近年の肺癌診療は,画像診断技術の向上,低侵襲手術の普及,さらには分子標的薬および免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きな変革期を迎えている.本稿では,肺癌外科領域における術式選択と周術期治療の変遷について概説する.
早期肺癌に対しては,Consolidation/Tumor Ratio (CTR) の概念とJCOG0201試験の成果により,病理学的非浸潤癌の術前予測が可能となった.さらにJCOG0804,JCOG0802,JCOG1211試験により,肺楔状切除や区域切除の有効性が示され,小型末梢肺癌に対する縮小手術の適応が拡大した.一方,II-III期肺癌では,従来のプラチナ製剤併用化学療法に加え,免疫療法および分子標的治療を組み合わせた周術期治療が発展した.IMpower010試験は術後化学免疫療法の有効性を示し,CheckMate 816試験は術前化学免疫療法の有効性を確立した.さらにKEYNOTE-671およびAEGEAN試験により,術前後を通じた周術期化学免疫療法の有効性が示された.また,EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するADAURA試験は,著明な予後改善を示し,術後分子標的治療の標準化に寄与した.
肺癌外科は「切除範囲の最適化」と「個別化された周術期治療」の両輪で発展している.今後,外科医には手術技術のみならず,腫瘍生物学や薬物療法を理解した集学的治療戦略の構築が求められる.
抄録全体を表示