理論と方法
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16 巻, 2 号
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特集 検証、少子・高齢化
  • 池 周一郎, 近藤 博之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 161-162
    発行日: 2001年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ―年齢別有配偶出生率の問題性―
    廣嶋 清志
    2001 年 16 巻 2 号 p. 163-183
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     近年の合計出生率低下について,夫婦出生率低下が寄与していないという有力な見解が普及しているが,本研究はこの見解を生み出した年齢別有配偶出生率AMFRを用いた要因分解法を批判した。
     コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率によって年齢別有配偶出生率AMRFを計算するモデルを基にして,コーホートの年齢別初婚率と結婚期間別夫婦出生率の水準と分布がそれぞれ変化する4つのシミュレーションによって,年次別合計出生率低下を年齢別有配偶率と年齢別有配偶出生率による要因分解の結果を観察した。その結果,初婚率分布の変化(晩婚化または早婚化)が生じていない場合のみ,その要因分解は適切な結果をもたらすが,初婚率分布が遅れると夫婦出生率に変化はないのにもかかわらず,年齢別有配偶率のみが低下をもたらし,年齢別有配偶出生率AMFRは上昇の効果をもつという結果となり,誤った解釈を生むことを明らかにした。
     この問題はより一般的に,第1の行動を前提として第2の行動が生じる場合に,第1の行動経験者について第2の行動を年齢によって分析を行う際の注意点として一般化される。
  • 鈴木 透
    2001 年 16 巻 2 号 p. 185-197
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     国立社会保障・人口問題研究所の中位推計(1997)が想定する将来の再生産率水準に基づき、親族数の分布を求めた。この再生産水準は長期的な人口減少をもたらし、子供数の平均は1.61人、無子確率は17%となり、高齢者の親族資源は現在に比べ大幅に低下することが示された。孫、兄弟姉妹などの親族についても、平均・分散・不在確率を計算した。ロジスティック回帰分析の結果、無子確率の上昇と平均子供数の減少は、子との同居割合を大幅に低下させることが分かった。モデルの応用例としての人口の絶滅確率、および出生タイミング(晩産化)の親族資源への影響についても考察した。
  • ―新家政学的接近の限界に関する考察―
    今井 博之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 199-210
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     合計特殊出生率が1.4をもしたまわっていることが表すように、近年の日本では少子化が深刻となっているが、その原因分析においては、女子労働に注目して出生力を出産・育児の機会費用と結びつける新家政学的接近が有力な位置を占めている。本稿は、その日本における有効性を検討することを目的としており、2つの観点のそれぞれから否定的な結論を導く。
     第1に、バッツ=ウォード型モデルによる時系列分析を試みる。既存研究を概観して2つの式をとりあげ、いずれが表すモデルも1968-2000年の日本の合計特殊出生率に適合しないことを示す。
     第2に、新家政学的接近が出生力と妻の労働力参加との負の関係を前提としていることに注目し、都道府県別データによるクロス・セクション分析を行う。出生力の指標としては1995年の「国勢調査」からえられる平均同居児数を用いる。既婚女子については有業の割合をとりあげて、さらに有業の既婚女子については正規雇用の割合をとりあげて分析を行い、出生力と妻の労働力参加との間にむしろ正の関係が観察されることを示す。
  • ―SSM調査による高年齢層の職歴・所得・家族に関する分析―
    岩井 八郎
    2001 年 16 巻 2 号 p. 211-227
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿は、1975年、85年、95年のSSM調査を用いて、とくに男性の60歳代を対象に、不就業層の所得と家族形態との関係から、社会的地位の転換の特徴を明らかにした。まず、1970年代後半から80年代前半にかけて、不就業への道筋が拡大したが、その後、不就業への道筋は大企業・官公庁の雇用者に限定される傾向が強まった。年金制度の拡充は、不就業層の経済的地位を向上させた。75年では、不就業層の本人所得は低所得に偏っていたが、85年では、低所得と年金受給者の2つに分かれていた。95年になって、年金額の周辺に集中している。それに伴い、家族形態の意味も変化しており、95年において、経済的な依存という意味での子どもとの同居が減少しており、不就業層にとっても、子どもとの別居が経済的な面から見て選択可能になった。1990年代になって、近代的な核家族が、高年齢層の不就業層にとっても選択可能な家族形態になったと言える。近代産業社会では、収入の手段を持たない不就業層は「弱者」とみなされる。1970年代以降、高齢者政策が展開される中で、高齢者の地位は、依存する存在から独立した存在へと転換している。それによって、高齢者全体の地位の独立性もさらに高まったと考えられる。
原著論文
  • An Analysis by Boolean Role Model
    Kazuto MISUMI
    2001 年 16 巻 2 号 p. 229-243
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
         This paper, based on the Boolean role model originally proposed by Misumi (1998), analyzes conditions for dyscommunication between actors. We postulate that an actor constructs a role image X based on the finite set of role elements G. After we formulate X as Boolean equations, focusing on the coincidence between the performer's X' and the observer's X”, we introduce judgment rules for dyscommunication. The first level dyscommunication is caused by the discrepancies in G between groups. Based on the simplest two-element model, we prove three theorems about the conditions for it. The second level dyscommunication is the dyscommunication that occurs even when the common G is shared by the groups. It is caused by the diversity of the role image. In the extended three-element model, we investigate some “weighting principles” that extract relatively large specific sets of images, and we find that the “tolerant principle” is effective to avoid inter-group dyscommunication. After the general effectiveness of the principle is proved, the theoretical and practical implications are discussed. The real situation implied in this study is, especially, one of international marriages which have increased recently in rural areas of Japan.
研究ノート
  • 近藤 博之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 245-252
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     社会移動の研究では相対的な移動率を測定する目的でオッズ比が用いられることが多い。とくに欧州の研究者たちは機会の不平等度を評価する指標としてオッズ比に高い信頼を置いている。しかし、その意味するところは自明ではない。とくに時間的な変化を検討する際に他の指標と矛盾する結果をおたらすことが多い。この論文では、まずイギリスにおける移動研究の論争からオッズ比が抱えている問題点を説明し、その後でオッズ比の変化と比率差の変化を同じ座標空間で検討する方法を与えている。また比率の絶対比に注目した指標とオッズ比の異同、それらのイデオロギー的な性格についても論じている。それより、オッズ比が移動研究者によって信じられているほど機会の不平等度を測定する客観的で公平な指標とは言えないことが示された。
書評論文
  • ―社会的ネットワーク分析におけるその価値と位置づけについて―
    辻 竜平
    2001 年 16 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 2001/10/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     日本の社会的ネットワーク研究は、パーソナルネットワーク研究に偏りがある。より構造主義的なネットワーク分析への関心がもっと高まるべきである。WassermanとFaustによるSocial Network Analysis: Methods and Applicationsは、構造主義的ネットワーク分析を学ぶために優れた教科書である。しかし、社会的ネットワーク分析の範疇にありながら本書から抜け落ちていることもあるし、本書出版以降も社会的ネットワーク分析は発展しつづけている。これらを概観することによって、社会的ネットワーク分析の全体像を見通し、そこでの本書の位置づけを明らかにしたい。
書評特別企画 1995年「社会階層と社会移動」全国調査(SSM調査)
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