日大医学雑誌
Online ISSN : 1884-0779
Print ISSN : 0029-0424
ISSN-L : 0029-0424
71 巻, 5 号
日大医学雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
画像診断シリーズ
総説
  • 武井 正美, 野崎 高正, 猪股 弘武, 桑名 慶和, 北村 登, 白岩 秀隆, 井汲 菜摘, 長澤 洋介, 澤田 滋正, 矢島 美彩子, ...
    2012 年 71 巻 5 号 p. 302-310
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    ウイルス感染が自己免疫疾患の発症に関与しうる事は実際の臨床の現場でもしばしば経験する.この稿では自己免疫疾患とウイルスの関与を,関節リウマチとEpstein-Barr ウイルス (EBV) を例にして解説する.EBVは Burkitt リンパ腫,B 細胞リンパ腫,鼻咽頭癌,伝染性単核球症の原因ウイルスとして知られている.EBV はRA 患者で再活性化を起こし,このウイルスに対する液性,細胞性免疫が強くなり,間接的ではあるが関節局所での EBV の存在,分子相同性,多クローン性 B 細胞活性化などにより,RA 病因に関与していると考えられている.我々は,EBV 関連疾患としても知られている IgA腎症末梢白血球から液性免疫の維持や EBV 細胞傷害性T 細胞の誘導に関与する SAP (signaling lymphocytic-activation molecule associated protein) /SH2D1A (Src homology 2 domain-containing protein) をクローニングした.この遺伝子の mRNA 発現が RA 患者末梢 T 細胞で低く,患者体内よりこのウイルスを排除しにくい状況にある事を報告した.さらにはヒト CD34 幹細胞を免疫不全マウスである NOD/Shi-scid/IL-2R γnull (NOG) に移植し,ヒト免役能を有したマウスに EBV を感染させ,直接 RAの関節炎で起こる滑膜の増殖とパンヌス,びらん性関節炎や関節近傍の骨髄浮腫といわれる状態を起す事に成功した.これらの発見は RA の原因として,このウイルスが関与することを強く示唆した.
原著
  • 細田 利史, 上條 岳彦, 尾崎 俊文, 草深 竹志, 中川原 章
    2012 年 71 巻 5 号 p. 311-321
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    我々は,神経芽腫における自然退縮の分子機構を解明し,それらを標的とした治療法の開発により,予後不良な経過をたどる神経芽腫の克服を目指している.予後良好な神経芽腫に多く発現している BMCC1 は TrkAと結合し,そのシグナルを細胞骨格へ送る役割を担っているが,その分子生物学的機構はいまだ明らかとなっていない.今回我々は,BMCC1 に結合する EF1A1 を同定し,BMCC1/EF1A1 複合体が,TrkA 刺激伝達系を介して神経細胞の分化を制御する重要な蛋白複合体であることを明らかにした.神経芽腫細胞においても増殖・分化・細胞死を制御している可能性が示され,BMCC1/EF1A1 複合体を分子標的とする治療法の開発が,神経芽腫の病態解明や新しい治療法の開発の基盤となりうると思われた.
  • 五十嵐 匠, 吉澤 剛, 佐藤 克彦, 平方 仁, 川田 望, 高橋 悟, 和田 義之, 國分 眞一朗
    2012 年 71 巻 5 号 p. 322-328
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    ラットを streptozotocin 誘発糖尿病群 (STZ 群),5%蔗糖溶液飲用による生理的多尿群 (PU 群) に分けて各群の 1 週目,4 週目における膀胱機能を測定しコントロール群 (C 群)と比較検討することで糖尿病発症早期における排尿機能障害を検討した.STZ 群と PU 群は C 群と比較して 1, 4 週目とも 1 回排尿量と膀胱容量が有意に増加したが,STZ 群と PU 群間では有意差はなかった.PU 群の排尿時最大収縮圧 (PP) は尿量の増加に伴い1, 4 週目とも C 群より有意に増加したが,STZ 群では 4 週目で逆に優位な低下を認めた.排尿閾値圧と PP はPU 群と比較し STZ 群では 1 週目ですでに有意に低下し, 4 週目で STZ 群のみ多量の残尿を認め,基礎圧も PU 群と比較して有意な低下を認めた.この結果は,膀胱を支配している自律神経の障害が糖尿病発症後 1 週間程度で発生し,多尿に対する生理的適応ができず早期の排出障害を引き起こすことを示唆した.
