理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
23 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集 階層移動研究の最前線
  • 渡邊 勉, 竹ノ下 弘久
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_1-2_3
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
  • 橋本 健二
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_5-2_22
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     「格差社会論」が注目を集めるなかで、階級研究・社会階層研究は、拡大する経済格差と「格差の固定化」など、社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず、社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある。このことは同時に、現代日本の階級研究・社会階層研究が、社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという固有の使命を十分に果たしえない状況にあるということを意味する。
     階級研究・社会階層研究の困難をもたらしたのは、その戦後日本における独特の展開過程だった。そこでは階級という概念が、政治主義的な主体、あるいは前近代的性格を残した世代的に固定的な集群とみなされ、対称的に社会階層は、連続的な序列、あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーにすぎないとみなされた。このため日本において階級と社会階層は、その有効性と現実性を大きく制約されてしまった。
     階級研究・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには、(1)Marxの両極分解論を明確に否定して、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級の4階級図式、あるいはそのバリエーションを採用するとともに、(2)階級所属が産業構造、労働市場、家族、国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして社会階層を定義することが有効である。本論文ではこうしたアプローチを「階級―社会階層研究」と呼び、1965年SSM調査データ再コードデータの分析によってその有効性を明らかにする。
  • 三輪 哲
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_23-2_40
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     本稿では、キャリアの軌跡をとらえる成長曲線アプローチによって、世代間移動の趨勢に関する再分析を行う。男性の40歳までの早期キャリアがどのような軌跡をたどるのか記述することと、個人のキャリアと出身階層との連関で表現される移動機会格差が出生コーホート間でどのように変わってきたのか精査することが目的である。
     社会階層と社会移動全国調査(SSM)データのうち、1975年から2005年までの4回分のデータをマージして使用した。個人内のキャリア軌跡をとらえるためのパーソンイヤーデータと、個人レベルのデータは、階層的な入れ子構造をなしている。そうした階層的構造データを、マルチレベルロジスティック回帰分析によって統計解析した。
     その結果、ホワイトカラー上層の再生産傾向は安定的であったことや、自営業層において一貫して閉鎖化が進んできたことが明らかとなった。社会移動全体の趨勢だけでなく、局所における移動機会の趨勢についても十分に注意を払わなければならない。
  • ―生存分析によるアプローチ―
    石田 浩
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_41-2_63
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     本研究は、世代間の階層継承の趨勢を生存分析の手法を用いて分析した。上層ホワイトカラー階層と非熟練ブルーカラー階層の再生産(世代間の継承)に焦点を当て、従来の分析のように調査年を趨勢の単位とするのではなく、初職入職年度、職歴の発生年度によって4つの時代を区分し、時代的なコンテクストをより明確にした分析を行った。上層ホワイト階層と非熟練ブルー階層への入職の仕方に関して、学校教育修了または中退後に初職からすぐに入職する場合と、職業キャリアの中で昇進・転職・起業などを経て入職する場合の2つを区別し、別々の分析を行った。
     初職での上層ホワイト、非熟練ブルー階層への入職は、父と同じ階層であることが強く影響していることが分析から明らかになった。しかし、父階層の初職への効果は、4つの時代で有意に異なることはなかった。初職の時点ではなくて、職業キャリアを通して上層ホワイト、非熟練ブルー階層に入職した場合を取り上げると異なる結論が導きだされる。40歳時点までの職業キャリアを分析すると、上層ホワイト階層への入職と非熟練ブルー階層への入職の双方に関して、同じ出身階層であることの強い継承効果があることがわかる。さらに、父階層の効果は、1996-2005年にかけて上昇した可能性がある。すなわち、上層ホワイト階層と非熟練ブルー階層の閉鎖性(継承の度合い)が近年(1996-2005年度)高まっていることを示唆している。
  • ―職歴データによる推定―
    鹿又 伸夫
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_65-2_83
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     日本における世代間移動の出身―到達機会格差について、独自の階層的地位として扱われてこなかった非正規雇用と無職を含む階層分類をもちいて、女性に焦点をあてながら性別比較をおこなった。この性別比較では、第1に出身―到達格差に男女間の明瞭な相違があるのか、第2に、多くの既存研究で時代的変化がないとされてきた男性と同様に、女性の機会格差にも時代的変化がないといえるかを検討課題とした。仮説的な議論として、前者については女性の出身―到達格差が男性より小さいことが予想されたが、後者の変化については格差の安定的持続、拡大、減少の3通りを予測することができた。2005年SSM調査の職歴データを活用して分析した結果、女性の出身―到達格差は、とくに38歳以降そして最大格差で、男性よりも小さく予測に合致した。また非移動については、男性では時代的変化がなかったが、女性では暦年にともなう変化が確認された。しかしその暦年変化は、階層によって安定的持続、増大および減少の趨勢そして増減の曲線的変化などがみられ、3つの変化予測のいずれとも一致しなかった。
  • Resource, Reward and Labor Market Structure
    Hirohisa TAKENOSHITA
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_85-2_104
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
