理論と方法
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26 巻, 2 号
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特集 社会学における数理社会学の有用性
  • 浜田 宏
    2011 年 26 巻 2 号 p. 239-242
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
  • Yoshimichi SATO
    2011 年 26 巻 2 号 p. 243-252
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
         I propose that mathematical sociology should seek to formalize and explain the differentiation of roles in order for it to prevail in sociology. Mathematical sociology has established a niche within its parent discipline by demonstrating its explanatory power in such areas as the study of cooperation, trust, and social networks. However, it has not seriously examined the emergence, maintenance, and collapse of social order, a core sociological concept. Because social order is an abstract concept, I focus on social structure in this paper, role structure in particular, and propose an agent-based modeling framework to explain the differentiation of roles. If mathematical sociologists successfully develop models along these lines, they will succeed in explaining social order, and, as a result, mathematical sociology will proliferate in the field.
  • 七條 達弘
    2011 年 26 巻 2 号 p. 253-270
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     数理社会学における数理モデルと経済学におけるゲーム理論を対比しながら,社会学としての数理モデルについて論じる.意識変数を取り扱う等,主観的領域に一歩踏み込むのが社会学における数理モデルの特徴であると論じ,そのようなモデルは,たとえ,ゲーム理論の均衡分析で人々の行動を記述できる場合でも有意義であると論じる.さらに,数理社会学において土台となる基本原則を持つことを提案し,具体的に,三つの基本原則を使い,いくつかの数理モデルが,基本原則の派生型と解釈できる事を示す.
  • 盛山 和夫
    2011 年 26 巻 2 号 p. 271-286
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     数理社会学は,1950~60年代において理論社会学の主流派だったパーソンズ理論や機能主義に代わって,社会学により厳密で経験的な裏付けのある理論形成の文化が必要だという考えを基盤にして始まった.そのことは,コールマンやホワイトなどの初期の仕事からうかがい知ることができる.しかし,そうした数理社会学の目標は,必ずしも達成されていない.その一つの理由は,残念ながら,経済と違って,社会学が対象とする社会的世界は意味世界であって,本来的な数理性が保証されていないからである.他方また,数理社会学者自身が数理社会学の役割を誤解してきたという面もある.少なくない数理社会学者が,数理社会学は経験的一般化やフォーマライゼーションを通じて社会学理論の構築に貢献すると考えている.また,一部の人は,数理モデルの帰結への何らかの解釈を通じて理論が導かれると思っている.これらはいずれも,数理モデルの構築が本来的に創造的な営みであって,モデル構築それ自体が新しい理論を生み出す試みだと点に気づいていない.本稿は,数理社会学の基本的課題は,現象の「構造的エッセンス」に対する数理モデルの構築を通じて,現象の新しい理解の展開に寄与することだと主張し,そのことを,いくつかの数理モデルを紹介しまた説明することで,明らかにしようとするものである.
原著論文
  • 小林 大祐
    2011 年 26 巻 2 号 p. 287-302
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     フリーターと社会階層との関連を指摘する研究は数多いが,量的な研究においてはその関連性についての知見は必ずしも一致していない.この理由のひとつとして,フリーターには幾つかのタイプがあり,そのタイプごとに出身階層に幅があるという可能性を考えることができる.もしそうであれば,なんらかの基準でフリーターを分類することで,フリーターのサブ・カテゴリーと出身階層の関連がより明確になるかもしれない.そこで,フリーターをしている「理由」に着目し、3分類したフリーターに対して出身階層が効果を持っているのかを検討した。その結果,本人の教育達成をコントロールしても「やむを得ず型フリーター」へのなりやすさには「15歳時財産得点」がマイナスの効果を持っていることが示された.この結果は,意に反してフリーターをせざるを得ない層において,経済的困難が学力の低下や学校への不適応につながったり,就職先未決定のままでの大学卒業につながったりすることで,職業への移行において不利になることを示唆するものである.また,フリーターとして一括りにされてきた若年パート・アルバイト層が,階層的出自について幅を持つものであり,従来の量的研究ではそれを一括りに論じていたため,出身階層の効果が見えにくくなっていた可能性を示すものである.
