理論と方法
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14 巻, 2 号
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特集 数理社会学とシミュレーション
  • 遠藤 薫, 七條 達弘
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_1-2_2
    発行日: 1999年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ―反復投資ゲームによる定式化―
    浜田 宏
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_3-2_17
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     ジブラ法則に従うことが経験的に知られている所得分布が、個人の合理的選択の集積によって生成される過程を単純なモデルによって定式化することを試みる。ベースライン・モデルとして「成功すれば高利得を得るが不確実な投資」と「低利得しか得られないが確実な安全策」のどちらかを行為者が合理的に選択する反復ゲームを用いた。モデルの利得構造を決定する所与のパラメータは投資成功確率(報奨密度)&gと投資に対する利益率Rである。分析は数値計算によるシミュレーションでおこなった。ゲーム回数を5または10とし、R={0.5,1,2,3}、0≦γ≦1の範囲でパラメータを変化させ、それに伴う総獲得純益分布の歪度およびジニ係数の変化を調べた。分析の結果、ジニ係数の増減には臨界点が存在するという予想が得られた。
     また、ゲームの勝者がより多く投資してより多くを得る累積効果を考慮した場合、反復投資ゲームが生成する総獲得純益分布はγ›1/(R+1)のとき対数正規分布に従うことがわかった。
  • 小山 友介
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_19-2_31
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本論文では消費者の購買行動と店舗内ディスプレイのヒューリスティックが低関与商品の競争力の強化につながると言う仮説をシミュレーションで競争プロセスを表現・解析する事で検証した。(1)消費者が最大化原理ではなく満足化原理(サイモン)に従う、(2)店舗がPOS(販売時点情報管理システム)情報によって商品の消費者への露出度が操作され、「死に筋商品」は直ちに排除される、と言う仮定の下でのシミュレーションの結果、以下の結果を得た。(1)「死に筋商品」はすぐに店頭から淘汰される。(2)「売れ筋商品」は消費者から発見される確率の増大→売上の増大と言う「好循環」が見られる。(3)どの商品が生き残るかを事前に知る事は難しい。(4)商品の競争レベルに関係なく、消費者の得る効用は比較的安定している。
  • 岡田 勇, 石田 和成, 太田 敏澄
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_33-2_52
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     限定合理性の仮説では,人間の認知能力の限界から,再組織化に対する最適なアプローチは存在しない。しかし,パーソナリティを取り込んだモデルを構築し,そのエージェントに態度変容を生じさせ,組織行動のパターンに適当な態度のゆらぎをもたらすことにより,効果的な再組織化過程を実現することができる。このモデルは,パーソナリティを備えたマルチエージェントのモデルであり,組織業績や環境適応の観点から,再組織化過程を検討するものである。再組織化過程は,実証的な研究方法の適用が困難な複雑な対象であるため,計算機シミュレーションを用いている。さらに,このようなアプローチを操作的オーガニゼーション指向アプローチと総称し,方法論的可能性についても議論する。再組織化過程における態度のゆらぎは,心理学における達成動機とMinskyの差分エンジンの概念を取り入れて構築している。パーソナリスティックエージェントは,タスク執着,対人好悪感情,保守性を変数として構築している。その結果,組織性員のパーソナリティや態度のゆらぎを媒介として,再組織化─硬直化を引き起こすメカニズムを,ポジティブ─ネガティブ・フィードバックに対応させて記述することが可能になったと考える。
  • 兼田 敏之
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_53-2_71
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本小論は、問題解決モデル研究において発案した「主体」に関する数理モデルの説明を行なう。「主体」に関する知的機能の概念化の議論を手始めに、その主たる機能とも言うべき「認識」「学習」を論じうる「内部モデルを持つ主体」ならびに「学習過程」の形式化に言及する。
     その上で、筆者らの発案した「主体」の数理モデルを説明し、その特徴を述べる。3種類の「(単調)学習過程」の考え方を説明し、数値例を示しながら、各々の学習過程の数値例を示す。「モデル空間」などの諸概念についても数学的性質とともに言及する。
     「複合主体系」の定式化例として、前述の主体モデルにより構成される「階層機構モデル」を説明し、階層システム論・組織論上の特徴に触れる。いくつかの組織学習過程における数値例を示す。また、「相互作用系」の定式化例として、「ハイパーゲーム」に言及する。これら数理モデルは、ゲーミング・シミュレーション、エージェント・シミュレーションのモデル構造の基礎を供するもので、問題解決モデル研究においては、これら3種類のモデルを混合させて問題解決に迫る「混合アプローチ」が有望である。数理社会学モデルとの接点についても触れたい。
  • 富山 慶典, 細野 文雄
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_73-2_88
