日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
39 巻, 2 号
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  • 土井 豊彦, 神崎 幹雄, 中沼 浩, 渋谷 美雪, 松本 清
    1992 年 39 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    生乳に混入した微生物数を微生物の力タラーゼに着目し,その活性値から推定する方法を検討した.力タラーゼ活性を測定するときの過酸化水素濃度は高いほど高い活性値が得られたが,同時に盲検値も高くなるため試料1.1mlに対し, 30%過酸化水素水を2μl使うことにした.生乳中には微生物以外にも牛体に由来するカタラーゼが含まれているので,これを分別する必要があった.まず,両者のpH特性を調べた結果,牛由来の力タラーゼはpH9を超すと明確に活性が低下するのに対し,3種の微生物の懸濁液や生乳はpH11付近でも高い活性が見られ,pH11に調整すると,大部分微生物に由来する活性として測定されると考えられた.一方,カタラーゼの阻害物質としてL-アスコルビン酸と,フェニールヒドラジンの特性を調べた結果,フェニールヒドラジンは微生物の活性にも影響を与えたが,L-アスコルビン酸は微生物に対する阻害作用は小さく牛由来酵素を選択的に阻害した.生乳試料を使ってpHを調整する方法とL-アスコルビン酸を加える方法を比較した結果,pHを調整する方法が培養で得た微生物数と,より高い相関があることがわかった.培養で得られた微生物数とpH11におけるカタラーゼ活性を使って得られた回帰式を実際の生乳試料に適用した結果,ほぼ実用になる精度が得られた.
  • 酵素分解による血液タンパクの培地素材への応用(第2報)
    沼田 正寛, 山田 浩之, 結城 忍, 宮口 右二, 中村 豊郎
    1992 年 39 巻 2 号 p. 142-150
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    豚血球部のアルカリ酵素分解物(EHB-1),酸性酵素分解物(EHB-2),酸加水分解物(AHB)および血球から調製したグロビンの酵素分解物(EHG)を用いて,E. coli, B. subtilisおよびL. plantarumの発育に対するペプトンとしての効果を検討し,以下の結果を得た.
    (1) 4種類の分解物はほぼ同じアミノ酸組成を示し,アミノ酸組成の差が菌の発育に及ぼす影響は少ないと考えられた.酵素分解物は分子量500~3000程度のペプチドが多く存在したが, EHGでより低分子側のペプチドが多く認められた.
    (2) これらを唯一の窒素源とした培養試験では, E.coliおよびB. subtilisの発育は用いた血球分解物の相違によって大きく異なった.その中で, EHB-1の発育支持力は最大であったが, L. plantarumはいずれの分解物でも顕著な発育を示さなかった.
    (3) EHB-2およびEHGにおける前2菌種の発育はAHBの混合によって著しく向上した.一方, L. plantarumではEHGとAHBを混合した場合にだけその効果が認められた.
    (4) 酵素分解物を分画分子量1000の平膜を用いた限外濾過により2分画すると,それぞれの画分に顕著な発育促進効果は認められなかった.
    (5) 以上を総合すると,酵素分解物には菌種に応じて優れた発育促進作用が認められ,その作用の発現には分子量1000の平膜で分画される低分子側と高分子側の両方が関与すると推定された.
  • 藤田 哲, 鈴木 一昭
    1992 年 39 巻 2 号 p. 151-160
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    リゾリン脂質と食品用の界面活性剤との混合によって起こる相乗的な界面活性の向上などについて検討した.
    (1) 供試した食品用界面活性剤は, HLBの高いポリグリセリン脂肪酸エステルを除くと,水溶性がやや低く耐塩性や対酸性に乏しいが,比較的少量のリゾリン脂質の添加によって混合物の水溶性,耐酸・耐塩性が向上した.
    食品用界面活性剤/大豆リゾリン脂質混合物の界面活性については,(2)表面張力低下にやや大きな相乗作用があり,(3)浸透ぬれ,油脂のO/W乳化,微粒子分散,油溶性物質の可溶化についてある程度の相乗効果またはリゾリン脂質の性質への類似が認められ,少量の大豆リゾリン脂質添加によって活性が強まった.しかしその程度は大豆リゾリン脂質の活性の水準を越えなかった.(4)耐酸・耐塩性向上の効果は,酸や食塩を含む水溶液中への油脂の安定乳化に有効に利用できた.
    以上の現象の成因は,比較的親水性の低い食品用界面活性剤の大型のミセルは,水和力の大きいヘッドグループをもったリゾリン脂質が加わることによってミセルが小型化し,混合物は後者の性質に近い界面化学的性質を持つに至るためと推定した.このようにして食品用界面活性剤は大豆リゾリン脂質との併用によって,その応用範囲を拡大できるものと考えた.
  • 周 燕飛, 阿部 一博, 岩田 隆
    1992 年 39 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ピーマン‘ニューエース’果実を4分割,縦切り,輪切り及び細断に調製し,低密度ポリエチレン袋(厚さ0.02mm)で密封包装し, 1℃及び20℃で保存して,切断様式が保存性及び生理的・化学的変化に及ぼす影響を調べた.
