細胞内における主要なエネルギー代謝経路は,ミトコンドリア呼吸と解糖系活性である.細胞のエネルギー代謝を解析することは,細胞の状態を知る上で重要である.細胞外フラックスアナライザー (XF) は,培養細胞のミトコンドリア呼吸の指標である酸素消費速度 (OCR)と解糖系の活性の指標である細胞外酸性化速度 (ECAR)を経時的に測定する細胞代謝分析装置である.本装置は,24 ないし 96 穴培養プレート上で非侵襲的に代謝を経時的に測定できるシステムである.XF 専用のセンサーカートリッジは,先端部に蛍光色素が埋め込まれており,酸素センサーと pH センサーの役割を果たす.細胞培養プレートの底がすり鉢状になっているため,細胞の周囲に 7 μL 以下の微小空間ができる.この微小空間により,細胞のエネルギー代謝による培養液の微小な変化を測定することが可能になる.蛍光センサーを搭載したカートリッジに取り付けられた薬剤ポートにさまざまな化合物を添加することで,細胞代謝をリアルタイムで測定することが可能になる.がん,代謝性疾患,免疫などさまざまな研究分野において,XF を用いた細胞エネルギー代謝メカニズムを解明することで,新たな検査法や治療法の開発につながることが期待される.
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