日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
39 巻, 7 号
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  • 山本 文子, 香西 みどり, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1992 年 39 巻 7 号 p. 571-577
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    2000~6000kg/cm2, 0~12hrの高圧処理により大0根の破断荷重および破断距離は圧力の大きさに伴って増加し,加圧時間の増加によってもその値は増大した.さらに4000kg/cm2, 10minの高圧処理後に試料を0~24hr放置することにより,同様の変化がみられることを見い出した.
    これらの物性変化の機構を以下の実験により解明した.
    未処理資料を0.5%NaC1水溶液に浸漬しても,大根中にNaClはほとんど浸透しなかったが,高圧処理試料は,急激に吸塩し顕著に大根中NaCl濃度が高くなった.高圧処理により,低周波領域における複素インピーダンスの低下が認められた.これらの結果は加圧10minの試料も長時間の加圧試料もほぼ同様であった.
    PEは高圧処理後もその活性を維持しており,ペクチンのエステル化度は高圧処理により低下し,水溶性ペクチンが減少,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチンが増加した.ペクチンと結び付いているCaは高圧処理により増加した.これらの変化は加圧および加圧後の放置2hrでさらに進行した.
    以上より,細胞膜の機能性は10minの高圧処理により消失すること,その後時間の経過に伴うペクチンのエテル化度の低下,ペクチンとCaの架橋の生成等の進行が,大根の物性変化に大きく寄与すると結論した.
    本研究により加圧後の放置により加圧とほぼ同様変化が起こることを明らかにしたが,短時間の高圧処理後に放置するという処理は,エネルギー的にも実用的にもたいへん有効なものであり,高圧処理の利用を考える場合に,加圧とその後の放置の組み合わせを検討することが有用であると示唆された.
  • 豆腐,凍り豆腐製造における豆乳の凝固に関する研究(第3報)
    小原 忠彦, 黒河内 邦夫, 大日方 洋, 松橋 鉄治郎
    1992 年 39 巻 7 号 p. 578-585
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    豆乳の品質管理や凝集工程の自動化を目的とした計測技術の開発を図るため,回転粘度計(ビスコグラフ)を使用した新計測システムについて検討した.
    (1) 豆乳に連続的に凝固剤(CaCl2)を添加し,回転粘度(トルク)の変化を連続記録した(トルク曲線).回転粘度計の出力はパソコンに取り込むことにより,曲線の作図および数値処理が瞬時に行えるようになった.
    (2) 凝固剤の連続添加に伴う回転粘度(トルク)の変化は,凝固剤添加開始後,一定時間後にトルクの立ち上がりと最大トルクの出現,その後のトルクの減少といった山形の曲線で示された.最大トルク(MV),平坦トルク(FV),最大トルク到達時間(MVT)を指標にして,凝集条件との関係を検討した.
    (3)豆乳濃度の増加に伴い,最大トルク,平坦トルクおよび最大トルク到達時間は増加した.
    (4) 最大トルクと平坦トルクはともに凝集温度に,また最大トルク到達時間は凝集温度と容器の回転数の両者に影響を受けた.
    (5) 豆乳に予め蔗糖(~0.3mol/l豆乳)や塩化カリウム(~0.08mol/l豆乳)を添加した場合,最大トルクと平坦トルクは減少するが最大トルク到達時間はほぼ一定であった
    (6)最大トルク到達時間は電気伝導度測定法で求められる「凝固剤の臨界濃度点, Xml」値と相関関係があり,凝固剤適量に対応する値であることが確かめられた.
  • 豆腐,凍り豆腐製造における豆乳の凝固に関する研究(第5報)
    小原 忠彦, 大日方 洋, 唐沢 秀行, 松橋 鉄治郎
    1992 年 39 巻 7 号 p. 586-595
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    豆乳に塩化カルシウム溶液を添加した際,その反応系の粘度変化を連続計測できるトルク計測システムを使い,「豆乳に対する凝固剤適量」におよぼす豆乳の成分の影響を検討した.
    (1) 各種大豆から同一条件で豆乳を調製し,トルク計測システムから得られる最高トルク到達時間(MVT)と豆乳成分の分析値との相関関係を検討した.その結果,最大トルク到達時間は豆乳の蛋白質,灰分,リンおよびカリウムとの問に,それぞれ正の相関関係が認められた.また,豆乳の電気伝導度との間には正の相関関係が,大豆浸漬液の電気伝導度との間に負の相関関係があった.