    (1) 細断したものはもっとも早く軟化・腐敗し,次いで縦切り, 4分割の順となり,輪切りは劣化が遅かった.その相違は切断損傷の比率とともに,切断方向が影響するものと考えられた.
    (2) 包装袋内ではO2濃度の低下, CO2及びエチレン濃度の増大がみられたが,その程度は劣化の速度とほぼ一致し,輪切りは縦切りよりも変化が小さかった.
    (3) 切断した果実のクロロフィル,アスコルビン酸,フェノール物質及び遊離アミノ酸の含量は保存中の品質劣化にもかかわらず,全果と同様あまり変化がなく,処理間の差も少なかった.
  • 釘宮 正往
    1992 年 39 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    実験室で調製した小豆煮豆のアン粒子の構成に及ぼす煮豆調製条件(小豆の種類,水浸漬時間,加熱温度,加熱時間,煮汁のpH)の影響を調べた.その結果, 12種類の小豆を用いて適正な煮熟時間で調製した煮豆では,崩壊粒子は0~2.4%,損傷粒子は0.9~10.9%であった.水浸漬時間(最大24時間)は,適正な煮熟時間には影響したが,崩壊粒子の割合(2%以下)には影響しなかった.しかし,損傷粒子の割合は浸漬時間が長くなると増加した. 100~120℃では,加熱温度が高くなるほど,適正な煮熟時間は短くなったが,いずれの粒子の割合も増加した. 100及び120℃では,適正な煮熟時間を越えて加熱した場合,時間が長くなるほどいずれの粒子の割合も増加する傾向にあった.また,煮汁のpHの影響を調べた結果,適正な煮熟時間はpHが高いほど短くなったが,いずれの粒子の割合もpH 6付近で少なく,このpHが低くまたは高くなるのに伴って増加した.これらの結果から,アン中のアン粒子の構成は,小豆の種類,水浸漬や煮熟の工程でも影響を受けるのではないかと考察した.
  • 田中 龍夫, 畑中 耕一
    1992 年 39 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) 高圧によるアフターアシディフィケーション抑制効果
    市販のプレーンヨーグルトを高圧処理して10℃で2週間の保存試験を行った結果, 200MPa以上の圧力で処理したヨーグルトはアフターアシディフィケーションの抑制効果が認められた.
    (2) 高圧処理によるヨーグルト組織の変化20℃以下で高圧処理した場合には, 1000MPaでも未処理品に近い組織を維持することができた.しかし, 25℃以上で高圧処理するとヨーグルト組織の肌目が粗くなる傾向が認められた.
    (3) 高圧処理によるヨーグルト中の乳酸菌の殺菌効果300MPa以下の処理では,乳酸菌の減少はほとんど見られなかった.高圧による,ヨーグルト中の乳酸菌の殺菌効果は,比較的小さく700MPaまでの圧力処理では,処理直後乳酸菌の生菌が検出された.しかし, 400MPa以上で圧力処理したヨーグルト中の乳酸菌は, 10℃での保存中に,経時的に生菌数が減少した.
  • 容器詰飲料における成分の保存に関する研究(第1報)
    末松 伸一, 久延 義弘, 西郷 英昭, 松田 良子, 原 京子, 小松 美博
    1992 年 39 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    茶類飲料の機能性成分のうち,特に重要なカフェインおよびカテキン類に着目し,茶類飲料缶詰の市販品についてその含有量の実態調査を行うとともに,飲料缶詰製造時における有効成分の変化を緑茶を中心に調査した.
    実態調査の結果,茶類飲料缶詰のカフェイン濃度は,標準的な入れ方の2/3程度であり,カテキン類の濃度は1/2~2/3程度であった.また, pHの低い方が概ねカテキン類の残存率は高かった.
    試作缶詰と標品を用いた実験より以下の結果を得た.
    カテキン類はカフェインと比較して熱に不安定であった.加熱殺菌により殆んどのカテキン類は減少したが,二次生成物である+Cが著しく増加した. +Cの増加は一ECの異性化に由来すると推定した.クエン酸添加の弱酸性条件下で加熱処理することにより+Cの生成は抑制され,カテキン類の安定化が計れた.
    従来,茶類飲料缶詰の製造工程では炭酸水素ナトリウムの添加により, pHをやや高めに調整して抽出することが推奨されているが,カテキン類の保護の観点からは浸出液のpHをむしろ微酸性側に保持することが望ましいと言える.
  • 上田 悦範, 津田 敦, 白 晋和, 藤下 典之, 茶珍 和雄
    1992 年 39 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    バナナ,メロンおよびイチゴ果実より生成する揮発性エステルをヘッドスペースガスを分析することで調べた.バナナの場合はエチルおよびブチルエステルが主としてみられ,イソブチル,イソアミルエステルがそれに続いた.メロンでは主にエチルエステルがみられ,イチゴでは主にメチルエステルがみられた.また,三種の果実とも,主に酢酸エステル,酪酸エステルがみられた.
