理論と方法
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24 巻, 1 号
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特集 社会階層論の理論的展開
  • 数土 直紀
    2009 年 24 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
  • ―階層の規範理論をめざして―
    盛山 和夫
    2009 年 24 巻 1 号 p. 3-19
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     社会学の他の領域の場合と同じように、階層研究もまた規範的問題を主題化することを避けてきた。それは、今日の格差問題の華々しさの中でもそうである。格差の拡大や存在を指摘する研究は、暗黙のうちに格差を批判しているのだが、その場合、格差が望ましくないことは自明なものと前提されている。また、かつての機能主義的成層理論は、成層の存在を機能主義的に説明することを通じて、実質的に成層を正当化した。しかしどちらも、規範的問題を主題化しないという点で不適切である。他方、階層の規範理論は現代リベラリズムにおいて盛んに展開されているが、ここでは責任―平等主義に代表されるように、「生産局面の等閑視」と「帰結への無配慮」がみられる。これも含めて、望ましい分配ルールに関する議論は、分配されるべき財の存在を所与とする「マナ型原理」に陥っている。本稿は、階層の規範理論をめざす試みの一環として、生産局面と帰結とを考慮した望ましい分配ルールとは何かを考察する。すなわち、いかなる分配ルールが望ましいかは、ルールの内在的性質によってではなく、ある共同生産関数が与えられている社会にあるルールが設けられたとき、人々の生産活動を通じていかなる分配状態が実現するかという問いとして定立される。そして、この理論枠組みのもとで、さらに人々の合理的選択を仮定したとき、分配ルールの望ましさが、ナッシュ均衡として実現する分配状態の望ましさに帰着することを示す。
  • 瀧川 裕貴
    2009 年 24 巻 1 号 p. 21-39
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は互恵性基底的平等の規範理論を提案することである。互恵性基底的平等の理論は、現在の主流理論たる平等の権利モデルに対する代替案となることをめざしている。互恵性をゲーム理論の形式を用いて定式化した後に、権利モデルとの対比において互恵性基底的理論の特質として次の3点を抽出する。それは、(1)相互行為的、(2)他者関与的、(3)対他責任、の3つである。その上で、互恵性と平等との関係について考察する。中心的に問われるのは、互恵性が自然的能力の不平等を再生産するという理解は正しいかどうかということ、互恵性原理には分配的平等を支持する側面が存在するのかどうかということ、である。前者の問いには否定的に答えられることを、後者に関しては価値としての互恵性という考えを用いて肯定的に答えられることを論じる。このようにして互恵性から出発して平等の理論を構築する方向性が示される。
  • 数土 直紀
    2009 年 24 巻 1 号 p. 41-56
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     階層帰属意識は、日本の社会階層研究において、とりわけ理論的に探求されることの多かった主題である。その代表的な事例として、ファラロ=高坂モデルを指摘することができるだろう。しかし、ファラロ=高坂モデルはある一時点での階層帰属意識分布を問題にしており、構造変動にともなって、それがどのように変化するのかといったことは議論していない。そこで本稿では、この欠を補うべく、階層帰属意識分布の変化の背後にあるメカニズムを理論的に明らかにすることを試みた。その結果、“親の職業的地位を継承している個人は、自身の職業的地位が指示する階層的地位により強くコミットしている”ことを仮定することで、いっけんすると対応関係を欠いていたかのように観察された“職業構造の変動と階層帰属意識の変化”の関係を合理的に説明できることが明らかにされた。そして同時に、そのようなメカニズムの存在を、SSM調査データによって実証的に確認できることも明らかにした。
  • ―Breen and Goldthorpeモデルの一般化―
    浜田 宏
    2009 年 24 巻 1 号 p. 57-75
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     教育達成の不平等を説明するBreen and Goldthorpeの相対リスク回避モデルを一般化して、上層出身者の進学率が中層出身者の進学率を上回る条件を示す。上・中層出身者の進学率をパラメータの明示的な関数として示すことで、教育達成格差をオッズ比として表し、解析的に分析する。また高校進学後に大学進学の分岐が続く場合のように、学歴の推移が連続して生じる状況をモデル化して、理論的な進学率を導出する方法を定式化する。拡張した数理モデルを用いて、教育水準が高くなるほど出身階層の影響が弱くなる階層効果逓減現象が、どのような条件で生じるのかを示す。オッズ比の低下は中層出身者が上層到達を選好する場合は高等教育段階での進学率が上層出身者の進学率に追いつくことによってもたらされる。無差別のときは中層進学率が定数になる一方で、教育水準の上昇により進学後の主観的成功確率の分布がマイナス方向にシフトして、上層出身者のみ進学率が減少することによってオッズ比が減少する、という予想が得られた。
原著論文
  • ―職務内容を反映した職業指標の提案―
    長松 奈美江, 阪口 祐介, 太郎丸 博
    2009 年 24 巻 1 号 p. 77-93
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     職業は、私たちの社会生活に大きな影響を及ぼす要因の一つである。これまで日本では、職業指標として職業威信スコアやSSM職業8分類が用いられてきた。しかし、職務内容を反映した職業指標はあまり利用されてこなかった。本稿では、仕事の複雑性に注目し、そのスコアを構成した。
