理論と方法
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2 巻, 1 号
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特集 数理モデルの可能性
  • ―2人チキン・ゲームによる定式化の可能性と限界―
    佐藤 嘉倫
    1987 年 2 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は媒介主体と被媒介主体の関係と相互作用に関する対抗的分業論を2人チキン・ゲームとして定式化することである。このための準備作業として、初めに次のことを明らかにする。すなわち媒介主体は(指導,支配)という戦略を取ることができ、被媒介主体は(異議申し立て,防衛)という戦略を取ることができる。そして媒介主体が指導戦略を選択し被媒介主体が異議申し立て戦略を選択する時、対抗的分業が成立する。
     しかし対抗的分業はつねに成立するわけではない。このことは(指導,異議申し立て)という状態が両プレイヤーによってつねに選択されるわけではないことを意味する。つまり対抗的分業ゲームは支配戦略のないゲームである。そこで本稿ではこの対抗的分業ゲームをチキン・ゲームとして定式化する。
     通常のゲームの規則では、対抗的分業は成立しない。そこで通常のゲームの規則とプレイヤーの行動基準を変更したS. J. Bramsの継起的ゲームを対抗的分業ゲームに適用する。そして東京ゴミ戦争、排ガス規制問題という事例の分析を通じて、対抗的分業が成立・失敗するメカニズムを明らかにする。
  • ―沈黙の螺旋状過程のフォーマライゼーション―
    石井 健一
    1987 年 2 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     Noelle-Neumannは、世論過程について「沈黙の螺旋状過程」として知られている仮説を提出している。この仮説は、各個人は世論の分布を考慮しながら、自分の意見を表明するかどうか決めるというものである。本論文では、この仮説に対して、M. Granovetterが集合行動のモデルとして提出した「閾値モデル」を基礎とし、これを世論過程に適合した形に変形してフォーマライゼーションを試みる。分析の主な目的は、世論の均衡分布についての吟味である。その結果、世論の潜在的分布の連続的な変化によって、顕在的な表明される意見分布がカタストロフィー的に変化することがあることを示す。また、対立する二つの意見集団について、それぞれの(1)順応性、(2)ハード・コアの存在の有無という点から世論の均衡点に及ぼす効果を分析する。
  • 山内 康英, 黒石 晋
    1987 年 2 巻 1 号 p. 29-44
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     社会科学の理論と分析の手法において、我々が用いてきたサイバネティックなモデルは、とりわけ社会構造の変動という問題について、不十分であった。構造変動は元来、必要十分条件や十分条件としては捉えられないという困難を抱えているのである。
     本稿は、一般システム理論(General Systems Theory)のひとつのモデルとして、シナジェティック・モデルを導入し、自己組織性の視座からこれをサイバネティック・モデルと対比する。このために、Haken(1978)にもとづき、シナジェティクスの概念を定式化する。これは、秩序構造の形成や維持というシステム現象を、システムの「場」(マクロ特性)に対するミクロ要素の隷従として捉える考え方であり、その数学的手法の中心となるのは、断熱近似による情報の縮約である。サイバネティクスは、構造の変動を「メタ化」によって構造内変動に置換える手法であり、あくまで変動を必要十分または十分条件としてとらえようとするため、論点先取に陥る。これに対しシナジェティクスは、「ゆらぎ」という偶然要素の導入によってこの問題を方法論的に回避することができる。
     社会システムには、こういうシナジェティックな現象が豊富に存在する。本稿では、価格と経済主体からなるシステム、社会的制度と社会構成員からなるシステム、流言とこの集合行動に参加する人々のシステム、等を概観している。
  • 斎藤 友里子
    1987 年 2 巻 1 号 p. 45-60
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では、他者との相互作用プロセスの中で、社会に対する不公平感がどのように生じるのかについて数理モデルを提示した。社会が判断対象となる場合、行為者はまず社会に存在する分配システムについてイメージを形成し、そのイメージの中で社会の公平さを評価する。社会システムについてのイメージ形成に関しては、既にFararo(1973)による階層構造のイメージ形成モデルがある。しかし分配システムのイメージ形成は扱われていない。公正判断に関しては、status value formulationを始めとする先行研究が存在する。だがこれらはミクロな公正判断を主な対象とし、input-outcomeの公正交換率が相互作用プロセスを通して形成されるという視点はない。そこでモデルではこれら先行研究を発展・結合させ、次のように仮定した。すなわち、分配システムについてのイメージは、input-outcomeシステム内の行為者の位置と、彼が最初に出会った他者とに依存して形成される。行為者は、このイメージをもとに公正交換率の決定と、評価対象の選択を行い分配システム全体に対する評価を行う。分配システム内のどのような行為者が大きな不公平を感じるかついていくつかのインプリケーションが得られた。
展望論文
  • Its Contributions to Modeling and Causal Inference
    Kazuo YAMAGUCHI
    1987 年 2 巻 1 号 p. 61-82
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
         This paper provides a didactic overview of event-history analysis in sociology. Specifically, it focuses on modeling and causal inference in the analysis of event histories. Various event-history models are described, and substantive and technical considerations for the choice of a particular model are discussed. The paper also presents a discussion on causal inference by addressing both substantive and technical issues in the causal analysis of event-history data.
研究ノート
  • 池 周一郎
    1987 年 2 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 1987/10/01
    公開日: 2009/03/01
    ジャーナル フリー
     本論では、社会的距離(social distance)というものの理論的な存在の可能性が、検討されている。階層間通婚のデータからは、数学的に厳密な意味での距離というものは導くことができないことが示されている。また階層間通婚傾向というものは、種々な要因のアグリゲーション・ゲインとしてみなすべきである。比喩としての社会的距離は、ミクロの社会的行為に基づいたメトリックな社会階層の理論のための基本的変数とするにはそれほど純粋な概念ではないと思われる。
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