  • 井上 満, 大底 睦子, 小林 孝子, 山舘 周恒, 松本 健, 里村 厚司, 山本 樹生, 中山 智祥
    2012 年 71 巻 5 号 p. 329-335
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    習慣流産症例において夫あるいは妻の均衡型転座は 2~5%に認められるが,そのうち相互転座とロバートソン転座では,生児を得る確率に大きな差があるとされ,染色体分析は転帰を予測するにあたって重要な情報となる.日本大学医学部附属板橋病院は院内で染色体検査が実施可能な数少ない施設であり,染色体データを詳細に解析できるという利点がある.今回我々はその利点を生かして 2001 年~2010 年までの 10 年間で,当院臨床検査部にて実施した習慣流産に関連する染色体検査について,変異・転座の出現頻度や臨床的特徴について実態調査した.被検者 401 例 (習慣流産カップルのパートナー (両親) ) 中, 正常変異 12 例, 均衡型転座 9 例を認めた.均衡型転座は相互転座 8 例 (男性 3 例,女性 5 例),ロバートソン転座 1 例 (女性 1 例) を認め,女性で高い傾向であった.均衡型転座で生児が確認されたのはロバートソン転座 1 例であり,相互転座では生児を得る確率が低い可能性がある.保因者に対して遺伝カウンセリングを含む包括的なケアが必要と思われる.
  • 中村 陽介, 加藤 実, 清水 美保, 後閑 大, 小川 洋二郎, 小川 節郎
    2012 年 71 巻 5 号 p. 336-342
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    両側人工膝関節置換術 (両側 TKA) の術後鎮痛において,ロピバカインを用いた持続大腿神経ブロック (持続大腿) をロピバカイン単独の持続硬膜外鎮痛 (持続硬麻) に併用し,その有効性を研究した.当院で施行された両側 TKA 患者 30 名 (60 下肢) を対象に,持続硬麻 (持続硬麻単独側) と片側下肢のみ持続大腿を併用し (持続大腿併用側),術後 48 時間後までの安静時,体動時の痛みの強さを VAS 値 (0-100 mm) にて,また副作用についても左右下肢別に記録し比較検討した.同一患者において左右の下肢の間には,安静時,体動時ともにいずれの評価時点でも鎮痛効果の有意差 (p < 0.001-0.05) を認めた.副作用は,悪心,持続大腿併用側下肢のしびれ感がそれぞれ 6 名の患者に認められた.両側 TKA 術後の鎮痛において,持続硬麻単独鎮痛に比し,ロピバカインを用いた持続硬麻と持続大腿の併用はより有効な鎮痛法であると結論する.
症例報告
  • 中田 泰彦, 間宮 孝夫, 窪田 信行, 三原 良明, 中島 洋介, 神野 大乗, 有阪 理英
    2012 年 71 巻 5 号 p. 343-345
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例は 58 歳男性である.Goligher IV 度の全周性の内痔核に対し Procedure for Prolapse and Hemorrhoids (PPH) 療法による痔核根治術を施行した.術後 2 日目に腹痛,発熱が出現し,直腸穿孔による腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.PPH 療法による内痔核手術後に直腸穿孔を合併することは稀であるが,手術手技が合併症の起因となる可能性が十分に考えられる.したがって未然に防止するために手技を工夫する必要があると思われた.
  • 西井 竜彦, 村松 高, 四万村 三恵, 古市 基彦, 石本 真一郎, 田中 洋子, 諸岡 宏明, 日暮 亮太, 高橋 佳奈, 豊島 幸憲, ...
    2012 年 71 巻 5 号 p. 346-348
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例は 30 歳,男性.約 2 週間前に義歯の脱落を自覚したが放置.最近になり咳嗽が出現したため近医受診し,胸部 X 線検査で右気管支中間幹に三連間橋義歯の気管支異物を指摘され,摘出目的に当院に紹介となった.最初に軟性気管支鏡下での摘出を試みるも,義歯が粘膜に刺入していたため摘出不可能であり,全身麻酔下,第 5 肋骨床開胸で右気管支中間幹の膜様部に縦切開をおき義歯を摘出した.合併症は認めず術後第 9 病日に軽快退院となった.
  • 中島 園子, 渡邉 健一, 田川 雅子, 鈴木 琢真, 斉藤 勝也, 丸山 英和, 羽賀 直樹, 益子 貴行
    2012 年 71 巻 5 号 p. 349-353
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2013/11/06
    ジャーナル フリー
    症例は 14 歳の男児.突然の胸痛のため近医から紹介受診となった.画像検査で縦隔気腫を確認後に三次病院へ搬送し,搬送先で特発性縦隔気腫の診断にて保存的治療のみで自然軽快した.本症は,典型例では数日で自然軽快する予後良好な疾患といわれており,続発性縦隔気腫との鑑別が重要である.小児科領域からの報告は非常に少ないが,小児科医も日常診療において念頭におかなければならない疾患のひとつである.
feedback
Top