発酵室温(30, 35, 40, 45℃)及び納豆菌の接種菌数(10
2, 10
4, 10
6/蒸熟大豆1g)を異にした納豆の発酵を行い,納豆の品質と直接関係のある外貌,納豆菌数,硬度及び色調を経時的に調べ,次の結果を得た.
1. 外貌観察より,発酵中の納豆はいくつかのステージを経ることが分かった.低い室温でかつ接種菌数の少ないものほど発酵は遅れた.逆に高い室温ほど発酵は進み,接種菌数が多いものほど早く過発酵しやすかった.
2. 納豆の品温は,設定室温あるいはその近辺まで一旦低下し,蒸熟大豆の表面が光沢をおび,濡れたようになった(「照り」の観察)頃より上昇し,蒸熟大豆の表面が白色の菌膜状の物質で覆われて(「菌膜」の観察)から最高値に達した.そして,最高値をしばらく保った後,品温は徐々に低下した.品温の上昇開始より品温の最高値までの時間は,接種菌数より室温の影響が大きく,高い室温で発酵させたものほど短かった.
3. 納豆菌数は誘導期,対数期を経て「菌膜」が部分的に溶けた(「菌膜消化」の観察)頃,定常期に至る変化を示した.納豆菌の生育は,同室温であれば接種菌数の多いものほど,同一接種菌数では高い室温で発酵させたものほど速かった.ただし,最高菌数(室温30℃は発酵30時間の菌数)は室温45<30≦35〓40℃の順であった.
4. 納豆の硬度は,発酵30時間まで増加し続け,同室温であれば接種菌数の多いものほど,同一接種菌数ならば高い室温で発酵させたものほど高くなった.
5. Y値は,「照り」の観察された以後より上昇し,最高値を示した後,室温30℃・接種菌数10
2/gで発酵させたものを除き低下した.x値・y値は,Y値のほぼ逆の消長を示した.また,蒸熟大豆の黄色が消失し,灰緑色を呈する期間はz値が高く推移した.
6. 通常の納豆の発酵時間である18~20時間の外貌,硬度及び色調より,室温35℃・接種菌数10
2~10
6/g,室温40℃・接種菌数10
2~10
4/gで発酵させたものが品質的に好ましいと判断された.
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