日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
36 巻, 6 号
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  • デューラム小麦粉と普通小麦粉の比較
    稲熊 隆博, 相原 茂夫, 森田 雄平
    1989 年 36 巻 6 号 p. 437-447
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    デューラム,強力,薄力の3種の小麦粉にグリアジンとグルテニンを添加してファリノグラフを利用してドウ物性の変化を調べた.グリアジンの添加については3種の小麦粉ともに似の変化を示し,タンパク含量の増加と共に最大コンシステンシーが上昇してPeak time が減少したがTolerance indexも顕著に増大した.一方,グルテニンの添加ではTolerance indexの値は小さかったが,普通小麦粉の場合はコンシステンシーの上昇にしたがってPeak timeが減少したのに対して,デューラム小麦粉では逆に増大する傾向を示した.澱粉と単一成分のタンパク質からなる系のドウ物性はどの組合せにおいても類似のファリノグラフパターンを呈し,グルテニンとグリアジンの両方が存在しないと安定なドウが形成されないことが明らかとなった.また,上記タンパク質-澱粉系のグルテンマトリックスを光学顕微鏡で観察した結果,単一タンパク質系ではマトリックス構造が互いに孤立した状態で分散していたのに対して完全な小麦粉ドウの場合はグルテンの網目構造が緻密で組織化されていた.また,デューラム小麦粉の系では相対的に網目構造の網目が大きく,ファリノグラフ吸水率は低いが,ドウ形成に要する時間は長く,安定度の高いドウを形成した.ドウのグルテンマトリックスの保水性は本質的にグルテニンの特性に依存すると考えられるが,その水分含量はグルテンマトリックス中でのグリアジンの存在状態によって調節されていることが示唆された.
  • 大谷 敏郎, 安藤 一嘉, 殿原 慶三, 太田 英明, 名和 義彦, 渡辺 敦夫
    1989 年 36 巻 6 号 p. 448-454
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    無機材質膜を用いて,二十世紀ナシ果汁の清澄化を試み以下の結果を得た.
    (1) 孔径0.5μmのセラミックス製支持体を用いたZrダイナミックUF膜での15℃における最適操作条件は圧力0.1MPa,膜面流束2.Om・s-1であった.
    (2) ZrダイナミックUF膜(操作圧力: 0.2MPa)または,無機材質の限外濾過膜(M1;分画分子量6~8万)を用いることで最も効率的に良好な清澄果汁を得ることができた.また,目的によっては自己阻止型ダイナミック膜にも適用の可能性があった.
    (3) 得られた清澄果汁の成分は現行の酵素処理法のものと比べて,糖,酸などでは大きな差はなかった.膜処理したものは,,色調面で優れ,清澄化での指標となるペクチン量は少なく,全体に明るい透明度の高い果汁が得られた.
    離した果汁を用いて清澄化を行うと透過流束の低下が認められ,懸濁物質が存在する方が高い透過流束が得られた.
    (5) 酵素(スクラーゼN)の添加は成分組成におよぼす影響は少なく,透過流束の向上に効果が認められた.
    (6) 清澄果汁の成分組成の比較から,現行の酵素法を無機材質膜による膜法におきかえても十分に清澄化が可能なことが明らかになった.
  • 杉沢 博, 山本 雅子, 田村 啓敏, 高木 信雄
    1989 年 36 巻 6 号 p. 455-462
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ネーブル果皮精油の香気成分の品種間差異を検討する目的で,ワシントン,福本紅,大三島,白柳の4品種のネーブル果皮から連続蒸留抽出法により精油成分を分離した. GCおよびGC/MSにより,香気成分として炭化水素化合物12成分,含酸素化合物65成分を同定した.さらに,これら4品種間の精油成分の比較およびにおい特性の差異を検討した結果, 4品種の果皮精油のにおいの差異は香気成分間相互の量的関係に起因し,それらの香気としての寄与程度の差によると推定した.
  • 川村 淳, 竹尾 忠一
    1989 年 36 巻 6 号 p. 463-467
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    茶葉より抽出したカテキン遊離型画分〔(-)-エピカテキン, (-)-エピガロカテキン〕である粗カテキンA分画(CF-Aと略),エステル型画分〔(-)-エピカテキンガレート,(-)-エピガロカテキンガレート〕である粗カテキンB分画(CF-Bと略),それらの混合物であるCF-mix,および(-)-エピガロカテキンガレート(EGCg)のS. mutansに対する抗菌作用について試験し,グルコン酸クロルヘキシジンの抗菌作用と比較した.またう蝕予防剤としての利用を前提としたいくつかの試験を行ない,次の結果を得た.