  • 比較準拠集団を組み入れたFKモデル
    前田 豊
    2011 年 26 巻 2 号 p. 303-320
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     これまでの階層帰属意識研究には,帰納的アプローチと演繹的アプローチの2つのアプローチが存在していた.本稿では,この2つのアプローチ間の接合を念頭におきつつ,帰納的アプローチで繰り返し議論されてきた比較準拠集団の概念を,帰属意識の数理モデルであるFKモデルに組み入れたモデルを構築し,比較準拠集団による帰属意識への論理的に妥当する効果を導出すること,そしてFKモデルのミクロレベルの適合度を改善することを目的に議論を行った.結果として,前者の目的に対しては「より類似性を確認できた他者を比較準拠集団として選定すれば,帰属意識に対する任意の客観的階層上の地位の規定力は上昇する」という効果が論理的に妥当するものであることを証明し得たものの,後者の目的に関しては劇的な改善は確認できなかった.今後、これまでの計量的研究で示唆されてきた時間的な変化による効果や満足度の影響を射程に収めることで,一層の階層意識の実態に迫れる数理モデルが期待できる.
  • エゴセントリック・ネットワークデータに対するマルチレベル分析の適用
    赤枝 尚樹
    2011 年 26 巻 2 号 p. 321-338
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     これまでの都市社会学の議論において,C. S. Fischerは,都市が似たもの同士で結びつく傾向―同類結合―を促進するとの議論を行なっている.なぜならば,都市では多様な人々と結びつく機会が豊富であり,選択性が高いため,人々は自分と似た人を選んで結びつくと考えられるからである.そして,そのことが都市での多様な下位文化を維持する原動力になるとされている.このように同類結合の議論はFischer下位文化論の中心的なテーゼといえるが,日本では,都市が同類結合に及ぼす影響について,これまで十分な検討は行われてこなかった.そこで本稿では,「年齢」「学歴」「職業」「趣味・娯楽」の四つの側面における同類結合について,エゴセントリック・ネットワークデータにマルチレベル分析を適用し,都市効果の検討を行った.その結果,日本において,(1)ライフサイクル段階として「年齢」や,階層としての「学歴」と「職業」の同類結合に関しては,都市効果がみられないこと,(2)「趣味・娯楽の共有」に基づく同類結合は,都市によって促進されること,の二点が明らかになった.
  • センの規範理論の明確化のための一論考
    玉手 慎太郎
    2011 年 26 巻 2 号 p. 339-354
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿はアマルティア・センが提唱した「基礎的ケイパビリティの平等」について論じるものである.センの規範理論はしばしばケイパビリティの平等と混同されており,われわれの間で明確な理解がなされているとは言えない.また「基礎的ケイパビリティの平等」は,厳密に考察するならば,自由をどの程度まで保障するのかについて明確でないという問題を抱えていることがわかる.本稿は,自由を二重の重要性を持つものとして捉えるセン自身の考え方に即して「基礎的ケイパビリティの平等」を定式化し,この理論をケイパビリティの平等と明確に区別して示すとともに,保障範囲に関して明示的に理論に取り入れる.保障範囲の問題はいま広く議論されている責任の概念につながるものであり,この点について,本稿の定式化の含意として,責任平等主義に対するエリザベス・アンダーソンからの批判に応答が可能となることを示したい.
