日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
40 巻, 9 号
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  • 柑橘果汁清澄用ペクチナーゼ剤の開発(第10報)
    福井 尚之
    1993 年 40 巻 9 号 p. 617-626
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    3種の市販粗酵素剤を用いて,夏柑果汁を清澄化するために,種々の濃度に組み合わされた酵素液を,果汁と7種の基質にpH 2.8で作用させた結果,重回帰分析により以下のことがあきらかとなった.
    (1) pH 2.8の酸性域の基質では,ペクチンよりもペクチン酸の時が容易に分解された.同様の傾向が,ハイドロセルロースとカルボキシメチルセルロース,ヘミセルロースとアラバンの間で認められた.
    (2) pH 2.8の酸性域で強い糖化力を示したのは,カルボキシメチルセルラーゼとアラバナーゼであった.
    (3) スクラーゼとヒイロタケセルラーゼの組み合わせ区のほうが,キッコーマンペクチナーゼとヒイロタケセルラーゼの組み合わせ区よりも,酵素蛋白量,酵素活性力ともに低いにもかかわらず,清澄活性力は高く,特に,前者にはペクチナーゼ,ヘミセルラーゼ活性の組み合わせによる相乗効果が認められた.
    (4) 清澄化の予測式には,カルボキシメチルセルラーゼ,ペクチン糖化酵素の酵素活性値が説明変数として取り入れられた.
  • ヤマノイモの利用に関する研究(第4報)
    田之上 隼雄, 下園 英俊, 迫田 隆仁
    1993 年 40 巻 9 号 p. 627-635
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ヤマノイモのかるかん原料適性を判断するため,かるかんの食味評価点と物性値との関係を検討すると共に,じねんじょ(Diosoorea japoniha THUNB),つくねいも(D. opposita THUNB)およびKaU-09(D.a1ata L.)のかるかん原料としての評価を行ない,以下の結果を得た.
    (1) 市販かるかん26点について食味評価点と物性値との関連性を検討し,クリープ試験における弾性変形量が大きく,引っ張り試験で,破断点までの距離の長いほど高い官能評価を受けることがわかった.
    (2) 成分含量と品質については,水分含量の高いかるかんが貯蔵中の物性変化が少なく,官能的にも好まれる傾向にあった.これは澱粉の老化が抑制されることに起因することを確かめた.
    (3) ヤマノイモの粘りとかるかん原料適性については,粘りが高いほどかるかん生地の水分容量が多くなり,老化の遅い製品を作り得ることがわかった.
    (4) 三種のヤマノイモのかるかん原料適性は,じねんじょが最も高く,つくねいもがこれに次いだ. KaU-09はその適性に欠けた.じねんじょの適性が高いのは,粘りが高く,アミラーゼが含まれないためと考えられた.
    (5) KaU-09にはエンド型のアミラーゼが含まれ,かるかん生地の膨化性と製品の弾性変形量を低下させ,付着性を著しく高めた.このアミラーゼは60℃で1時間加熱することによって失活し, KaU-09のかるかん原料適性は向上した.
  • 山脇 和樹, 森田 典子, 村上 公一, 邨田 卓夫
    1993 年 40 巻 9 号 p. 636-640
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    収穫直後の生鮮なハーブ13種(コモンタイム,コリアンダー,フェンネル,ヒソップ,イタリアンパセリ,レモンバーム,オレガノ,ローズマリー,セージ,サラダバーネット,スペアミント,スイートバジル,スイートマジョラム)のアスコルビン酸に関する基礎調査を行って次の結果を得た.
    (1) 総アスコルビン酸含量は,最も多いサラダバーネットの297mg/組織100gから,最も少ないスイートバジルの67mg/100gの範囲内にあった.
    (2) アスコルビン酸酸化酵素は種によって活性に差がみられ,イタリアンパセリとサラダバーネットは活性が低く,他のハーブで比較的高い活性が認められた.