    (1) 生育阻害最低濃度はCF-Aで400~100μg/ml,CF-Bで100~50μg/ml,CF-mixで200~100μg/ml, EGCgで100-50μg/ml,およびグルコン酸クロルヘキシジンで1.6μg/ml以下であった.(2) 殺菌効果の検定では初菌数3.3×107にCF-Bを(31)川村・竹尾:茶葉カテキンの抗菌作用4675.0×103, 1.0×104μg/mlずつの添加で5.5×105, 3.6×104, 1.0×102にそれぞれ減少し, グルコン酸クロルヘキシジンでは初菌数3.3×107に2.0×103μg/ml添加で3.0×10 3に減少した.(3) カテキンの抗菌作用におよぼす歯磨剤主要成分の影響はラウリル硫酸ナトリウムおよびD-ソルビトーでは影響はみられず,安息香酸ナトリウムは僅かに相乗作用がみられた.
  • 高野 克己, 鴨居 郁三, 小原 哲二郎
    1989 年 36 巻 6 号 p. 468-474
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    米糠脂質の分解機構を解明するため,米糠より油貯蔵体であるスフェロゾームを単離し,その性状を調べるとともに,スフェロゾームの崩壊要因について検討を行った.
    (1) 米糠スフェロゾームは1~3μmの大きさであり,脂質98.7%,タンパク質1.3%から成り,中性脂質:糖脂質:リン脂質の割合は,各々98.6:0.5:0.9であった.
    (2) 中性脂質成分としては,ワックス・炭化水素,トリアシルグリセロール,遊離脂肪酸, 1, 3, 1, 2ジアシルグリセロール,ステロール,モノアシルグリセロールが検出されたが,トリアシルグリセロールが主成分であった.
    (3) 糖脂質ではモノグリコシルジグリセライド,ステリルグルコサイド,セレブロシド,モノグリコシルジグリセライド,ジグリコシルジグリセライドおよびジグリコシルモノグリセライドの6成分が検出され,ステリルグリコサイドが約60%を占め主成分であった.
    (4) リン脂質ではジホスファチジルグリセロール, Nアシルポスファチジルエタノールアミン,N-アシルリゾボスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルグリセロール,ホスファチジルコリン,ボスファチジン酸,ホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,リゾホスファチジルエタノールァミンおよびリゾホスファチジルコリンの11成分が検出され,ホスファチジルコリンが約64%を占め主成分であった.
    (5) 米糠スフェロゾームの崩壊要因について検討した結果,スフェロゾームはその膜成分であるホスファチジルコリンがホスホリパーゼDによって分解されることによって,その膜機能が失われ崩壊することが明らかになった.
    (6) 糠脂質の分解機構の大要を知るため,スフェロゾームにホスホリパーゼDおよびリパーゼを作用させ,その脂質変化を調べた.その結果,反応初期にホスファチジルコリンの減少とスフェロゾームの崩壊が見られ,その後に貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールの分解が確認された.このことから,米糠脂質の分解は従来言われていた,リパーゼ単独の作用ではなくホスホリパーゼDとリパーゼの共同作用により進行し,ホスホリパーゼDは脂質分解のイニシエーターとしての役割を持つことが明らかになった.
  • 薄木 理一郎
    1989 年 36 巻 6 号 p. 475-478
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    市販されているChlを含むフライ食品の劣化度を測定し, Chlを含まない食品のそれと比較した.また,開封後の劣化に光がどのように影響するかを検討し,次のような結果を得た.
    (1) 製造から2カ月以内のCh1含有市販スナック食品に含まれる油脂の劣化は, Chlを含まない食品のそれと同程度であった.
    (2) 開封して2週間室温に放置すると,光があたらなくとも酸化が進行した.
    (3) 野菜スナックを実験室窓際に2週間放置すると,
  • 宇佐美 昭次, 桐村 光太郎, 伊東 よし男, 志村 進, 上沼 敏彦, 森 隆雄
    1989 年 36 巻 6 号 p. 479-481
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    リパーゼ高生産菌を得るために,カカオ豆およびチョコレート工場周辺の土壌より菌株の探索を行った.その結果,菌体外に多量のリパーゼを生産する1菌株を取得し,菌学的検討を行い, Rhizopus oligosporusと同定した.本供試菌についてリパーゼ生産のための最適培養条件の検討を行い,ペプトン5% (w/v),グルコース2% (w/v),オリーブ油2% (v/v),レシチン0.2%(w/v)に微量の各種無機塩類を加えた最適培地を決定した.また培養経過から温度30℃, 5日間の条件を得た.これらの条件下で振とう培養することにより供試菌の菌体外リパーゼ活性は16.7U/mlに達した.
  • 橋本 俊郎, 小島 均, 田所 洋弌
    1989 年 36 巻 6 号 p. 482-485
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/06/23
    ジャーナル フリー
    日本で栽培されている長大根の根部にあるヒドロキシ桂皮酸類の種類と量を,ペーパークロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィーで調べた.日本産大根根部の主要なヒドロキシ桂皮酸はp-クマール酸リンゴ酸エステルとフェルラ酸リンゴ酸エステルであった. 13品種の大根について,エステル型のヒドロキシ桂皮酸類をアルカリ加水分解で遊離型として定量した結果,エステル型のp-クマール酸およびフェルラ酸が,各々,新鮮大根1kg当たり1.26-8.58mgおよび0.24-1.12mg含まれていた.
