シイタケ子実体の発育過程ならびに収穫後における低分子炭水化物,高分子炭水化物および有機酸の動態を菌傘部,菌柄部の両部位より検討し,以下の結果を得た.
(1) 発育過程における菌傘部および菌柄部の遊離糖含量は,乾物重量100g当り,2.3~7.0g, 2.9~4.5g,遊離糖アルコール含量は,8.8~12.8g, 12.5~23.3gであり,その含量変化パターンは部位により異なった.また,収穫後における含量は両部位ともに減少の傾向にあった.
(2) 遊離糖,遊離糖アルコールとしてトレハロース,グルコース,フルクトース,アラビトールおよびマンニトールが同定され,主要成分はアラビトール,マンニトール,トレハロースの3成分であった.発育過程中の各成分の含量変化パターンはそれぞれ異なり,また,部位により挙動を異にし,とくに発育後期の菌傘部にトレハロースの,菌柄部にアラビトールの蓄積傾向がみられた.収穫後における各成分含量は減少の傾向にあり,とくにアラビトールの減少は顕著であった.
(3) 発育過程における多糖成分含量は,菌傘部で38.8~40.2g,菌柄部で50.4~51.5gであり,菌柄部は菌傘部の1.25~1.32倍量の含量を示していた.6種の多糖画分中,熱ギ酸可溶多糖,アルカリ可溶・酸可溶多糖,熱アルカリ可溶多糖,アルカリ可溶・酸不溶多糖およびキチンは発育過程ならびに収穫後においてもほとんど含量に変化はみられなかった.しかしながら,グリコーゲン様多糖は収穫後において漸減傾向を示し,他の多糖画分とその挙動を異にした.
(4) 発育過程における有機酸含量は,菌傘部で1.8~3.0g,菌柄部で1.3~1.9gであり,含量の変化バターンは部位により異なった.収穫後における有機酸含量は,両部位ともに3日目までは増加したが,以後は減少の一途をたどった.
(5) 菌傘部および菌柄部より10種類の有機酸が同定されたが,主要成分はリンゴ酸,ピログルタミン酸,クエン酸およびフマル酸の4成分であった.発育過程中における各種有機酸の含量変化パターンはそれぞれ異なり,また,部位により挙動を異にした.収穫後における各種有機酸含量は減少の傾向にあったが,フマル酸,ピログルタミン酸およびクエン酸の3成分は,3日目までは増加し,以後は減少する含量変化パターンをとり,他の有機酸類とその挙動を異にした.
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