    (2) 市販脱脂大豆より脱脂大豆水抽出液,酸沈澱蛋白質溶液およびホエーを調製し,モデル凝集試験を行った.蛋白質濃度の増加は最大トルク到達時間を増加させた.脂質の添加は最大トルク到達時間には影響を及ぼさないが最高トルク(MV)を増加させた.豆乳のpHが減少すると最大トルク到達時間が減少し平坦トルク(FV)も減少したが,最大トルクは一定であった,脱脂大豆水抽出液を透析すると,透析時間とともに最大トルク到達時間は減少した.一方,酸沈澱蛋白質溶液にホエーを添加すると最大トルク到達時間は増加した.このような最大トルク到達時間の増減から,凝固剤を消費する成分割合は蛋白質区分が65%,ホエー区分が35%であることがわかった.分画分子量の異なる膜を使い,電気透析したホエーの添加試験から,ホエー中の凝固剤を消費する成分因子の分子量は約300~1000と分った.また,化学分析の結果,クエン酸やリンを含む窒素化合物であることが確かめられた.
    (3) 大豆の浸漬液中及び豆乳中のリン,クエン酸を数点の大豆について定量し,最大トルク到達時間との関係を考察した.
  • 小日山 正剛, 兼松 弘, 新谷 勲
    1992 年 39 巻 7 号 p. 596-600
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    カカオ豆及びカカオ豆を主成分とする食品中のニッケル,鉄,銅,鉛及びヒ素などの重金属含量がどのように異なるかを調べた.試料にはカカオ豆26試料,カカオマス14試料,カカオ脂10試料,市販のチョコレート14試料(ブラック9,ホワイト5)及び粉末ココア4試料を用いた.また,参考試料としてシアナッツ5試料,ボルネオナッツ3試料及びコーヒー豆6試料についても分析した.
    (1) ニッケル含量はカカオ豆で平均5.12ppm,その胚乳部に相当するカカオマスでも平均4.81ppmとほとんど差がなかった.しかし分離脂肪のカカオ脂にはニッケルは0.13 ppmしか存在しなかった.鉄,銅の含量もカカオ豆(x: 112.4, 24.7ppm)とカカオマス(x: 82.5, 26.7ppm)の間ではほとんど差を示さないが,カカオ脂(x: 0.30, 0.04ppm)では著しく低かった.
    (2) 市販のカカオ加工食品では,ニッケル含量はブラックチョコートで平均1.09ppmとかなり高いが,ホワイトタイプでは主原料のカカオ脂と同様に微量にすぎなかった.これに対し,粉末ココアでは平均12.7ppmのニッケルが検出され,カカオマスよりさらに高いことを示した.この傾向は鉄及び銅の含量でも同様であり,ブラック,ホワイトチョコレート及び粉末ココアからそれぞれ平均24.4, 0.82及び362.5ppmの鉄及び5.36, 0.16及び43.9ppmの銅が検出された.
    (3) 参考試料としたハードバターの原料となるシアナッツ及びボルネオナッツからは,それぞれ平均0.58及び0.45ppmのニッケル, 85.4及び137.1ppmの鉄と0.72及び10.8ppmの銅を検出した.また,コーヒー豆からは平均0.55ppmのニッケル, 67.0ppmの鉄及び13.3ppmの銅を検出し,これを風味原料として使用するファットスプレッドではこれらの重金属の給源となり得ることが示された.なお,鉛はシアナッツ,ボルネオナッツ及びコーヒー豆の一部試料から0.1~0.3ppmの微量が検出されたにすぎず,ヒ素は全試料から検出されなかった.
  • 担子菌類菌糸体の食用化に関する研究(第1報)
    吉田 博, 藤本 水石, 林 淳三
    1992 年 39 巻 7 号 p. 601-607
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ヤナギマツタケを合成液体培地で培養し,栄養生長にともなう菌糸体の低分子炭水化物,高分子炭水化物および有機酸含量の変化を検討した.
    (1) 培地中に生成された主要有機酸は,シュウ酸,ピログルタミン酸,リンゴ酸およびフマル酸であり,菌糸体の最大生長後にシュウ酸の顕著な蓄積が認められた.
