ホタテガイ閉殻筋(貝柱)の特徴的な味の構成成分を解明する目的で,エキス成分の詳細な分析と,分析値に基づいて調製した合成エキスのオミッションテストを行い,次の結果を得た.
(1) エキス成分の遊離アミノ酸としては,多量のGly(貝柱100g中1925mg,以下同様), Tau(784mg),Arg(323mg), Ala(256mg), Glu(140mg)が含まれ,これら5種のアミノ酸で全遊離アミノ酸の97%を占めていた.核酸関連物質ではAMP(172mg)が主成分であった.その他の含窒素成分としては多量のグリシンベタイン(339mg)のほか,ホマリン,トリゴネリン,トリメチルアミンオキシド,トリメチルアミンを認めた.これらの含窒素成分によるエキス窒素(764mg)の回収率は96%に達し,エキス中の主要窒素成分の分布はほぼ完全に解明し得たと判断された.
(2)無窒素成分としては,多量のグリコーゲン(4890mg)と少量のコハク酸(10mg)を認めた.無機イオンではNa
+(73mg),K
+(218mg),Cl
-(95mg),PO4
3- (213mg)が主な成分であった.258日本食品工業学会誌 第35巻 第4号 1988年4月(38)
(3) 上記の分析値に基づいて調製した合成エキスを用い,3点識別法によりオミッションテストを行った結果,Gly, Glu, Ala, Arg, AMP, Na
+, K
+, Cl
-が呈味有効成分と判定された.本研究は,文部省科学研究費特定研究『食品機能』の補助金を得て行ったものであり,記して謝意を表する.
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