     Dictionary of Occupational Titles(DOT)第4版と、「情報化社会に関する全国調査(JIS調査)」のデータを用いて、合併コード、混合コード、DOTコードという三つの方法によりスコアを構成した。さらに、構成されたスコアを用いて、仕事の複雑性が、職業と関連が深い意識やライフチャンス変数に効果をもっているかを検討した。重回帰分析の結果、複雑性スコアは、個人収入や階層帰属意識、職業による不公平感に対して、職業威信スコアに還元できない効果をもっていることがわかった。この分析結果は、仕事の複雑性スコアの妥当性と有効性を示していると考えられる。
  • Takashi SHIOMURA
    2009 年 24 巻 1 号 p. 95-108
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
         The paper investigates the possibility of cultural polarization in increasingly nonlocal societies, assuming that 1) agents have a large range of interaction, and 2) the similarity between agents is not crucial for an interaction to occur. Plurality information feedback, a filtering effect, and multi-copy of features are identified as candidates for inducing polarization. We show that rapid segregation of minorities by any of these three candidate effects at an early stage makes it possible to observe polarization. In a society where agents have a large range of interaction, polarization is observed as diasporas, and a few subcultures can survive. If the importance of the similarity for interactions decreases, a society can reach equilibrium faster and less cultural heterogeneity remains in it. Excessively large effects of the mass media, in some cases, disturb a society in the sense that it takes longer to settle down in a stable state, but greatly contribute to convergence in other cases. A formal proof showing that reaching equilibrium is equivalent to having a similarity of either zero or one with any accessible agent is provided. Here, we investigate equilibrium states, not states arising at a predetermined large step in computer simulations.
研究ノート
  • ―温泉地の調査データを用いた実証分析―
    藤山 英樹
    2009 年 24 巻 1 号 p. 109-119
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     本稿では、温泉地域の中心的な組織である旅館に注目し、「地域の異質性および規模」と「地域公共活動」との関係について実証分析をした。「地域公共活動」については、より具体的には、「自治活動」、「旅館組合活動」および「祭り関連の活動」を取り上げた。
     調査地域は、長野・山形・群馬・新潟の4県であり、対象は10軒以上の宿泊施設で構成されている旅館組合に加盟している全ての宿泊施設である。有効回答率は51.4%であった。
     推定結果から、第1に地域の異質性は自治活動に負の相関があり、第2に地域の規模は組合活動に負の相関があることが示された。解釈は以下の通りである:自治活動といった目的がより漠然とした活動においては、地域の異質性に起因するコミュニケーションコストの高さが大きな影響を与える。他方、組合活動のような目的が決まっている活動では、コミュニケーションコストの効果は小さくなり、公共財としての性質が強くなり、より規模の大きい組織でより多くのフリーライドが生まれる。
社会調査とデータ管理の諸方法 (2)
  • ―札幌学院大学SORDが取り組んだ「夕張調査資料集成」作成経験からの提言―
    中澤 秀雄, 西城戸 誠, 大國 充彦, 新國 三千代, 祐成 保志, 新藤 慶, 小内 純子, 高橋 徹
    2009 年 24 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2010/01/08
    ジャーナル フリー
     本稿ではSORDデータアーカイブの活動経験を元に、社会調査データの管理などアーカイブズ学的側面について提言を行った。第一に社会調査データの整理保存作業は調査主体自身が行うべきで、そのための標準的ルールが求められている。第二に、調査時点で実施者が正確な記録を残さないと、当時の調査の認識枠組みでは見えてこなかった対象社会の一側面を見出すという質的調査の二次分析が困難になること。第三に、当時の調査集団の仮説形成過程の追体験を可能にするために、調査の途中経過資料や知識の伝達・創出が行われる研究者集団の組織や管理方法、対象社会の構造的要因や歴史的背景などについての資料の収集が重要であり、そのためには調査のアーカイブズ学の確立が必須である。そしてこれまで歴史学者が中心だった博物館学との連携をはかる必要があるといえるだろう。
計量社会学ワンステップアップ講座 (2)
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