 分離菌株の種類別には,122検体から好気性有芽胞細菌が,76検体から偏性嫌気性有芽胞細菌が,115検体から無芽胞桿菌が,12検体から球菌が,16検体から酵母が得られた。
    (5) 最終的に推定された変敗原因は,微生物に起因するもの177例中加熱殺菌不足88例(49%),未殺菌1例(1%未満),加熱殺菌後の二次的微生物汚染40例(23%),初期変敗3例(2%),高温放置4例(2%)及び原因不明42例(24%)であった。
  • 小林 邦彦, 小材 恵子, 松冨 直利, 加藤 昭夫, 磯部 暁
    1985 年 32 巻 6 号 p. 450-455
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    川野なつだいだいの赤色系枝変り系統ベニアマナツ,サマーレッドの色調とカロチノイド組成を調べ,対照品種のナツダイダイ,川野なつだいだいと比較検討した。果皮の色調の肉眼観察では,対照に比べてベニアマナツは濃い橙色,サマーレッドは赤味をおびた橙色であった。これに対して色差計にて測定した結果はベニアマナツはa値が大きく,θ値が減少し,彩度が大きいことが認められた。一方,サマーレッドはa値が大きく,b値はかえってやや減少して,θ値が一層減少することとなったが,彩度は殆んど変化しないことが認められた。このような測色結果は肉眼観察とよく一致していた。
    これら果皮のカロチノイド組成を分析した結果,対照に比べて,ベニアマナツは総カロチノイド量が多く,カロチノイドパターンには大差は認められなかった。サマーレッドは総カロチノイド量には大差はなく,カロチノイドパターンで新しく赤色のβ-シトラウリンが約10%形成されることが認められた。これらカロチノイド含量とパターンの違いが色調に表われたと推察された。
    果肉についてはベニアマナツのみがやや濃い橙色であったが,これは総カロチノイド量の増大によるものと考えられた。他品種間には大差は認められなかった。
  • 1985 年 32 巻 6 号 p. A41-A48
    発行日: 1985/06/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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