理論と方法
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12 巻, 2 号
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会長講演
  • 海野 道郎
    1998 年 12 巻 2 号 p. 121-133
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
         Based on the review of academic activity of JAMS since its foundation about 10 years ago, this presidential address advocates that activities in mathematical sociology need not be based on a single orthodox philosophical basis. Activities in mathematical sociology are, and should be, so various that the philosophy they base on as a whole should be multifarious. Each project should adapt the philosophy that is most suitable to its characteristics and abstraction level. The address also stresses that mathematical sociologists should be interested in pursuing the mechanism of social reality rather than in the technical improvement of mathematical models.
特集 社会学における進化論的アプローチの可能性
  • 土場 学
    1998 年 12 巻 2 号 p. 135-136
    発行日: 1998年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
  • 織田 輝哉
    1998 年 12 巻 2 号 p. 137-148
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     社会学においてゲーム理論の枠組みを用いて分析を行う場合、合理的選択アプローチと進化論的アプローチの二つがある。合理的選択アプローチが行為者の高度の計算能力を仮定し事前の熟慮によってナッシュ均衡を選択すると考えるのに対し、進化論的アプローチでは行為者は限定された合理性しか持たず、事後的に利得の高い戦略を選択するという方法で安定状態に至ると考える。
     この二つのアプローチは方法論的に大きな相違点を持つが、近年の進化論的ゲーム理論の発展は、二つのアプローチを結びつけることとなった。すなわち、進化論的ゲームの安定状態がワンショットゲームのナッシュ均衡と対応づけることができ、限定された合理性しか持たない行為者がゲームを繰り返す結果として、ナッシュ均衡に到達する可能性が示されたのである。したがって、この二つのアプローチは広義の合理的選択理論として、一方では均衡分析と均衡における相互行為のモデルによって、他方では歴史的経路の分析やシュミレーション分析によって、相互補完的に研究を進めることが可能である。
  • 中丸 麻由子, 松田 裕之, 巌佐 庸
    1998 年 12 巻 2 号 p. 149-162
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     人間はときとして、利他行動やスパイト行動など、短期的にせよ自分自身が損をする行動をとることが知られているが、合理性の仮定からは説明が困難と考えられてきた。しかし、進化ゲームにもとづいた最近の研究によってそれらの社会的相互作用の成立が説明されるようになってきた。その基礎には、遺伝子が競合する結果としておきる生物進化とのアナロジーで人間社会である雰囲気が成立する動態を追跡するという考え方がある。ことに人間の交際範囲がある程度限られていると、ランダムな相互作用の場合とは大きく異なる結果となることが知られるようになった。本論文では、著者らの研究も交えながら相互作用が局所的に生じる(空間構造がある)場合を単純化して表す格子モデルでの社会的相互作用進化の研究を紹介する。格子モデルは進化生物学でも最近よく用いられるが、解析方法はコンピューターシュミレーションに限られてきた。著者らはそれに加えて、出生死亡過程や独自に開発した近似解析法(ペア近似、ペアエッジ法)によっても解析をすすめた。
  • 数土 直紀
    1998 年 12 巻 2 号 p. 163-179
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     江原ら(1984)及び山崎&江原(1993)は、会話分析において次のような事実を見いだした。1)男性同士の会話では沈黙が多い。2)女性同士の会話では沈黙が少ない。3)にもかかわらず、男性と女性の間の会話では、男性が女性の話に割り込みやすく、女性が聞き役になる。江原らは、この奇妙な現象の中に性による権力を見いだした、しかし、江原らは、そのような権力を産出するメカニズムを特定できなかった。本稿は、進化ゲーム理論を用いて、このメカニズムを分析する。その結果、性による権力は自我を防衛しようとする感情に起因することが明らかにされる。また、本稿は、男性と女性の間の対等な関係が、否定的な他者に対する寛容によって可能になることを示す。
  • ─自然選択と主体選択─
    土場 学
    1998 年 12 巻 2 号 p. 181-194
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     社会進化については、しばしば、生物進化では自然選択が中心的であるが社会進化では主体選択が中心的である、という構図にもとづいて議論されることがある。しかしそこには、社会進化のロジックが適切に定式化されていないことによる概念的な混乱が含まれている。すなわち、本来的には、生物進化は物理的実在の世界の現象であるのに対し、社会進化は理念的実在の世界の現象である。にもかかわらず、この存在論的なレベルを混同してしまうことから、生物進化は自然選択で社会進化は主体選択という構図が導かれる。しかしながら、自然選択と主体選択の相違は、生物進化と社会進化という存在論的なレベルの相違に対応しているのではなく、社会進化を説明するさいに考慮しなければならないある認識論的なレベルの相違に対応している。すなわち、自然選択と主体選択とは、社会進化のプロセスに関与する諸々の主体の「世界」を準拠点とした上で、前者は主体の「ルール」に作用する選択として、後者は主体の「行為」に作用する選択として位置づけることができる。しかしそうすると、現実の社会進化のプロセスが自然選択によるものか主体選択によるものかを識別するためには、主体の世界のありようを記述・説明するためのロジックが不可欠であるということになる。したがって、こうしたロジックを用意しえていない現在の社会進化論では、それらの識別はもっぱら観察者の(主体の世界に対する)態度に依存しているといえる。
おわびと訂正
書評論文
  • ─トーマス・J・ファラロ『一般理論社会学の意味』をめぐって─
    土場 学, 渡部 勉
    1998 年 12 巻 2 号 p. 197-205
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     現代社会学において数理社会学の地位を確立した最大の功労者の一人であるトーマス・J・ファラロが、自らの学問的営為の集大成として『一般理論社会学の意味』をまとめあげた。本書の目的は、一般理論社会学を社会学における包括的な研究伝統として定義したうえで、そこにおいてこれまで並行的に展開してきたシステム思考、行為理論、構造主義の三つの下位伝統が現在「統―化のプロセス」にあることを指摘しつつ、そのことを生成的構造主義という構想のもとでフォーマル・モデルとして示すことにある。そのさい、ファラロの構想では、社会学の伝統的な行為理論と構造理論、ミクロ・モデルとマクロ・モデルが生成的構造主義のもとで調和的に統合される、ということになる。しかしながら、こうした構想は、行為と構造という構図のもとで社会学においてつねに問題にされてきた「循環」の問題を、ほんとうの意味で解決することにはならない。なぜなら、こうした循環の問題は、じつは従来の行為理論も構造理論もともに共有していた行為と構造の実体論パラダイムに由来しているからである。したがって、もしいま一般理論社会学がミクロとマクロの「統―化のプロセス」のただなかにあるとしても、それは従来の行為理論と構造理論の「収斂」のプロセスではなく、むしろそれらの「解体」のプロセスを意味しているはずである。ファラロの構想する生成的構造主義の問題は、根本的には、そうした認識を欠いていたところにある。
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