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     研究室配属とは,大学における卒業研究やゼミナール活動などのために,学生を研究室に配属させることをいう。“学生は1つの研究室にしか所属できず,研究室は定員をもち,学生と研究室の両方の意向にもとづいて配属するということを前提として,すべての学生をどこかの研究室に必ず配属する”という要請を満たす研究室配属制度を対象とする。社会的マッチング理論に基づく学生志願型GS制度は,この要請を満たし,かつ,いくつかの理論的に望ましい性質をもっている。しかし,すべての学生がすべての研究室に対する線形の選好順序に基づいて全研究室数分の順位を表明するということを仮定している。実際の研究室数はそれほど小さくないため,非現実的である。この制度を実際に利用できるようにするためには,比較的小さな学生表明順位ですべての学生の配属が可能であるか否かを調べなければならない。そのため,モンテカルロ・シミュレーションを実施した。その結果,学生の情報処理能力からみて無理がなく,配属される研究室に対する学生の希望順位の格差を小さくできる比較的小さな学生表明順位と,配属される学生数を研究室間で均一化できる小さな研究室定員との組の存在が明らかになった。
  • ―シミュレーションの基礎理論構築へ向けて―
    七條 達弘, 中野 康人
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_89-2_101
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、シミュレーションにおける学習モデルの性質を整理し、既存のモデルを見直すことにある。学習モデルは時間や確率を扱うモデルであり、シミュレーション研究でしばしば使われるモデルであるが、必ずしも統一した学習ルールが存在するわけではない。学習モデルの性質としては、モデルの技術的性質(単調性、確率性、不偏性)と結果の合理的性質(固定環境における合理性、第一次確率支配環境における合理性、リスク選好つきの合理性)を検討する。Macyモデル、Erev & Rothモデルなど、集合行為や社会的ジレンマに関する既存の学習モデルを各性質に照らしあわせてみると、各モデルが異なる性質を持つことがわかる。Macyモデルの結果から、学習が社会的ジレンマの解決策の一つとしてあげられるようになったが、本稿の議論から、Macyの学習モデルは一つの特殊な学習モデルであり、任意の学習によって社会的ジレンマが解決するものではないということがわかる。このように、モデルの性質を統一した観点から比較検討することで、個別の学習モデルの特徴が明らかになる。またこれは、現実の人間行動と学習モデルの整合性を検討する際の指針となる。
原著論文
  • 金子 太郎
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_103-2_107
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     この論文の目的は集合行為論、N人囚人のジレンマ研究において中立性定理が持つ意味を解説することにある。中立性定理は「政府による課税・公共財供給がプレイヤーの公共財への自発的な貢献を完全にクラウド・アウトし(締め出し、押し退け)、その結果社会の公共財の供給量は増加しない」ことを含意する。また、「政府による課税・公共財供給が社会の公共財供給量を増加させる場合は、この政策はパレート改善的ではない」こともこの定理の拡張として示せる。前者の命題はMichael Taylorが論じた「国家の下での自発的協力の衰退」を理論的に説明する。前者、後者を合わせた命題の全体はこれまでの集合行為論、N人囚人のジレンマに基づく国家論における通常の結論と反する。つまり、これまでのこの種の研究においては、国家による公共財供給は全てのプレイヤーの状況を改善するパレート改善的なものであり、国家はこうしたパレート改善的な状況を実現できると考えられてきたが、この2つの命題は国家はこの課税・公共財供給という方法によってはそうしたことを行えないことを示しているからである。これまでの集合行為論、N人囚人のジレンマの前提とこの中立性定理が示されるモデルの前提の違いは、プレイヤーの戦略が協調、非協調という2つの戦略から連続的な戦略へと拡張されていることである。つまり中立性定理は、一般に権力機構が成員に対して負担金を課すことを通じて、その集団にとっての公共財を自ら供給するという方法で集合行為問題を解決することに関して、協力、非協力という2つの戦略だけを前提にしていたときには存在すると考えられていなかった困難が存在することを示していると考えられる。
研究ノート
  • 木村 泰之, 山口 和範, 北山 聡
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_119-2_125
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     結合度は,ネットワークデータを分析する際に用いられる社会ネットワーク分析の指標である.結合度は,今まで頂点間の隣接関係をトレースしていくことによって求められてきた.このアルゴリズムは,コンピュータ科学の分野で深さ優先探索(depth first search)と呼ばれている手法に相当するものであり,グラフ構造を持つデータの深さを探る効率的なアルゴリズムであることが知られている.しかし,グラフ理論におけるパス定理とグラフの直径に関する性質を利用することによって,単純な行列の演算による結合度の測定が可能となる.本研究では,行列演算に基づく結合度算出のアルゴリズムを提示し,幾つかのデモンストレーションを行った後,結合度という指標をグラフ理論的な用語で定義する.
  • 行方 常幸, 行方 洋子
    1999 年 14 巻 2 号 p. 2_127-2_133
    発行日: 1999/09/30
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿では囚人のジレンマゲームにおいて、協調行動への志向を持つプレイヤーを明示的に仮定することにより協調行動を説明する。従来の自利にのみ固執するタイプに協調行動を志向するタイプを加えることにより、ある協調行動を志向するタイプの協調行動への貢献が示された。つぎに、平均利得を持つリプリケーター・ダイナミックスにおいて、時間の経過と共に、自利に固執するタイプが0%に近づき、戦略Sticky Tit-for-Two-Tats(STF2T)が増えることがわかった。さらに、自利に固執するタイプが駆逐されない新たな学習モデルを導入し、STF2Tの存在により協調行動を志向するタイプが増大することを示した。
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