    (3) 熱湯5分間処理で,コリアンダーとレモンバームでは組織中のアスコルビン酸の約1/2が抽出液中へ溶出されるが,他のものでは約1/4以下であった.熱湯処理によるアスコルビン酸の残存率はスイートバジルで53%と最も低く,コリアンダー,フェンネル,イタリアンパセリおよびサラダバーネットでは90%以上であった.
  • シュー生地の調製条件が膨化に及ぼす影響(第2報)
    大喜多 祥子, 山田 光江, 遠藤 金次
    1993 年 40 巻 9 号 p. 641-646
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    シュー生地の卵を異なった気圧下で混ぜ込み,気泡量や成分分散度合いの異なる生地を調製し,焙焼中の生地内部温度や重量の変化を検討した結果,
    (1) 重量減少が盛んな時期に膨化が起こり,膨化は水蒸気の急激な発生による事が確認され,生地の気泡量が多い程,その水蒸気発生量は多くなった.
    (2) 気泡の多い生地は水蒸気の発生のための核が充分存在することに加え,温度が上昇し易いこと,気泡の膨脹で吸熱面積が拡がることなどが相乗して,生地内部の温度上昇が速く,水蒸気の急激発生が起こるので著しい膨化をきたすと考えられた.
  • Studies on Plant Tissue Culture (第86報)
    阪本 一央, 浅田 善久, 古谷 力
    1993 年 40 巻 9 号 p. 647-655
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ウド培養細胞はアントシアニン色素生産に関して全く光を必要としない特徴を有する.培養条件の異なる3種類のウド培養細胞からアントシアニン系の赤色色素を抽出し,粗精製赤色色素を得た.この色素の酸性水溶液は鮮やかな赤色を呈するため,新たな天然赤色色素としての実用化の可能性を検討した,種々の基礎的検討の結果,pH 2.2~6.0で赤色から赤橙色を示し, pH 7.0~9.0では赤紫色から紫色の色調を呈した.数時間経過後の各pH水溶液は,酸性領域では非常に安定に,中性付近でも比較的安定的にその色調を維持していた.耐熱性に関しても, 95℃, 2時間の熱処理前後でその色相の変化は小さく,非常に安定していることが明らかとなったが,紫外線に対する耐光性はシソ色素に比べ劣った.食品用着色料として不可欠な安全性に関しては,まだ初期試験の段階ではあるが,突然変異誘発性試験および有害な重金属類の定量分析から,その安全性が確認された.さらに清涼飲料を試作して食品用着色料としての実用性を評価した結果,耐光性面にやや問題があるものの,実用化の可能性が高いことがわかった.今後培養のスケールアップ,耐光性面の改善と各種食品への応用試験,さらに安全性面での検討が進めば,新たな食品用着色料としての開発が可能となるであろう.
  • 田中 直義, 庄司 善哉
    1993 年 40 巻 9 号 p. 656-660
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    醗酵開始1時間後および醗酵19時間後(終了1時間前)の納豆醗酵室内に存在する揮発性物質をTenax-GCに吸着させて採集し,キャピラリーカラムを用いたGC-MSで分析した結果, 11種のアルコール, 5種のアルデヒド, 13種のケトン, 9種の脂肪酸エステル, 4種のピラジン, 13種の炭化水素, 5種のイオウ化合物,3種のフラン,アンモニア,およびピロールの存在が明らかとなった.
  • 小日山 正剛, 馬場 明, 丸山 武紀, 兼松 弘, 新谷 勲
    1993 年 40 巻 9 号 p. 661-673
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2010/06/23
    ジャーナル フリー
    フランス及びスペインの市販されているマーガリン類の品質特性を調査した.
    フランスでは,マーガリンの油分は80%以上であった.水分は16%以上でありFAO/WHOによる国際規格の基準(油分:80%以上,水分:16%以下)からはずれていた.スペインではマーガリンの油分は11試料中7試料が80%未満,水分はいずれの試料も17%以上で, FAO/WHOの基準に合致しないものが多かった,低脂肪製品は,フランスでは油分が約45%と約60%の2タイプがあり,スペインでは低脂肪のものがほとんど市販されていなかった.
