理論と方法
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16 巻, 1 号
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特集III 実証の姿 その思想と展開
  • 野宮 大志郎, 中井 美樹, 杉野 勇
    2001 年 16 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2001年
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
  • ―科学哲学の視点から―
    野家 啓一
    2001 年 16 巻 1 号 p. 3-17
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     「実証主義」および「実証的方法」の起源、歴史的展開、現状を科学史・科学哲学の観点から概観する。科学における実証的方法は、17世紀の科学革命を推進した「実験哲学」の精神に由来し、19世紀半ばに「観察-実験」および「検証-反証」の手続きを組み合わせた「仮説演繹法」として定式化された。社会科学の領域に実証的方法が導入され、古典的実証主義が成立するのも、この19世紀半ばのことである。20世紀に入ると、「論理実証主義」を標榜するウィーン学団が「統一科学」を目標に掲げ、自然科学と社会科学の方法的統合を試みた。しかし、物理学の統一言語によって社会科学をも自然科学に同化吸収しようとするラディカルな還元主義は、種々の困難から中途で挫折せざるをえなかった。論理実証主義に代わって登場した「ポスト実証主義」の潮流は、「観察の理論負荷性」や「決定実験の不可能性」などのテーゼを提起することによって、「実証性」の理解に重大な変更を迫った。それを踏まえるならば、自然科学と社会科学の関係もまた、「階層関係」ではなく「多元的共存」の形で捉え直されねばならない。
  • A Neglected Virtue of Theory-driven Research
    Rodney Stark
    2001 年 16 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
         When research is theory-driven, the “proper” research method is the one that best tests one's theory. An often unnoticed byproduct of theory-driven research is the ability to “discover” appropriate data. I illustrate this point with the many instances when I recognized that the data I needed to test a theory were already available in some rather odd places.
  • ―構築主義的な質的探求の可能性―
    中河 伸俊
    2001 年 16 巻 1 号 p. 31-46
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     質的探求の方法論は多元化し、それをめぐる議論は錯綜している。本稿の目的は、社会問題研究の分野で定式化された構築主義アプローチの理路の明確化を通じて、そうした錯綜から抜け出る道を探ることである。グブリアムらの『質的方法の新言語』は、質的探究の「方法についての言語」を、自然主義、エスノメソドロジー、感情主義、ポストモダニズムの四つに整理する。自然主義は従来、社会学や人類学の質的探究の主流だった。他のものは、それに対する方法的反省の三つの方向を示すといえよう。筆者がコミットする構築主義アプローチの質的探究は、基本的には、エスノメソドロジーのhowの問いに、自然主義的なwhatの問いを再構成して組合せたものである。この二つの問いに導かれる構築主義的探究は、長年社会学のセールスポイントであり続けてきたwhyの問いを禁欲する。それは、その問いが招き寄せるポジティヴィストの原因論(因果モデル)が、研究対象となる人びとの営みの全体化(物象化)につながり、日常言語のカテゴリーと乖離した専門的カテゴリーに依拠し、自然科学における規則性と社会科学における規則性の性質の違いを無視するものであるからだ。グブリアムらは上の四つの方法論の総合を奨めるが、それは生産的ではないだろう。むしろ、エスノメソドロジーを踏まえた構築主義的探究に特化して、「調べられるものを調べる」という姿勢を堅持し、研究対象となる人びとの営みの全体的記述と本質的記述を断念することが、現下のいくつかの方法論的難題から抜け出し、健全な経験主義を再興するための近道であるだろう。
  • ―ライフイベント分析からの試み―
    高橋 正樹, 岸野 洋久
    2001 年 16 巻 1 号 p. 47-60
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     人生の各段階で私たちはさまざまな出来事(ライフイベント)に遭遇する。困難な状況下における人の意識や行動(対処)の様式は、イベントの有無や置かれた環境のみならず、幼児期から現在にいたる個人の人生経験にも大きく影響される。そして、この対処が続く人生の行動様式を形作って行く。こうした人生の長期にわたる履歴をはかる手法として、詳細な口述記録に基づくライフヒストリー研究や人生のある側面を投射した記録を繋ぎ合わせて行くライフコース研究がある。本稿では、集団解析を通じて、記憶化された人生の出来事の持続時間と他の出来事による置き換わりの過程を定量化することを試みる。目黒区住民を対象とした質問紙調査から、結婚や親の死、子の誕生などが強い出来事として記憶化される、という全体の傾向を明らかにした。ライフコースに添った思い出の置き換わりが見られるが、女性に比べ男性の方が置き換わりの程度が大きいこと、置き換わりは職業上の出来事の記憶化によって促進されること、通常の人生軌道では予期されていないような出来事は長期にわたり記憶化される傾向があることなどが明らかになった。また、集団の探索的解析により「戦争体験」といった同時代経験の重みを量的に位置づけることができた。人生の実証分析というテーマの中に、質的アプローチと量的アプローチの統合への可能性を読み取ることが期待される。
  • The Potential of Multilevel Models
    John P. Hoffmann
    2001 年 16 巻 1 号 p. 61-74
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
         A number of disciplines in the social and behavioral sciences address data that are quantitative and hierarchical. Examples include quantitative data on students who attend various schools, psychiatric patients who are treated by different mental health specialists, and workers who are employed by different types of firms. Longitudinal data are also hierarchical in the sense that data on individuals are collected at different time points. Similar to students being nested in schools, observations may be nested within individuals. This paper discusses a set of very useful statistical tools, known as multilevel models, that may be used to examine hierarchical data. It begins with a general description of these models and then provides specific examples that address common social science research issues. It also discusses software that makes these models available for even the novice social statistician.
