日本と韓国の醤油,味噌の呈味成分を分析し,両国製品の呈味性の差異を論及した.また,その結果から両国民の食嗜好を考察した.
1. 日本の醤油(日本醤油)は韓国の自家製醤油(韓国醤油)よりpHが低く,食塩が少なく,遊離糖と全窒素が多かった.
2. 日本の味噌(日本味噌)は韓国の自家製味噌(韓国味噌)よりpHが低く,遊離糖が顕著に多かった.
3. 日本醤油は有機酸が顕著に多く,乳酸とピログルタミン酸が主体だった.韓国醤油は乳酸が特に多かった.
4. 有機酸含量はほぼ等量だったが,日本味噌はピログルタミン酸とクエン酸,韓国味噌は乳酸とピログルタミン酸が多かった.
5. 韓国味噌の遊離糖はごく微量だった.
6. 日本醤油の遊離アミノ酸(アミノ酸)は韓国醤油のそれの約3.7倍だった.前者はグルタミン酸,アスパラギン酸,プロリン,後者はグルタミン酸が多かった.
7. 韓国醤油のオリゴペプチド(ペプチド)は日本醤油のそれの約2.8倍だった.前者はグルタミン酸,アスパラギン酸,プロリン,後者はプロリン,アスパラギン酸が多かった.また,韓国醤油のペプチドはアミノ酸とほぼ等量,日本醤油のそれはアミノ酸の約10%だった.
8. 日本味噌と韓国味噌のアミノ酸はおおよそ等量だったが,前者はグルタミン酸,ロイシン,アスパラギン酸,後者はグルタミン酸,ロイシンが多かった.
9. 日本味噌と韓国味噌はペプチドがほぼ等量で,何れもグルタミン酸,アスパラギン酸,プロリンが多かった.また,何れのペプチドもアミノ酸の約49%であった.
以上の結果,日本醤油はグルタミン酸を主体にしたアミノ酸の味,韓国醤油はグルタミン酸とペプチドの味に特徴があると思われる.両国の味噌を比較するとアミノ酸とペプチド由来の味はほぼ同程度であるが,日本味噌は甘味が強く,酸味が異質と思われる.これらのことを塩辛やキムチでの結果と併せ考えると日本人はグルタミン酸の旨味,韓国人はグルタミン酸の旨味に併せてペプチドの味を特に好むと思われる.
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