理論と方法
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13 巻 , 1 号
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特集 計量歴史社会学
  • 佐藤 俊樹
    1998 年 13 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1998年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ―都市移住者の計量歴史社会学―
    粒来 香
    1998 年 13 巻 1 号 p. 5-22
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     近代日本の都市移住に関しては、いわゆる「農家の次三男」説、すなわち農家の次三男が都市に流入し工業労働者階級を形成したとする説が今なお支配的である。けれども、この説には実証的にさまざまな問題があり、都市移住と都市諸階層の形成過程との関係については明らかにされていない点が少なくない。本稿では、60年東京SSM調査のデータをもちいて都市移住のありかたを計量的に分析し、戦間期と戦後期の2つの時期に焦点をあてて、近代都市としての東京の形成過程を明らかにする。
     都市移住には就学移動と就職移動の2つのルートが存在する。「農家の次三男」説は前者を無視した説であるということができる。戦間期には、上層労働者・下層労働者とも中核部分を形成したのは移住者であった。それに対して戦後期には、東京内部の各層が上層労働者の供給源となる一方で、移住者は下層労働者に集中した。こうした戦間期と戦後期の変化をもたらした要因としては、とくに学歴取得傾向における異同が重要である,戦間期には出身地による学歴格差が認められないが、戦後期には明らかな格差が生じており、これが職業キャリアのちがいに結びついたのである。
  • ─幕末日本の農民運動─
    野宮 大志郎
    1998 年 13 巻 1 号 p. 23-40
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     政治的機会構造概念を中心にした社会運動研究は、その隆盛に比して、概念レベルでの定義づけや分析上の有効性の範囲が曖昧なまま残されていた。本稿では、政治的機会構造概念をその思考前提とともに検討したうえで、政治アリーナヘの積極的な参入を企図しない社会集団による運動の生起のタイミングは、政治的機会構造によっては律されないと主張する。むしろ、運動生起のタイミングはその社会集団の持つイデオロギー特性と集団の社会全体の中に占める位置によって規定される。この観点から江戸期日本の農民運動の主体たる農民集団を検討した結果、運動のタイミングは政治的機会構造よりもむしろ経済構造の変動により大きく規定されていると考えられた。この主張の妥当性を時系列データを用いて検証した結果、主張は支持された。
  • ―家族史研究を中心として―
    蘭 信三, 中里 英樹
    1998 年 13 巻 1 号 p. 41-57
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿は、計量的歴史社会学の展開を跡づけるとともに、その可能性と今後の課題を論じるものである。アメリカにおける歴史社会学の復興が、没歴史的な一般理論の構築とその検証としての社会調査への反省から生じたこともあり、その主流は、質的データを多面的に検討することによって歴史的な事象を理解する、あるいはその因果律を明らかにしようとするものであった。しかし、一方で計量的歴史社会学と呼べるような試みも、着実に成果をあげてきた。集合行動と社会変動など比較的マクロな対象をあつかう主流派歴史社会学とトピックを共有しつつ、コンピュータを用いた計量的分析を行ったティリーやレイガンがその例であるが、本稿で中心的に見ていくのは、フランス・イギリスの歴史人口学・家族史からくる流れである。その流れは、アメリカにおいて、社会学・人口学における計量的方法の発達を受けて、イベントヒストリー分析などの多変量解析を用いた家族史研究へと展開する。さらに大量データをコンピュータによって処理し計量的に分析する家族史の試みは、日本においても成果を挙げつつあり、その一例は本稿で紹介される。このような計量的歴史社会学は、データの収集と加工およびその処理、分析技法、個人単位の分析と長期変動の分析との両立など、解決すべき課題も多いが、これらの課題に適切に対処できれば、歴史社会学、さらには社会学全般において大きな流れを築いていく可能性を持っているといえよう。
原著論文
  • ─3階層モデルのゲーム分析─
    尾張 豊
    1998 年 13 巻 1 号 p. 59-74
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     従来、公立学校の教育成果の低下の原因に関する研究が数多くなされてきた。その多くは原因を画一化教育や過度な受験教育などの教育内容の欠陥に求めている。一方で、その原因を学校組織に内在する欠陥に求める議論はほとんどなされてこなかった。