  • 劉 勤晋, 堀田 博, 原 利男, 八木 昭仁, 伊奈 和夫
    1989 年 36 巻 6 号 p. 486-489
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    (1) 四川プアール茶とその原料緑茶および雲南プアール泊茶の香りの成分を分析した.
    (2) 四川プアール茶と原料緑茶の間では10種類の成分が量的に増加し,これらは製造工程中酸化によって生成したものと思われる.
    (3) 雲南プアール沱茶と四川プアール茶の間では比較的類似な香気パターンを示したが,数種の成分で量的な差異を示し,雲南産では茶葉大葉種の特徴を示していた.
  • 小川 美江子, 神谷 智恵子, 飯田 有子
    1989 年 36 巻 6 号 p. 490-494
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    銘柄による14種類のグリーンコーヒー豆,それらを焙焼したコーヒー豆及びそのそれぞれからのコーヒー浸出液と38種類のインスタントコーヒーについてトコフェロール類(α-, β-, γ-, δ-Toc)の含量を高速液体クロマトグラフィーにより分別定量した.
    14種類のグリーンコーヒー豆の総Toc含量は5.5~15.7mg,平均11.9mg/100gであり,その中で12種類は10mg/100g以上であった. α-Toc含量は2.3~4.5mg,平均3.5g/100g, β-Toc含量は3.2~11.4mg,平均8.4mg/100gであった.焙焼コーヒー豆のToc含量は減少し,総Toc 5.0~15.5mg/100g, αToc及びβ-Tocはそれぞれ1.9~4.1mg,平均3.2mg/100g, 2.7~11.4mg,平均8.0mg/100gであった.それぞれの残存率は総Toc 83~99%(平均94%),α-Toc 79~100%(平均91%), β-Toc 84~100%(平均95%)であった. γ-及びδ-Tocはグリーンコーヒー豆,焙焼コーヒー豆いずれにも検出されなかったα-:β-Tocの含量比は1試料が約1:1であったのを除外して,他は1試料が1:1.5, 12試料が1:2~3であった.
    コーヒー浸出液及びインスタントコーヒーの100ml中のToc含量はどちらも平均0.007mg,インスタントミルクコーヒーは0.010mg/100mlであり,極めて僅少であった.コーヒー浸出液には焙焼コーヒー豆から0.4~1.8%のTocが浸出されたに過ぎず,粕の中に98~99%のTocが残存していることが分かった.
  • 島田 和子, 上村 敦子, 田部 和美, 菅 昭人
    1989 年 36 巻 6 号 p. 495-501
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    粒うに塩辛の熟成中の成分変化と食塩(4~10%)ならびにエタノール濃度(8~12%)の関係について検討した.
    (1) うに塩辛の熟成中のpH変化は食塩,アルコール濃度に依存しなかった.
    (2) 熟成中,生菌数は増加しないことから,塩辛の成分変化は微生物にはほとんど依存しないものと考えられた.
    (3) 塩辛は,熟成期間が長いほど軟らかくなった.低食塩,低アルコール添加の試料で熟成初期に軟化がみられた以外には,熟成期間6か月以降,硬さの変化に食塩アルコール濃度の影響は認められなかった.
    (4) エキス中の全糖ならびに還元糖量は熟成期間中増加し,増加傾向は低食塩かつ低エタノール濃度の試料ほど著しかった.
    (6) エキス中のVBNは熟成中増加し,低食塩濃度かつ低エタノール濃度試料ほどその傾向が大であった.塩辛らしい味と判断された試料のVBN値は20~50mg/100gの範囲にあった.
  • 田島 真, 石間 紀男, 大塚 雍雄, 玉木 佳男
    1989 年 36 巻 6 号 p. 502-507
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    食品添加物,酵素等食品産業に関連した化学物質の特性値を集積したデータベースを作成した.
  • 青果物の減圧貯蔵法に関する研究(第1報)
    弦間 洋, 大垣 智昭, 福島 正幸, 山田 唯雄, 能勢 吉弘
    1989 年 36 巻 6 号 p. 508-518
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Effect of low pressure was investigated on the preservation of avocado and papay a Fruits with a view of applying this technique to the storage of fruits by using a pract ical apparatus. Effects of a low partial pressure of oxygen at a low temperature were clearly de monstrated on the retardation of ripening, prevention of deterioration and decay compared w ith normal pressure storage at a low temperature. The maturity of papaya fruit stored at a low pressure and low temperature was dalayed by 3 weeks compared with the fruits kep t at a normal pressure and low temperature during 40 days storage, when the fruits used were immature at the time of harvest or prior to transportation. The firmness and the peel coloration of the papaya fruits could be kept in better condition during 40 days storage period by treatment with hot water dips, than those of the fruits not subjected to hot water dips.
  • 昭和63年度学会賞
    高野 克己
    1989 年 36 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 敦夫
    1989 年 36 巻 6 号 p. 525-529
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 1989 年 36 巻 6 号 p. A30-A33
    発行日: 1989/06/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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