日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
40 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 小竹 欣之輔, 畑中 顕和, 梶原 忠彦, 東村 豊, 和田 誠一, 石原 正和
    1993 年 40 巻 10 号 p. 697-701
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) 10kGyの放射線量で粉末食用色素の完全な殺菌が可能であった.
    (2) 極めて短時間で連続処理も可能であった.
    (3) 電子線照射により色素成分が分解退色するものの可視部吸収スペクトル, HPLC,色調変化等は通常の加熱,光分解等と同様であり,むしろ変化は少なかった.
    以上, FAO/IAEA/WHO合同専門家委員会の提案している10kGy以下の放射線量で大きな成分変化を来すことなく粉末食用色素の完全な殺菌が可能であった.この電子線照射におる粉末食用色素の殺菌は全く新しい処理技術であり,色素成分の変退色や新たな分解物質の生成が危惧される所であったが,今回の検討で,むしろ通常の加熱殺菌などよりも色素倍対する影響は少なく完全な殺菌が可能であることが判った.
  • 細胞内デンプンの糊化に関する研究(第2報)
    藤村 知子, 釘宮 正往
    1993 年 40 巻 10 号 p. 702-707
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    小豆の子葉細胞内デンプンと単離デンプンの糊化について,示差走査熱量測定により比較検討した.その結果,単離デンプンは約71℃をピーク温度とする単一な吸熱曲線を示したが,子葉細胞は約70℃をピーク温度とし,78℃付近をショルダーとする高温部に大きくテーリングした吸熱曲線を示した.子葉細胞で認められた70℃付近の吸熱反応は単離デンプンと同じ機構で生じる糊化に基づくものと考えられた.子葉細胞内デンプンの糊化のエンタルピーは単離デンプンのエンタルピーと同じであったことから,高温部の吸熱はより高温でのデンプンの糊化を反映したものと考えられた.子葉細胞をあらかじめ細胞壁分解酵素で処理することによって,加熱の際に細胞が崩壊しやすくなった試料を調製した.この試料の吸熱曲線は,細胞で認められた高温部の吸熱が消失し,単離デンプンの吸熱曲線とほぼ一致した.また,単離デンプンの吸熱曲線は小豆タンパク質の添加(デンプンの約40%添加)によってほとんど影響を受けなかった.これらの結果から,小豆細胞内デンプンの糊化は,単離デンプンに比べて高温で完了することから,抑制されることが明らかとなった.この糊化抑制にはタンパク質はほとんど関与せず,細胞壁の強靭さが糊化時の膨潤を抑制すること,また糊化に必要な水の供給が不十分になることが関係するのではないかと推察した.
  • 〓 一平, 阿部 二博, 茶珍 和雄
    1993 年 40 巻 10 号 p. 708-712
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレン(PE)密封包装による褐変抑制機構を明らかにするために,シイタケ組織内のエチルアルコール濃度とシイタケの褐変ならびにPPO活性との関係を調べた.
    PE密封包装によりシイタケ組織内でエチルアルコールの蓄積がみられ,その濃度はシイタケの褐変指数との間に有意な相関(r=-0.75**)があった.
    空気を通気しているデシケーターヘエチルアルコールを添加するとシイタケの褐変を抑制すると共にPPO活性を著しく抑制し,さらに10%二酸化炭素と1%酸素の混合ガスを通気しているデシケーターへのバブリングによるエチルアルコール添加は空気の場合より,褐変抑制効果が大きかったが, PPO活性に対する抑制効果は前者の場合と同程度であった.
    このことよりシイタケをPEで密封包装した場合の褐変抑制効果には,包装内の高濃度二酸化炭素もしくは低濃度酸素によるCA貯蔵効果のみではなく,嫌気呼吸により生成したエチルアルコールのPPO活性の増加に対する抑制効果も関係しているものと推察した.
  • 外山 大介, 川原 一仁, 山下 實, 西山 和夫, 水光 正仁, 三浦 道雄
    1993 年 40 巻 10 号 p. 713-719
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ソバの新しい利用法に着目して,試験の原料にソバ,対照の原料に米,大麦を用いてそれぞれ麹を造り,各酵素活性を測定し,ソバが麹原料として適しているか検討した.次に各麹を用いて仕込んだ味噌について成分分析及び官能検査を行いソバ味噌の特徴を検討した.
    (1) ソバ麹のα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼ活性は他の麹と比較して若干低い値であったが,味噌醸造には十分なものが得られた.
    (2) ソバ麹の酸性プロテアーゼは,他の麹よりやや高い活性が得られた.一方,中性及びアルカリ性プロテアーゼにおいては,ソバ麹はその他の麹と比較して数倍の活性が得られた.すなわち,原料のC/N比が低いと,中性及びアルカリ性プロテアーゼ活性が高くなるというこれまでの報告を確認できた.
    (3) 味噌の熟成度の指標であるタンパク質溶解率及び分解率,酸度I及びIIは,ソバ味噌が他の味噌より高い値を示した.
    (4) 遊離アミノ酸含量もソバ味噌が他の味噌より高い値であった.
    (5) ソバが有するルチンは,味噌の醸造過程で分解するようであったが,熟成30日目の味噌においても残存することを確認した.
    (6) 官能検査を行ったところ,ソバ味噌は色について評価が低かったものの,味,香り,組成では他の味噌に比べ遜色がなく,むしろ良い評価を受けた.また,ソバ味噌にはソバそのものの香りがあった.
  • 乙黒 親男, 金子 憲太郎, 小竹 佐知子, 辻 匡子, 前田 安彦
    1993 年 40 巻 10 号 p. 720-726
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    硬化ウメ漬けの萎縮と果実熟度, Ca(OH)2の関係を検討した.