    エステル生成酵素をこれらの果実より抽出した.プロピル,イソブチル,ブチル,イソアミル各アルコールに対して抽出した酵素は高い反応性を示したが,メチル,エチル,アミル各アルコールに対しては反応性が低かった.バナナ,メロンからの酵素はアセチルCoA,プロピオニルCoA,ブチリルCoAとよく反応し,イチゴの酵素はさらにバレリルCoAともよく反応した.分枝したイソブチルCoA,イソアミルCoAに対してはあまり反応しなかった.果肉中のアルコール含量はバナナ,メロンでは主にエチルアルコールが高く,イチゴではメチルアルコールが高かった.
    以上の結果より,果実の生成するエステルについて,そのアルコール残基は主に果肉のアルコール含量を反映し,酸残基は主にエステル生成酵素の基質特異性にもとずいていると推察した.
  • 都築 和香子, 菊池 佑二, 篠原 和毅, 鈴木 建夫
    1992 年 39 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    6種の玄米酢, 4種の米酢, 6種の穀物酢, 4種のリンゴ酢,及び4種のこれら以外の酢など24種の食酢の減圧濃縮残渣について,アンジオテンシン-I変換酵素の阻害活性を蛍光法にて解析した.これらのうち,米酢,特に,玄米酢はこの酵素に対して比較的高い阻害活性を示した.米酢の中のアミノ酸とその関連物質が阻害活性に影響を与え,有機酸は関係がないと推測された.しかしながら,アミノ酸のキレート能によるACE阻害能を測定したところ,最もキレート阻害の強いグリシンでも測定値に及ばず,ペプチド類似化合物の寄与が考えられた.さらに,阻害活性測定法における比色法と蛍光法の比較も行い,蛍光法が「濁り」の強い試料に対しても有効な測定法であることを確かめた.
  • 福家 洋子, 〓 瑞林, 村上 浩紀, 篠原 和毅
    1992 年 39 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    数種の食品から細胞成長因子の存在が,報告されているが植物由来のものはほとんど見られない,
    本研究では,果実抽出液(38種)を試料として無血清培養ヒト細胞に対する細胞増殖促進活性の検索を行った.培養細胞は,抗体を産出するHB 4 C 5 (humanhuman hybridoma)とHL 60 (human promyelocytic leukemia)を使用し,培地として市販ERDF培地およびERDF培地にInsulin, Transferrin, Ethanolamine, Seleniteを添加したERDF-ITES培地を用いた.
    かなり多くの果実抽出液に, HB 4 C 5およびHL 60の細胞増殖促進効果が確認された. HB 4 C 5に対して高い活性を示したものは,アケビ,グレープフルーツ,ブドウ,プラム(乾燥),マンゴー,メロン,ライチであり, HL 60に対しては,アケビ,キウイフルーツ,ナシ,バナナ,ブドウ,プラム,マンゴウ,メロンであった.
  • 白石 尊憲, 中川 鍜, 坂野 好幸
    1992 年 39 巻 2 号 p. 197-199
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    分岐サイクロデキストリン(分岐CD)はサイクロデキストリン(CD)と同様の包接作用を持ち, CDに比べ優れた性質を持っている.分岐CDはCDとオリゴ糖から遊離のプルラナーゼの逆反応で合成されている.遊離酵素の反応では,使用した酵素を回収できない,精製時に酵素蛋白を除去しなければならない,反応時間が長い,反応液に着色が起こる,などの改善すべき問題点がある.そこで,グルタルアルデヒドで固定化されたプルラナーゼによる合成を検討した結果, 1000時間の連続反応後も収率の低下がなく安定であり,反応時間も短縮され,反応液に酵素蛋白の混入がないため除蛋白の必要もなく,反応液に着色は起こらず,遊離酵素の問題点は解決された.
  • 宇田 靖, 鈴木 健治, 前田 安彦
    1992 年 39 巻 2 号 p. 200-202
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    塩漬加工された野沢菜は,数日以内にある種のオフフレーバーを生成する.今回,漬込み48時間後の野沢菜漬を用いてオフフレーバー成分の同定を試みた.減圧蒸留により回収した揮発性成分から常法によりフェノール性画分を得,フロリシルカラムを用いて分別を行ったところ,目的のオフフレーバー成分は,ヘキサン/エーテル(1:1)で溶出された.これをフロリシルカラムを用いて種々の割合のヘキサン/エーテル混液によりさらに分別したところ,オフフレーバー成分は同混液(2:1)及び(1:1)で溶出された. GC-MS分析により,オフフレーバー成分は1-シアノ-3, 4-エピチオブタンおよび1-シアノ-4, 5-エピチオペンタンの混合物であることを確認した.両成分の比率の変化と匂いの性質の関係についてはなお検討する必要がある.両成分はアブラナ科野菜に含まれるω-アルケニルグルコシノレートから漬込み中に生成することから,野沢菜以外のアブラナ科野菜の塩漬加工品にも存在するものと考えられる.
  • 界面での作用を中心に
    山野 善正
    1992 年 39 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 田島 真
    1992 年 39 巻 2 号 p. 209
    発行日: 1992/02/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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