理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
11 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著論文
  • 松田 光司
    1996 年 11 巻 2 号 p. 113-128
    発行日: 1996/12/31
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本稿は、Granovetterによって集団行動のモデルとして提唱された『閾値モデル』をもとにして流行現象のみにおいてさらに詳しく考察し新モデルの発表を目的とするものである。まず、理論面で閾値の分布形態と流行現象の関係を調べた。その結果をふまえて閾値モデルの矛盾点を指摘する。そしてその矛盾点を解決する為に、従来のある時刻の流行の採用率のみを考慮に入れたモデルから採用率と時間を考慮に入れたベクトル型閾値モデルを考案した。また、その新モデルにもとづいた社会調査を行ない、その結果得られたデータを新モデルに適用した。そして、その調査対象ではどのような流行現象が起こるかについて考察した。その結果、閾値モデルでは、終局の採用率がほとんど初期値によらないのに対して新モデルでは終局の採用率が初期値によって変化するということがわかった。
  • 大浦 宏邦
    1996 年 11 巻 2 号 p. 129-144
    発行日: 1996/12/31
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     現在のヒトはきわめて複雑な社会を構成しているが、もとをたどればそれも、原猿のつくる単純な社会から、真猿類の群れ社会を経て次第に進化してきたものである。霊長類におけるこのような社会進化のメカニズムを知ることは、秩序や規範の起源といった社会学上の基本問題にアプローチする上で不可欠であると考えられる。本研究ではこうしたアプローチの第一歩として、霊長類における群れ社会の形成メカニズムについて検討を行った。いくつかのESS(進化的に安定な戦略)モデルによる検討の結果、捕食者を避ける要因が多くの場合、群れ戦略を有利にする上で有効であることが明らかとなった。また、群れの形成はエサなどの資源を巡る争いを激化させる一方、個体密度が高い場合やエサ資源が不均一に分布している場合には、連合して資源を防衛するために群れを作る戦略が有利になりうることが明らかとなった。
学会賞講演
  • 土場 学
    1996 年 11 巻 2 号 p. 157-173
    発行日: 1996/12/31
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     数理社会学は、社会学を科学として自立化させることをめざす「啓蒙のプロジェクト」として出発した。そのさいそれは、「論理合理主義」のプログラムにもとづき、社会学理論を科学と非科学に峻別し、あわせてこれまでの社会学理論はほとんど非科学的な類似理論であると喝破し、真に科学の名に値する社会学理論の確立を標榜した。しかし現在、数理社会学は社会学のなかで確固たる地盤を築いたにもかかわらず、社会学全体の状況は数理社会学のもくろみどおりにはならなかった。その根本的理由は、論理合理主義のプログラムにこだわるかぎり社会学そのものが非科学にならざるをえず、したがって数理社会学の思い描く社会学理論なるものが多くの社会学者の思い描く社会学理論と乖離していたからである。そもそも、検証(反証)という普遍的基準で科学と非科学をアプリオリに判定するという論理合理主義の科学哲学が厳密には容認できないものであることは今日では明らかである。しかしその一方で、本来、数理社会学のポテンシャルは論理合理主義のプログラムを超えている。すなわち、数理社会学とは、社会学理論としての数理モデルの妥当性を超越的に宣言するのではなく経験的に追求していくプロジェクトであり、その意味で、このプロジェクトは今なお未完なのである。
研究ノート
  • 神事 直人
    1996 年 11 巻 2 号 p. 145-156
    発行日: 1996/12/31
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     様々なタイプの「社会的ジレンマ」モデルの中で,「保存」型のモデルについて検討し,一般的定式化を試みた。まず,三隅(1993a)が提示した「保存=損失均一モデルI」と「保存=共通モデルI」の定式化が,各タイプのジレンマの一般モデルとしては適切でないことを指摘した。そこで,あらためてそれぞれのタイプのジレンマを一般的に定式化したモデルを提示した。また,共有物の性質(非選択性)に着目しつつ,舩橋(1989)による社会的ジレンマの類型を手がかりにして,環境問題の観点から「保存=損失均一」型・「保存=共通」型ジレンマの特徴について考察を加え,本稿のモデルがどのような現実問題に対応しうるのかについて考察した。
フォーラム インターネット(2)
数理社会学10周年
レターズ
書評
訂正
feedback
Top