ヒラタケ子実体の発育過程ならびに収穫後における低分子炭水化物,高分子炭水化物および有機酸の動態を菌傘部,菌柄部,菌柄部基部の3部位より検討し,以下の結果を得た.
(1) 発育過程における菌傘部,菌柄部,菌柄部基部の遊離糖含量は,乾物重量100g当たり,6.8~15.6g,10.1~27.2g, 9.3~24.9gに,遊離糖アルコール含量は,3.0~3.8g, 3.2~3.6g, 1.0~2.9gにあり,その含量変化のパターンは部位により異なった.遊離糖,遊離糖アルコールとしてトレハロース,マンニトール,グルコース,フルクトース,アラビトールが同定され,主要成分はトレハロースとマンニトールであった.発育過程および収穫後の各成分の含量変化パターンはそれぞれ異なり,また,部位により挙動を異にした.収穫後における各成分含量は減少の傾向にあったが,マンニトールは,貯蔵3日後までは増加し,以後は減少する含量変化パターンをとり,他の糖・糖アルコールとその挙動を異にした.
(2) 発育過程における菌傘部,菌柄部,菌柄部基部の多糖成分含量は,乾物重量100g当たり,40.3~44.3g,47.3~50.2g, 54.2~55.8gであり,その含量は,菌柄部基部>菌柄部>菌傘部の順序にあった.6種の多糖画分中,熱ギ酸可溶多糖,アルカリ可溶・酸可溶多糖,熱アルカリ可溶多糖,アルカリ可溶・酸不溶多糖は発育過程ならびに収穫後において漸減傾向を示し,他の多糖画分とその挙動を異にした.
(3) 発育過程における菌傘部,菌柄部,菌柄部基部の有機酸含量は,乾物重量100g当たり,3.6~4.4g, 4.5~5.1g, 6.0~7.4gであり,その含量は,菌柄部基部>菌柄部>菌傘部であった.各部位より同様の11種類の有機酸が同定され,その分布パターンは,菌傘部,菌柄部,菌柄部基部でそれぞれ異なっていた.各部位ともに,発育過程中は顕著な含量変動は示さなかったが収穫後は急増傾向を示した.
抄録全体を表示