    マーガリン及び低脂肪スプレッドのビタミン類は,フランスではビタミンAが強化されていたのは1試料にすぎず, D3も強化されてはいなかった.
    スペインではビタミンA及びD3が大部分の試料に強化されていた.
    保存料は,フランスではバターを除くほとんどの試料からソルビン酸が検出された.スペインではバターを除く約半数の試料からソルビン酸が, 4試料から安息香酸が検出された.
    抗酸化剤はスペインの6試料からBHAが, 3試料からBHTが,そして1試料から没食子酸ドデシルが検出された.フランスのものからはこれらは検出されなかった.
    マーガリン及び低脂肪スプレッドの高リノールタイプに含まれるCl8:2はフランス及びスペインでそれぞれ46.9~50.1%及び36.0~42.2%であった.
    高リノールタイプ以外のマーガリンではSFCの温度依存性はフランス及びスペイン両国とも類似していた.
  • 中谷 文子, 辻昭 二郎
    1993 年 40 巻 9 号 p. 674-681
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    加水量が異なるドウの物性を新たに開発した連続式微小変形多重バイト試験法で測定し検討した.
    (1) 加水量の異なるめん用のドウ,一般の製パン用のドウ,家庭用自動製パン機用のドウなどについて,加水量や添加物によるドウの物性の差を連続式微小変形多重バイト試験法で測定し比較検討した.
    (2) その結果,これらのドウの物性の差はドウの粘弾性やみかけのかたさや粘弾性などと関連するパラメーターで比較解析できることが示された.
    (3) 従来の試験に用いられている小麦粉と水のみのドウとこれに食塩などを添加したドウの物性の差もドウの粘弾性の差として明瞭に示された.
    (4) ドウに対する臭素酸カリウムやL-システイン添加の効果もドウの加水量によって大きく異なることが示された.一般の製パン用のドウではドウの物性の改良効果のある臭素酸カリウムも加水量の多いドウでは効果がなく,逆に一般の製パン用のドウではドウを軟化するL-システインは加水量の多いドウではドウの粘弾性を改善する効果があることが認められた.
    (5) 家庭用の自動製パン機で製パンした食パンの容積を比較すると,加水量75.0~89.3%の何れの加水量でも5ppmのL-システインを添加したものは無添加のものよりパンの容積が大となることが認められた.一方5ppmの臭素酸カリウムを添加すると無添加のものよりパンの容積は小となった.
  • 真部 孝明
    1993 年 40 巻 9 号 p. 682-688
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    現在,植物体に存在することが確認されている有機酸の滴定換算係数(0.1N NaOH 1mlに相当する有機酸のmg数)は,理論上4.51(シュウ酸)から19.41(ガラクツロン酸)の範囲にある.しかし,一般の果実では,クエン酸とリンゴ酸が主要酸で,例外的に一部の果実に酒石酸(ブドウ)とキナ酸(キウイフルーツなど)が主要酸として存在するものがある.生食適期のブドウ果実14品種の有機酸分析結果から,従来用いられている酒石酸の換算係数7.50と有機酸組成から求めた換算係数を比較してその差を百分率で示すと, -4.0から-5.7%の範囲にあり,酒石酸の換算係数から求めると4~6%程度高い値となった.さらに,'デラウェア'と'キャンベルアーリー'の2品種の成熟期間中の換算係数を求めると,果実熟度の進展に伴い,酒石酸の比率が高くなり,酒石酸換算係数との差が少なくなった.しかし,その比率は両品種で異なり,前者の方がいずれの成熟段階でも差が大きかった.柑橘類は有機酸中のクエン酸比率が高くいずれも80%以上を占めるのでクエン酸の換算係数による誤差は0.6%以内であった.イチゴはクエン酸が60~80%前後であり,換算係数は6.48~6.57で1~3%の誤差範囲であった.ウメではクエン酸型の品種の方がリンゴ酸型のものより誤差が少なかった.
  • 野口 敏
    1993 年 40 巻 9 号 p. 689-695
    発行日: 1993/09/15
    公開日: 2011/02/17
    ジャーナル フリー
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