米糠脂質の分解機構を解明するため,米糠より油貯蔵体であるスフェロゾームを単離し,その性状を調べるとともに,スフェロゾームの崩壊要因について検討を行った.
(1) 米糠スフェロゾームは1~3μmの大きさであり,脂質98.7%,タンパク質1.3%から成り,中性脂質:糖脂質:リン脂質の割合は,各々98.6:0.5:0.9であった.
(2) 中性脂質成分としては,ワックス・炭化水素,トリアシルグリセロール,遊離脂肪酸, 1, 3, 1, 2ジアシルグリセロール,ステロール,モノアシルグリセロールが検出されたが,トリアシルグリセロールが主成分であった.
(3) 糖脂質ではモノグリコシルジグリセライド,ステリルグルコサイド,セレブロシド,モノグリコシルジグリセライド,ジグリコシルジグリセライドおよびジグリコシルモノグリセライドの6成分が検出され,ステリルグリコサイドが約60%を占め主成分であった.
(4) リン脂質ではジホスファチジルグリセロール, Nアシルポスファチジルエタノールアミン,N-アシルリゾボスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルグリセロール,ホスファチジルコリン,ボスファチジン酸,ホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,リゾホスファチジルエタノールァミンおよびリゾホスファチジルコリンの11成分が検出され,ホスファチジルコリンが約64%を占め主成分であった.
(5) 米糠スフェロゾームの崩壊要因について検討した結果,スフェロゾームはその膜成分であるホスファチジルコリンがホスホリパーゼDによって分解されることによって,その膜機能が失われ崩壊することが明らかになった.
(6) 糠脂質の分解機構の大要を知るため,スフェロゾームにホスホリパーゼDおよびリパーゼを作用させ,その脂質変化を調べた.その結果,反応初期にホスファチジルコリンの減少とスフェロゾームの崩壊が見られ,その後に貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールの分解が確認された.このことから,米糠脂質の分解は従来言われていた,リパーゼ単独の作用ではなくホスホリパーゼDとリパーゼの共同作用により進行し,ホスホリパーゼDは脂質分解のイニシエーターとしての役割を持つことが明らかになった.
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