サイズがnmからµmの有機結晶において,光物性や光反応がサイズや形状によって異なることが期待できる。そのため,単一ナノ粒子レベルで,フェムト秒からピコ秒の時間スケールで起こる励起状態の動的挙動を計測し,サイズや形状との相関関係を明らかにすることは,新奇な光機能発現に至るまでの階層性を理解する上で重要である。このような励起状態ダイナミクスを調べるためには,フェムト秒ポンプ−プローブ分光が有効な手法になる。本研究では,従来の測定手法では測定が困難であった光の回折限界より小さなサイズの有機ナノ結晶の励起状態ダイナミクスを測定可能にしたフェムト秒ポンプ−プローブ顕微分光手法を開発した。ここでは,試料からの光散乱をプローブ光とした測定手法と,一例として銅フタロシアニンのナノ結晶の励起子拡散過程について紹介する。
自己集合の原理に基づく合成手法と構造解析技術の両者が同時代的に発展することで,複雑かつ巨大な分子骨格の構築制御が可能となりつつある。本稿では,我々が最近進めているアセチレンの協働的金属配位に基づく3次元分子骨格の開拓に焦点をあて,放射光X線構造解析による構造決定を活用することで明らかとした,巨大構造間の動的変換および「絡まった」構造モチーフの部分改変について紹介する。
多孔質有機塩は,スルホン酸とアミンの電荷補助型水素結合により多孔質構造を構築するが,これまでそのトポロジー(ネットワークの形)はダイヤモンドネットワークであるdia-トポロジーに限定されていた。我々は,構成要素の立体配座の様式と比を変化させることにより,トポロジーの多様化とその制御を達成した。さらに,得られた多孔質材料を用いて,内包した発光分子の常温・大気下でのりん光誘起に成功したので,紹介する。
結晶化によりキラル化合物を光学分割する際,結晶中に両エナンチオマーを不定比で含む固溶体が形成すると,一方のエナンチオマーのみを得ることが困難になる。本研究では,結晶化とジアステレオ選択的な溶解を組み合わせた固溶体の新たな光学分割法を見出した。X線構造解析および相図の作成により4-cyano-1-aminoindaneとdi-p-toluoyl-L-tartaric acidとの塩が,全組成において固溶体を形成していることを明らかにした。さらに,三元系等温線より溶媒中での塩の結晶化挙動とジアステレオマー間の溶解速度の違いを明らかにし,これに基づいて結晶化とジアステレオ選択的な溶解を組み合わせることで,固溶体の光学純度を短時間で富化させることに成功した。
柔軟な水素結合性フレームワーク(HOF)は,その構造変化によってもたらされるユニークな機能性により, 近年注目を集めている。しかし,その柔軟性を生み出す本質的な構造要素は依然として不明である。本研究では,ピレンを基盤としたテトラカルボン酸のHOFがゲスト分子の脱離・吸着により,単結晶性を維持したまま可逆的かつ多様に構造変化することを明らかにした。単結晶X線解析によって,HOFの構造柔軟性の起源を特定した。
粉砕装置内への固着により粉砕が困難であったY5受容体拮抗薬の無水物結晶について,この結晶が劈開性を持ち,その劈開面に固着を惹起すると考えられる特徴的な官能基が存在することを単結晶構造解析より明らかにした。固着の原因究明と共に,結晶多形検討より得られた水和物結晶を利用することで,粉砕を可能としたことについて紹介する。
本研究では,発光性カチオンであるRu(bpy)32+を内包したシングルジャイロイド構造を持つ金属有機構造体(MOF)である[Ru(bpy)3] [M2(ox)3](bpy = 2,2′-Bipyridyl, ox = Oxalate, M = Zn, Mn)について,ゲスト-ホスト型の相互作用によるCPL異方性の著しい増強を達成した。
ひとつの分子の光応答が大きなアウトプットを生み出す非線形光応答分子システムは,次世代の光機能性材料の設計に対する有用なツールとして期待されている。筆者らは,蛍光性フォトクロミック分子をナノ粒子化することで、僅かな光反応で系全体の蛍光を非線形的に効率よくスイッチングできることを見出している。本稿では,非線形蛍光スイッチング応答の更なる高効率化に向けて,筆者らが最近取り組んでいる結晶状態での高効率かつ高コントラストな蛍光スイッチングに関する研究成果について紹介したい。
本稿では,レーザー誘起結晶化および多形現象の研究背景と現状,さらに制御メカニズムの考察について簡単に紹介する。パルスレーザー照射による結晶化の研究では,光学カー効果が結晶化を誘起し,レーザーの偏光モードが多形を決定する。一方,集光レーザービームの光圧による結晶化では,多形現象は初期溶液濃度に強く依存し,不飽和溶液からの系統的な多形探索を特徴としている。
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