    (1) 電子顕微鏡で組織を観察した結果,萎縮果は細胞の萎縮が認められた.
    (2) 萎縮果は原料ウメが未熟でCa(OH)2の添加量が少ない果実に発生した.
    (3) 萎縮果は歩留りが極端に低下しかつ軟化した.(4) 萎縮果の果皮にはCaが顕著に含まれていたが,硬度の高いウメ漬けでは果皮と果肉のCaがほぼ等量であった.
    (5) 萎縮果の果肉ではWSPの割合が顕著に高いが,硬度の高いウメ漬けでは果皮,果肉ともにWSPの割合が低かった.
    以上の結果,硬化ウメ漬けにおける萎縮は原料ウメが未熟で, Ca(OH)2の添加量が少なり時に起こることが分かった.また,その原因の一つは果皮と果肉の組織構造の差異にあり,特に果皮の透過性が萎縮果発生の主因になることを推察した.
  • 椎葉 究, 根岸 美江, 岡田 憲三
    1993 年 40 巻 10 号 p. 727-731
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    発酵中の酢酸可解性タンパクの溶解性の変化を調べるために,発酵生地から酢酸溶解性グルテン(可溶性グルテニン)を構成するポリペプタイドを分画した. 70%エタノールに対する溶解性の違いから,還元後シアノエチル化したグルテニン成分は,発酵生地より3区分(AF-1, AF-2, AF-3)に分画された. SDS-PAGEによる分析の結果, AF-1, AF-2, AF-3は,主として会合性サブユニット,高分子サブユニット,低分子サブユニットから構成されていた.発酵が進むに従って,オズボーン分画によるグルテニン量は減少するが,これは,AF-1およびAF-3成分量の減少によるものであった.サブユニット中のタンパクの構成は,発酵中ほとんど変化はなかったが,AF-2成分中に最も高分子であるタンパクのバンドが発酵時間に従って現れた.また, 3種の精製リボキシゲナーゼアイソザイム処理した小麦粉から調製した溶解性グルテニンも,同様に3区分(BF-1,BF-2, BF-3)に分画した.リボキシゲナーゼ無処理区(コントロール)に比べて, BF-1およびBF-2成分量の減少が認められ,発酵と同様の現象が現れた.このことから,発酵による可溶性グルテニンの溶解性の変化はリポキシゲナーゼにより誘導される事が示唆された.
  • 藤井 繁佳
    1993 年 40 巻 10 号 p. 732-737
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    本研究はブドウ糖,ショ糖およびコーンシロップソリッドがアイスミルクの甘味度,安定性および軟らかさに及ぼす影響を調査すること,更にはこれらの品質を満足するための最適な前記3種の糖配合を探索することを目的とした.糖の添加率を3水準設定し,要因配置法に基づいて15種のアイスミルクを調製した.甘味度,安定性と軟らかさを特性値として評価した.糖の添加率と特性値の関係を応答表面法にて解析した.解析の結果,各特性値に対し0.76~0.95の重相関係数を示す有意な近似式を得た.ブドウ糖の増量は組織を軟らかくするが,安定性上好ましくなく,ショ糖の増量は甘味度を増し安定性を改良することがわかった.コーンシロップソリッドの添加効果は安定性改良であることも明確となった.また個々の糖の交互作用に関する知見も得られた.応答表面マップから,相反する要求品質を満足するのに最適な糖の配合比率を得た.
  • 林 〓倫, 石崎 松一郎, 田中 宗彦, 高井 陸雄, 田口 武, 天野 慶之
    1993 年 40 巻 10 号 p. 738-742
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    n-ブタノール存在下におけるウマヅラハギ筋肉タンパク質の熱ゲル化特性を,ゲル強度曲線と電気泳動図,および溶解性と表面疎水性の変化から検討した. n-ブタノール(0.3M, 0.6M)は,筋原繊維ペーストの熱ゲル化を促進し,同時に火もどりにおけるミオシン重鎖の分解を完全に抑制した,一方,アクトミオシンは,n-ブタノール存在下で溶解性の減少と加熱による表面疎水性の著しい増大を示した.n-ブタノールによる筋原繊維ペーストの熱ゲル化促進と火もどり抑制において,アクトミオシン表面疎水性領域の重要な役割が示唆された.
  • 宇田 靖, 松岡 寛樹, 熊耳 ひとみ, 島 秀樹, 前田 安彦
    1993 年 40 巻 10 号 p. 743-746
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    大根の辛味成分, 4-メチルチオ-3-ブテニル芥子油(MTBI)の安定性をpH6.5のMcIlvaine緩衝液中,37℃で振とう処理,超音波処理及び37℃の寒天培地での静置条件下で比較した.その結果,トランス体はきわめて不安定で,振とうまたは超音波処理で3時間以内に大半が分解したのに対し,シス体は3-5時間後でも30-50%が残存した.トランス体は寒天培地上でも6時間で96%が分解した.この結果に基づき, MTBI (2.5-7.5μmoi)の抗菌活性を培地と直接接触させることなく, 8種の細菌, 3種の酵母菌, 5種の糸状菌を用いてディスク拡散法により検討した結果, MTBIは特に糸状菌に対して強い生育阻害作用を示したほか,細菌ではグラム陽性菌に対する抗菌性が認められた.シャーレ内に拡散するMTBI濃度をGC分析したところ,最大でも添加量のわずか0.2%が気相中に検出されたことからMTBIの抗菌性はきわめて強力であると考えられた.
  • 入江 正和, スワットランド H.J.
    1993 年 40 巻 10 号 p. 747-754
    発行日: 1993/10/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
feedback
Top