日大医学雑誌
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69 巻, 6 号
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原著
  • 田中 生恵, 奥畑 好孝, 阿部 克己, 高橋 元一郎
    2010 年 69 巻 6 号 p. 338-346
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    正常骨髄の造血髄と脂肪髄の分布は加齢に伴い変化するが,この定量的測定には MRI の T1 緩和時間 (以下 T1) が有用である.腰椎と骨盤骨の T1 に関連した報告はほとんどみられないため,turbo FLASH 法で成人骨髄 (腰椎と骨盤骨) の T1 測定を検討し,さらに年齢,性別および部位による違いを比較検討した.対象は患者および正常ボランティアで,貧血のない男性 74 例と女性147 例である.その結果,男女とも,両部位で加齢に伴う T1 短縮が認められたが,女性は男性より強い相関がみられた.また,骨盤骨の T1 は腰椎より短かった.T1 は 50 歳以下の女性では有意に延長しており,若年女性において,年齢差・性差がみられた.
症例報告
  • 鈴木 緑, 石原 有子, 宇都 栄作, 伊藤 謙, 福家 吉伸, 藤田 宜是, 松本 紘一
    2010 年 69 巻 6 号 p. 347-351
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    症例は 38 歳の女性.16 年前に,健康診断にて初めて蛋白尿を指摘された.腎生検を含めた原因精査を行い,IgA 腎症 (予後良好群) と診断された.副腎皮質ホルモン療法は奨励されず,病巣感染による腎炎の進行阻止を目的として扁桃摘出術が施行された.その後も検診の度に蛋白尿を指摘されていたが,自覚症状もないため放置していた.平成 20 年 10 月,16 年間続く尿蛋白のため治療法の再評価を目的に入院となった.精査の結果は障害の進行した IgA 腎症 (予後不良群) で,すでに副腎皮質ホルモン療法の適応ではないと判断された.本症例は臨床症状に乏しく,積極治療の時期を逸した要因のひとつとして扁桃摘出が考えられた.扁摘単独療法は腎炎の進行を抑えるのに不十分なだけでなく,腎炎の進行を潜在化させている可能性が疑われた.
  • 高野 智圭, 渕上 達夫, 長谷川 真紀, 鬼田 智子, 斎藤 勝也, 橋本 光司, 稲毛 康司
    2010 年 69 巻 6 号 p. 352-356
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    Human herpes virus 6 感染に関連した両側前頭葉を障害する乳幼児急性脳症の 10 か月男児を経験した.臨床経過では,痙攣重積型急性脳症の形を呈した.急性期の頭部 MRI の拡散強調画像では前頭部に高信号,脳血流 SPECT では前頭部の血流低下を認めた.また回復期の頭部 MRI では,前頭葉の脳萎縮を認めた.本症の病態解明および治療法の確立には,さらなる症例の蓄積と検討が必要と考えられる.
  • ―幽門狭窄を呈した進行胃癌に左房粘液腫を合併した 1 例―
    藤崎 滋, 高階 幹, 山本 知則, 井上 龍也, 尾花 正祐, 奥村 晴彦, 富田 凉一, 高山 忠利
    2010 年 69 巻 6 号 p. 357-360
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    一般市中病院にても扱う進行胃癌という common disease に,比較的まれな心臓腫瘍を合併した症例を経験した.進行胃癌に対し根治術を行い,その後心臓腫瘍切除を施行した.術後早期に胃癌肝転移をきたしたが,CDDP/S-1 による化学療法を施行したところ,肝転移巣は著明に縮小した.現在,S-1 内服にて通院加療中であり,良好な quality of life が保たれている.心臓手術ができる施設は限られているが,日本大学医学部関連病院間で連携することにより,進行胃癌と心臓腫瘍のいずれに対してもすみやかに加療が行いえた症例を経験した.
  • Takeshi Masuda, Yasuyuki Nomura, Shinya Yoshida, Shuntaro Shigihara, M ...
    2010 年 69 巻 6 号 p. 361-366
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    We report a case of hemorrhage from brainstem cavernous angioma that caused various symptoms including neurootological, gustatory and facial sensory disturbances. A man experienced nausea and numbness of his right ear. It was confirmed that the symptom were derived not from a peripheral lesion but from retrocochlear and brainstem impairment based upon the findings of the DPOAE, ABR, VEMP, caloric test, optokinetic nystagmus etc. We detected an area of retrocochlear lesion that was responsible for both the auditory and vestibular disturbances based upon detailed neurootological examination in addition to MRI findings, and showed that the impairment was improved one year later without specific treatment.
  • 鳥飼 博子, 間崎 武郎, 田部井 英憲, 大亀 浩久, 増田 英樹, 高山 忠利
    2010 年 69 巻 6 号 p. 367-369
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜裂孔ヘルニアは稀な疾患である.本邦 79 例の集計とともに,若干の文献的考察を加え報告する.症例は 40 歳女性.腹痛と嘔吐を主訴に近医を受診,イレウスの診断で当院紹介となった.入院時骨盤 CT にて骨盤内に拡張した小腸と少量の腹水を認めイレウスの診断で保存的加療を行った.入院 2 日目にイレウス症状の増悪を認めたため再度骨盤 CT 施行,子宮左側に小腸の狭窄像を認めたため,内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断,緊急手術を施行した.開腹所見では,左子宮広間膜に約 3 cm 大の裂孔を認め,回腸末端から約 90 cmの回腸が約 90 cm にわたり陥入し,絞扼されていた.絞扼を解除し,壊死小腸を約 100 cm 切除,裂孔を単純閉鎖し手術を終了した.術後経過は順調で,術後 10 日目に軽快退院となった.
  • 佐藤 博信, 三宅 洋, 大原 守貴, 君塚 圭, 康 祐大, 菊池 剛史, 花田 学, 滝本 壽郎, 古阪 徹, 竹内 正樹
    2010 年 69 巻 6 号 p. 370-373
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    症例は 66 歳の男性.嗄声,嚥下時咽頭痛を主訴として某病院受診し,精査の結果頚部食道癌と診断され当院紹介受診した.上部消化管内視鏡検査で頚部食道に 2 型の病変を認め,生検の結果扁平上皮癌であった.頚部食道癌 T3N1M0 の stage IIIと診断し手術療法を選択したが,術前化学放射線療法として 5-FU/CDDP 療法およびリニアック 30Gy/15f/3W を照射した.その後,両側頚部郭清,咽頭喉頭食道切除,甲状腺左葉切除,遊離空腸移植術を施行した.切除摘出標本では粘膜が白色調で肥厚した部位を認めたが腫瘍は消失していた.病理組織所見では著しい線維化の部位と異物巨細胞を認めたが,増殖し得る癌細胞遺残はなかった (Grade 3).術前化学放射線療法で pCR となったと考えられる症例であった.
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