         This research aims to make clear the determinants of job shift patterns in Japan. Previous studies have highlighted the importance of both individual level of resource and reward, and labor market structures which affect job mobility patterns. However, previous research on job mobility in Japan did not incorporate individual level of attributes such as resource and reward into systematic theoretical points of view while the impact of labor market structure on job mobility drew distinctive attention in Japan. In addition, many previous studies did not take into account the context of job shift because of a lack of available source of information in survey data. The present research pays attention to the divergence between voluntary and involuntary job mobility. The result shows that firm-specific skills and occupational reward made it less likely for employees to quit a job. It corresponds to the model of reward and resource. However, there is no evidence that general human capital which is transferable across firm would increase the likelihood of quitting a job as is seen in the U.S labor market. In addition, the way in which labor market structure influences job shift patterns is almost identical to the model of segmented labor market. In contrast, the way in which macroeconomic conditions for labor market affects rates of job shift in Japan is deviant from the hypothesis for the U.S labor market. This paper highlights the differences between voluntary and involuntary job mobility in Japan. Compared to the previous studies in the U.S, the job mobility patterns in Japan appear to be roughly similar to the ones for the United States whereas it seems that the institutional arrangements specific to Japanese labor market could make the job mobility patterns substantially different from those for the other industrialized countries. Cross-national comparison of intragenerational mobility which has lacked empirical studies would be further needed so that we can make clear the underpinnings of job mobility structure and institutional arrangements of labor market which diverge job mobility across country.
原著論文
  • ―遺伝か文化伝達か―
    敷島 千鶴, 安藤 寿康, 山形 伸二, 尾崎 幸謙, 高橋 雄介, 野中 浩一
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_105-2_126
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     観測された形質の分散を、「遺伝」「共有環境」「非共有環境」という3つの潜在変数の寄与に分割して推定させる行動遺伝学の方法論を用いて、権威主義的伝統主義の形成に関わる要因について検討した。4111名(12~26歳の男性双生児1279名、女性双生児1889名、および双生児の父親83名、母親860名)から権威主義的伝統主義尺度の回答を得た。一卵性双生児912組、二卵性双生児630組を対象とした双生児モデルによる分析は、権威主義的伝統主義の分散を遺伝33%、非共有環境67%で説明し、双生児親子モデルによる分析においても、結果は同等であった。これより、権威主義的伝統主義の家族内伝達を媒介するのは専ら遺伝であり、文化伝達ではないことが示された。権威主義の形成を親の養育、あるいはその家の社会背景によって説明するこれまでの理論には異議が唱えられる。遺伝を説明変数に含めた、より精緻な伝達モデルの有用性が提起される。
社会調査とデータ管理の諸方法
  • 轟 亮
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_127
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
  • ―JGSSにおける訪問記録の分析から―
    保田 時男, 宍戸 邦章, 岩井 紀子
    2008 年 23 巻 2 号 p. 2_129-2_136
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2009/01/05
    ジャーナル フリー
     日本の社会調査の回収率は2005年以降に急落している。大規模調査の回収率を短期的に改善するためには、調査員の行動の適切な把握が不可欠である。本稿では、そのための手段として訪問記録の活用を提案する。すべての訪問について、その日時と、訪問時に接触できた人を記録しておけば、調査員の行動とその結果を概括することができる。JGSS-2005~2006における訪問記録の分析結果は、その有効性を如実に表している。訪問記録から、JGSS-2006における回収率の改善は、調査対象者の協力的な反応と調査員の粘り強い訪問によってもたらされたことがわかった。また、若年女性の回収率が改善していない原因が、集合住宅の居住者の増加による接触成功率の低下にあることや、調査対象者の家族については協力的態度が喚起されていないことなどが明らかになった。大規模調査の回収率を改善するには、このような事例研究の積み重ねが重要である。
計量社会学ワンステップアップ講座
書評
feedback
Top