日大医学雑誌
Online ISSN : 1884-0779
Print ISSN : 0029-0424
ISSN-L : 0029-0424
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
診療ガイドライン最新事情シリーズ
特集「基礎医学研究における解析技術 2」
  • 浅居(髙野) 智圭
    原稿種別: 特集
    2026 年85 巻4 号 p. 167-172
    発行日: 2026/08/01
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

    初代細胞のシングルセルトランスクリプトーム解析は,従来のRNA sequencing (RNA-seq) では平均化されていた細胞集団内の不均一性を,個々の細胞の転写プロファイルとして捉えることができる手法である.single-cell RNA-seq (scRNA-seq) は,現在では細胞生物学的研究における基盤的解析手法の一つとなっている.本稿では,scRNA-seqの基本原理と従来のRNA-seqとの違いを概説し,ヒト羊膜上皮細胞を例に,組織由来初代細胞を対象としたscRNA-seq解析の実際を述べる.液滴を用いたscRNA-seqでは,個々の細胞を1つずつ微小な液滴内に閉じ込め,それぞれの細胞に由来を識別するための目印を付けることで,細胞ごとの遺伝子発現を解析する.その後,品質管理,正規化,次元削減,クラスタリングを行い,各クラスターで特徴的に発現する遺伝子を調べることで,細胞集団の性質を推定する.また,必要に応じてサンプル間の統合解析や細胞状態の連続的変化の推定を行う.一方で,羊膜上皮細胞のような初代細胞では,酵素処理,機械的刺激,セルソーティング,培養条件などが転写プロファイルに影響し得るため,細胞処理条件の事前検討と,解析目的の明確化が重要である.scRNA-seqには,低発現遺伝子が検出されにくいこと,組織内の位置情報が失われること,細胞集団の意味づけが難しいことなどの限界も存在する.scRNA-seqを有効に活用するためには,明確な生物学的問いと,単一細胞レベルで解析する必然性を持つことが必要である.適切な実験設計のもと,バイオインフォマティクス専門家と協働し,得られたデータの意味を丁寧に考察することで,本手法は基礎医学研究に新たな視点や仮説をもたらすものとなる.

総  説
  • 河内 利賢, 櫻井 裕幸
    原稿種別: 総説
    2026 年85 巻4 号 p. 173-179
    発行日: 2026/08/01
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

     近年の肺癌診療は,画像診断技術の向上,低侵襲手術の普及,さらには分子標的薬および免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きな変革期を迎えている.本稿では,肺癌外科領域における術式選択と周術期治療の変遷について概説する.

     早期肺癌に対しては,Consolidation/Tumor Ratio (CTR) の概念とJCOG0201試験の成果により,病理学的非浸潤癌の術前予測が可能となった.さらにJCOG0804,JCOG0802,JCOG1211試験により,肺楔状切除や区域切除の有効性が示され,小型末梢肺癌に対する縮小手術の適応が拡大した.一方,II-III期肺癌では,従来のプラチナ製剤併用化学療法に加え,免疫療法および分子標的治療を組み合わせた周術期治療が発展した.IMpower010試験は術後化学免疫療法の有効性を示し,CheckMate 816試験は術前化学免疫療法の有効性を確立した.さらにKEYNOTE-671およびAEGEAN試験により,術前後を通じた周術期化学免疫療法の有効性が示された.また,EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するADAURA試験は,著明な予後改善を示し,術後分子標的治療の標準化に寄与した.

     肺癌外科は「切除範囲の最適化」と「個別化された周術期治療」の両輪で発展している.今後,外科医には手術技術のみならず,腫瘍生物学や薬物療法を理解した集学的治療戦略の構築が求められる.

症例報告
有賀賞受賞記念講演
話  題
feedback
Top