    (2) 栄養菌糸体より,トレハロース,グルコース,マンニトール,ミオイノシトール,フルクトース,アラビトールおよびグリセロールが検出され,主要成分はトレハロースであった.トレハロースは菌糸体の生長に伴い増加し,菌糸体の最大生長後は急減し,貯蔵炭水化物としての役割を担うことが示唆された.
    (3) グリコーゲン様多糖は,菌糸体の生長にともない増加し,菌糸体の最大生長後は急減し,主要な貯蔵炭水化物であった.熱蟻酸可溶多糖,アルカリ可溶・酸可溶多糖,熱アルカリ可溶多糖,キチンおよびアルカリ可溶・酸不溶多糖は菌糸体の最大生長後においても顕著な含量変動を示さず,細胞壁構成成分としての役割を担うことが示唆された.
    (4) 菌糸体の主要有機酸は,リンゴ酸,クエン酸,ピログルタミン酸およびフマル酸であり,シュウ酸を除く有機酸類は菌糸体の生長にともない増加し,菌糸体の最大生長後は減少したが,シュウ酸は,最大生長後も増加した.
  • 圧力移動凍結法に関する研究(第1報)
    神田 幸忠, 青木 美千代, 小杉 敏行
    1992 年 39 巻 7 号 p. 608-614
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    圧力移動凍結法により凍結変性しやすい豆腐を凍結し生成した氷結晶と豆腐の組織を観察し,エア-ブラスト方式と比較した.
    圧力移動凍結法で凍結した試料の氷結晶は粒状であった.粒径は同じ凍結温度のエア-ブラスト方式より小さかった.氷結晶以外の豆腐の成分は氷結晶の境界面に押し込あられて氷結晶を取り囲む壁を形成しており,その厚さは-18℃において,圧力移動凍結法では1~3μm,エア-ブラスト凍結法では30~100μmであった.
    凍結処理試料を室温にて自然解凍すると,エア-ブラスト凍結法はドリップが流失して変形し,中心部に固い組織が生成していたが,圧力移動凍結法では変化が認められず組織が均質であった.このことは試料全域で同時に相転移が行われたことを示唆している.また,自然解凍後の試食では-18℃の圧力移動凍結試料は外観,味,食感ともほぼ凍結前と同様な状態であった.
  • 山梨 浩利, 水野 知恵子, 吉田 勝行
    1992 年 39 巻 7 号 p. 615-619
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    我々は,製造業者としてコーヒー挽き豆製品の工程や流通上の管理のため単純な分析手段によってコーヒー挽き豆の風味を判断する方法について種々の検討を行ってきた.その結果として滴定酸度の経時的な変化と煎りたての風味との間に相関のあることを見出した.
    滴定酸度は電位差自動滴定機を用いた.官能試験は煎りたての豆を対照品として用い, 25℃保存, 37℃保存の挽き豆試料を評価した.コーヒー挽き豆の滴定酸度は保存日数により急激に低下し,一旦変化が無くなり,その後上昇した.
    煎りたての風味を維持できる期間は25℃では7日前後, 37℃では4日前後であり,これらの期間は滴定酸度の減少が停止する期間とほぼ一致した.コーヒーブリューの滴定酸度を測定することにより官能試験を代替することが可能と考える.
  • 高 玲媛, 松本 清, 筬島 豊
    1992 年 39 巻 7 号 p. 620-624
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    L-チロシナーゼを多孔性ガラス担体に固定化したリアクターを用いてチロシン定量用FIAシステムを構築した.このシステムをカキ酵素処理エキス中のチロシン定量に適用した.キャリヤー溶液に0.1Mリン酸塩緩衝液を用い,チロシナーゼの酵素反応に伴う酵素減少量をモニターした.チロシンの検出限界は0.01mM,定範囲は0.1~1.0mM,相対標準偏差は1.9%(0.5mM, n=10)であり, 1時間当たり30検体の測定が可能であった.本システムを用いて,カキ酵素処理エキス中のL-チロシンを定量したところ, HPLC法の結果と良好な一致が認められた.
    HPLC法によるアミノ酸測定にご協力戴いた一番食品(株)吉野貴唯氏,牧哲義氏に感謝します.