  • ―社会調査研究のある最前線―
    坂元 慶行
    2001 年 16 巻 1 号 p. 75-88
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     筆者は、「日本人の国民性調査」に長く携わり、これまで、この調査研究を継続する過程で三つの研究目的(計量的日本人研究、社会調査法の研究、統計解析法の研究)に関して調査の現場でどのような問題に直面し、どのように対処したか(あるいは、どのように対処すべきか)について、さまざまな報告や主張や提案を行ってきた。本稿はそれらの記録である。記録の内容は、計量的日本人研究に関しては、20世紀後半期の日本人の意識動向の概括、社会調査法に関しては、実査を専門調査機関に委託する際の調査結果の連続性に関する問題と対策、統計解析法に関しては、実用的な統計学の構築をめざして、統計モデルと情報量基準によるその評価という立場からの情報量統計学の提唱、等である。
  • 赤川 学
    2001 年 16 巻 1 号 p. 89-102
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     言説分析を経験的な社会学の一手法として鍛えるために必要な、基本的な論点を提出する。第一に、言説分析は自らの外部には出られないが、だからといって分析が不可能になるわけではない。第二に、言説分析は言説空間の全体性を仮想する。第三に、言説分析は、言説(が存在すること)の客観性を前提としつつ、社会的事実としての言説空間の成立・変容過程を分析する。そこでは、「あの言説が語られず、この言説が語られるのはなぜか」という問いが中心を占める。第四に、言説分析は、「誰が語るか」以上に、「誰が語っても似たような言説になるのはなぜか」を問うものである。
  • ―蜂の巣城紛争の再考―
    三隅 一人
    2001 年 16 巻 1 号 p. 103-120
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     本稿では、近年盛んな質的データの定型的な分析法の一つとしてP.AbellのComparative Narrativesに着目し、その一般的な特徴や問題点を整理したうえで、とくに質的資料の二次分析におけるその意義を検討する。事例として、いわゆる「蜂の巣城紛争」の初期段階をとりあげる。まず相互行為モードの抽象化によって、この紛争プロセスにおける重要局面を絞り込む。次いで、その重要局面を中心にAbellのいう局所的説明を拡張した意味論的掘り下げを行い、当事者の意志とその理解に関する当事者間のずれが、紛争経過に及ぼした影響を吟味する。二次分析においてComparative Narrativesの効用を増すには、意味論的掘り下げ⇔抽象化⇔一般化という分析枠のなかにそれを位置づけることが望まれる。
学会賞受賞講演
研究ノート
  • 山本 啓三, 宮島 佐介
    2001 年 16 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー
     経済現象の一例として、毎年5月に発表される前年分の高額納税者リストを取り上げ、その納税額と順位の関係を考えた。これは複雑な入れ子構造的経済活動の結果の一側面であり、フラクタル的な規則性があると考ている。全国、都道府県別の高額納税額順位リストより、次の特徴を得ている。高額納税額はその順位に対してベキ乗則となり、その全国のベキ乗則の指数は米国のCEOの給与と賞与のみから得られる指数と一致している。又、各都道府県のベキ乗則の指数はその地域の経済活動の指標となり得ることも示唆している。
書評
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編集後記
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