日大医学雑誌
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最新号
日大医学雑誌
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診療ガイドライン最新事情シリーズ
特  集 「基礎医学研究における解析技術」
  • 林 うらら , 原 弘之 , 平井 宗一
    原稿種別: 総説
    2024 年 83 巻 5 号 p. 171-176
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    細胞内における主要なエネルギー代謝経路は,ミトコンドリア呼吸と解糖系活性である.細胞のエネルギー代謝を解析することは,細胞の状態を知る上で重要である.細胞外フラックスアナライザー (XF) は,培養細胞のミトコンドリア呼吸の指標である酸素消費速度 (OCR)と解糖系の活性の指標である細胞外酸性化速度 (ECAR)を経時的に測定する細胞代謝分析装置である.本装置は,24 ないし 96 穴培養プレート上で非侵襲的に代謝を経時的に測定できるシステムである.XF 専用のセンサーカートリッジは,先端部に蛍光色素が埋め込まれており,酸素センサーと pH センサーの役割を果たす.細胞培養プレートの底がすり鉢状になっているため,細胞の周囲に 7 μL 以下の微小空間ができる.この微小空間により,細胞のエネルギー代謝による培養液の微小な変化を測定することが可能になる.蛍光センサーを搭載したカートリッジに取り付けられた薬剤ポートにさまざまな化合物を添加することで,細胞代謝をリアルタイムで測定することが可能になる.がん,代謝性疾患,免疫などさまざまな研究分野において,XF を用いた細胞エネルギー代謝メカニズムを解明することで,新たな検査法や治療法の開発につながることが期待される.

症例報告
  • 熊澤 文雄, 新谷 栄崇 , 野口 貴央 , 萩原 エリ, 権 寧博
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 83 巻 5 号 p. 177-181
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    75 歳,男性.2 週間持続する発熱,喀痰,咳嗽を主訴に来院した.右上葉に浸潤影を認め,細菌性肺炎を疑い抗生剤を投与したが効果は乏しかった.細菌性肺炎以外の疾患を考慮し,気管支鏡検査を行った.気管支肺胞洗浄液中のリンパ球数増加,アスペルギルス抗原陽性・β -D-グルカン高値を示し,血中アスペルギルス抗原陰性・β -D-グルカン陰性であったが,我々は経過・画像所見・気管支肺胞洗浄液 (BALF) 検査所見から総合的に考え,慢性壊死性肺アスペルギルス症と臨床診断した.ボリコナゾール (VRCZ) 投与により解熱し,画像所見も改善した.治療効果判定のため,再度気管支鏡検査を行った.BALF 中のリンパ球数と β -D-グルカン値は低下し,臨床所見と合致した.今回我々が経験した慢性壊死性肺アスペルギルス症において BALF 中 β -D-グルカンの診断的有用性および活動性の指標としての有用性が示唆された1 例を報告する.

  • 小早川 大宙, 横田 優樹, 原 誠, 名取 直俊, 中嶋 秀人
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 83 巻 5 号 p. 183-187
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は 75 歳,女性.約 1 年前から記銘力低下と見当識障害が緩徐に進行し,当院を受診した.MMSE 22 点で礼節は保たれていた.頭部 MRI に異常はなく,脳血流 SPECT で後部帯状回に相対的血流低下を認め,Alzheimer 型認知症の診断でドネペジル治療が開始された.診断 4ヶ月後から急速な認知機能低下が出現して入院.入院 2 週間後にはミオクローヌスが出現し,無動無言状態になった.入院後の頭部 MRI で右基底核と大脳皮質に拡散強調画像で高信号域を認め,脳波で周期性同期性放電を認めた.脳脊髄液 14-3-3 蛋白陽性と RTQUIC 陽性,プリオン蛋白遺伝子解析で codon129 多形MM より孤発性 Creutzfeldt-Jakob 病と診断した.当初は緩徐な認知機能低下と画像所見から Alzheimer 型認知症と診断されたが,発症 1 年 4 か月後から急速な症状進行を示し,孤発性 Creutzfeldt-Jakob 病の合併が考えられた.

  • 藤井 達士 , 三塚 裕介, 島本 直明 , 山崎 慎太郎 , 増田 しのぶ, 木暮 宏史 , 岡村 行泰
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 83 巻 5 号 p. 189-194
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2024/11/30
    ジャーナル フリー

    症例は 44 歳,女性.胃痛を主訴に近医を受診し,腹部超音波,造影 CT 検査で肝腫瘤を指摘され当院を紹介受診された.術前精査での各種検査の造影パターンから肝細胞癌や肝内胆管癌,肝線維腫などの鑑別が困難であり,肝原発腫瘍として左肝切除を施行し,術後病理検査で神経内分泌腫瘍と診断された.術前精査で他に原発巣が指摘されなかったことから,肝原発の神経内分泌腫瘍(NET) と診断した.術後 9ヶ月現在,無再発生存中である.肝原発 NET は非常に稀な疾患で,特異的な画像所見はなく,術前診断は困難である場合が多い.本症例も術前には確定診断が得られず,肝原発神経内分泌腫瘍の術前診断が困難であることが示唆された.

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