  • 山口 文秀, 清水 典子, 川田 正美, 高木 義和, 前田 進
    1992 年 39 巻 7 号 p. 625-628
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    ヘミセルロースの効率的抽出を目的として,二軸エクストルーダーを使用し,加圧下でアルカリによるヘミセルロースの抽出を,コーンブランを材料として検討した.内部圧力の調整は,自然供給の状態で,試料に対し加水量を変化させることにより行なった.
    コーンブランの場合,加水量を減らすことにより圧力は1から16kg/cm2まで上昇したが,アルカリの絶対使用量が同じであれば,圧力が増加してもヘミセルロースの抽出の向上は認められなかった. 0.5N, 1.0NのNaOHの試料の2から2.5倍加えた場合に, 1から3kg/cm2の加圧下で最もよい効率で抽出できたことから,高圧処理よりむしろ二軸エクストルーダー内部での粘度低下に伴う混合分散効果が抽出率の向上に寄与することが示唆された.
  • 青山 かえで, 新井 映子, 渡辺 道子, 福家 真也
    1992 年 39 巻 7 号 p. 629-631
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    古米米飯の特性を改良した酵素処理米の機械的強度を増大させる方法を検討し,以下の結果を得た.
    (1) 蒸煮,ゼラチンコーティングによって,酵素処理米の機械的強度が増大した.<Br>(2) テクスチャー測定値と官能評価から,蒸煮あるいはゼラチンコーティング処理を施しても,米飯の特性に影響しないと判定れた.<Br>以上の結果から,蒸煮,ゼラチンコーティング処理を施すことによって,酵素処理米は運搬,流通に適するものになると結論した.
  • マイコトキシンの化学分析に関する研究(第22報)
    五十畑 悦子, 早川 幸夫
    1992 年 39 巻 7 号 p. 632-640
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2010/03/08
    ジャーナル フリー
    複数のマイコトキシン分析は既にTLCによる同時分析について検討し報告しているが,今回はHPLCを利用した方法でシトリニン,オクラトキシンA,アフラトキシンM1, M2, B1, B2, G1, G2,パッリン,ゼアラレノン,ステリグマトシスチン,ニバレノール,デオキシニバレノール,フザレノンーXの14種類のマイコトキシン類の検出を可能にした.またBONDELUTE NH2のミニカラムによる処理はニバレノール,デオキシニバレノール,フザレノンーX, T-2トキシン,ジアセトキシスシルペノール,ネオソラニオールを選択的に分別できることが判った.しかしT-2トキシン,ジアセトキシスシルペノール,ネオソラニオールは今回検討したHPLC条件では検出できなかった.また応用例としてこれらのマイコトキシン類を米ととうもろこしに添加して回収実験を行ったところグループー1のマイコトキシン類の回収率は70~94%であり,グループー2に分別されたニバレノール,デオキシニバレノール,フザレノンーXの回収率は50~71%であった.更にフォトダイオードアレー検出器を装備した且PLCの利用を試みたところ, 1回のHPLC操作で目的とする任意の波長のクロマトグラムの再現及びクロマトグラム上に示される各ピークの吸収スペクトルの呼び出しが可能であった.このことは,複数試料の分析を容易にすると同時に,検出したピークの確認ができるので,今後強い毒性の疑われているマイコトキシン類の分析手法として,分析試料の微量化に貢献できる有用な手法になり得るものと思われる.マイコトキシン類を確認する方法については, HPLCによって分離検出したクロマトグラムの各ピーク部分を分取し, TLCによる確認も行った.
  • 梶山 昇, 今田 五十樹, 安部井 孝蔵, 江頭 辰昭, 三宅 義章
    1992 年 39 巻 7 号 p. 641-646
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
    (1) 圧力処理した水産加工排水はpH 5.0に調整後3000×g, 5分間遠心分離する方法が最も有効であり,通常使用される凝集剤を用いることなく処理することが可能であった.
    (2) 400MPaの圧力で処理した水産加工排水のBOD, COD値は未処理の38.3%, 43.3%に減少するが基準値には達しなかった.
    (3) pH,浮遊物,油分,大腸菌群は圧力処理により基準値に達した.特に大腸菌群は激減した.
    (4) 排水に洗剤のような界面活性剤が0.1%以上含まれると圧力効果は大幅に減少した.
  • 早川 利郎, 伊賀上 郁夫
    1992 年 39 巻 7 号 p. 647-655
    発行日: 1992/07/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 39 巻 7 号 p. N50
    発行日: 1992年
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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