     そこで、本稿ではTirole(1986)の提起した3階層組織モデルを学校組織に適用し、多段階ゲームを用いてその原因の追求と教育成果の向上のための改善案について考察した。
     主な結論は以下のとおりである。αプリンシパルがエージェントにその努力、あるいは教育成果に関係なく一定の報酬を提示すれば、エージェントは低い努力を実行する。βエージェントの努力水準が観察できる場合、プリンシパルはエージェントの努力水準に応じた報酬を提示すればよい。γ生徒の能力が観察できない場合、プリンシパルはエージェントに教育成果に応じた報酬を提示すればよい。δスーパーバイザーがエージェントと共謀してプリンシパルに嘘の報告をする場合には、プリンシパルは共謀を防止するための報酬を支払わなければならない。
  • 七條 達弘
    1998 年 13 巻 1 号 p. 75-91
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     Weibull(1995)は、進化ゲーム理論の模倣モデルとして、新しいタイプの伝播モデルを作った。従来のモデルと違い、利得の概念を持ち込むことによって、このモデルは、二つの文化要素が共存する状態を記述することができるようになった。また、利得から伝播方程式を導くので利得を変えることによって、多様な社会現象を説明することもできる。
     しかし、二つの文化要素からなるWeibull(1995)の伝播モデルにおいては、それまでの伝播モデル同様、片方の文化要素がいったん広まってすたれるという山型の動態や、片方の文化要素を採用する人の数が振動する周期的な挙動をモデル化することはできない。また、実際には、現時点の社会状態を知ることはできず、常にわずかに前の状態しか知ることができない。そこで、本稿では、今まで無視されてきた時間遅れという要素をモデルに組み込むべきであると主張する。これによって、自然に山型や周期型の挙動を表現することができる.そして、この時間遅れのある伝播モデルを使って、山型の社会現象であるバブル現象や、周期型の社会現象である流行現象を説明するモデルを構築し、情報が正確になるほど社会が不安定化するというインプリケーションを得た。
  • 一針 源一郎
    1998 年 13 巻 1 号 p. 93-106
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     日本企業のグローバル化で、かつての貿易摩擦よりも深刻な投資摩擦が引き起こされる可能性が高い。そこで、不連続な変化を扱うカタストロフィー理論を応用して、投資摩擦の発生メカニズムを解明し、防止の一助とすることを目的とした。
     日本企業の海外進出は、「働き口が多くなる」と一般に歓迎されているが、「競争が激化し自国企業が苦しい」という反対もあり、被投資国の景況の悪化は、歓迎・反対の両方の世論を高める分裂要因であり、不快指数(失業率+インフレ)で表わした。一方日本のプレゼンス拡大は「日本人・製品が増えて欲しくない」という反対を常に高める平常要因であり、日本の直接投資残高の伸び率で示した。
     この2つを外生変数とし、日本の投資を歓迎しない人の比率を被説明変数として投資摩擦モデルを作成した。「くさびのカタストロフィー」関数を用い、欧米亜13力国の経済環境と大蔵省「対外直接投資状況」、外務省「対日世論調査」のデータに基づき係数を推計した。
     今回の分析では、投資摩擦を2つに分類することができた。
    (1) 集中豪雨的な企業の直接投資は、やや遅れて「不満型」投資摩擦を引き起こす。
    (2) 失業率・インフレなどが低くなる経済的好況も、「自立型」投資摩擦のきっかけになる。
  • 木村 邦博
    1998 年 13 巻 1 号 p. 107-126
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     階層意識としての不公平感の形成過程に関して、自己利益正当化仮説と客観的公正判断仮説という2つの仮説を構築する。階層的地位のうち学歴に注目することにより、客観的公正判断仮説の下位類型の中でも教育による啓蒙効果に関する仮説に焦点を合わせる。自己利益正当化仮説・啓蒙効果仮説のそれぞれから、学歴、学歴社会イメージ、社会に対する全般的不公平感の三者間の関連に関する予想を導き出す。予想に適合的な傾向が観察されるかどうか、高校生とその両親を対象とした社会調査で得られたデータを用い、クロス集計結果のグラフ表示により検討する(交互作用効果に関するパラメタを条件付き効果の形で表現したロジット・モデルも適用する)。自己利益正当化仮説から導出した予想を支持する傾向が見られたのは、高校生の父親においてのみである。啓蒙効果仮説から導出した予想を支持する傾向は、高校生の母親において観察される。
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