  • 平尾 一朗, 太郎丸 博
    2011 年 26 巻 2 号 p. 355-370
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     非正規雇用の世代間移動の特徴を探索的に分析した.階層カテゴリは,SSM総合職業分類をもとにし,子職にはさらに「非正規専門」「非正規ノンマニュアル」「非正規マニュアル」の3つのカテゴリを付け加え,父職には「無職/非正規」「父不在」の2カテゴリを付け加えた.男女別に父職×子職×年齢の3重クロス集計表を作り,それぞれにRC(II)+準独立モデルをあてはめた.その結果,子職の3つの非正規は,移動レジーム内では,それぞれ異なる位置にあり,非正規専門は正規の専門に近く,ノンマニュアルとマニュアルについても,正規と非正規が近接していることが分かった.女性に関しては,3つの非正規は近接しており,中間近くに位置していた.父職に関しては,「無職/非正規」がもっとも到達階層が低く,「父不在」はブルーカラーに近接していた.この結果から,男性の場合特に非正規雇用内部での多様性が大きいこと,父が無職や非正規であると,到達階層が低くなりやすいことがわかった.
  • Yitzhakiの個人相対的剥奪指数の応用
    石田 淳
    2011 年 26 巻 2 号 p. 371-388
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,階層意識生成プロセスにおける他者比較メカニズムを,理論的に統一的な視座から計量モデルに導入することを目指し,Yitzhaki(1979)の個人相対的剥奪指数,そしてその関連指数としての相対的満足指数,平均からの乖離を示す総合評価指数を導入し,2005年SSM調査データを用いて,収入ならびに生活全般の満足感を説明する分析を行った.分析の結果以下のことが明らかになった.収入満足については,男性において個人収入の他者比較による剥奪度が,収入の多寡そのものとは異なる独自の規定力を持つことが分かった.特に年齢階層を準拠集団とした剥奪度がもっとも説明力を高めた.一方、女性については男性とは異なる評価メカニズムが示唆された.生活満足については,世帯単位の収入比較による剥奪度が大きな負の効果をもち,絶対額よりも強く満足感を規定していることが明らかになった.特に,回答者の性別や年齢階層といったデモグラフィックな準拠基準,そして市郡規模という地理的な準拠基準が,職業階層や教育レベルという社会経済的地位基準と比べて相対的に大きな説明力をもっていることが分かった.
  • 分布の差異を予測する
    石黒 格
    2011 年 26 巻 2 号 p. 389-404
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     Fischerによる下位文化理論や山岸による信頼の解き放ち理論,さらには社会関係資本論など,社会科学に影響を持つ多くの理論において,知人数は重要な要素になっている.しかし,交換関係や高頻度の接触があるなど,比較的関係の強い他者の範囲を超えて,その総数と相関する要因が探索された事例はほとんどない.本研究は,電話帳法を用いて測定された知人数を目的変数とし,分位点回帰分析を用いてメディアンと上位,下位のパーセンタイルに対する説明変数の効果を検討した.分析の結果,知人数のメディアンに対する年齢,教育年数,世帯年収,携帯利用,一般的信頼の正の効果が確認され,おおよそ,先行研究の結果が再現された.さらに,q10(10パーセントタイル点,以下,同じ)からq90まで,10パーセントタイル刻みで分位点を予測したところ,年齢と教育年数が高いときに,特にq10,q50よりもq90が大きく増加すること,居住地人口と対人不安が高いときには逆に減少することが明らかになった.すなわち,知人数が極端に大きい,ネットワークのハブと考えられる回答者は,高齢,高学歴で対人不安が低く,都市度が低い地域に存在する確率が高いことが示された.
研究ノート
  • 社会分析への適用可能性
    芹沢 浩, 雨宮 隆, 伊藤 公紀
    2011 年 26 巻 2 号 p. 405-420
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/01
    ジャーナル フリー
     エントロピーに関しては,その増減を支配する2つの重要な法則がある.外界から隔絶された閉鎖系で成り立つ熱力学の第2法則と物質やエネルギーが絶えず出入りする開放系で成り立つエントロピー生成率最大化(MEP)の原理である.前者はエントロピー増大の法則として以前よりよく知られているが,後者は近年の非平衡熱力学,複雑系研究の成果として得られた新たな知見で,社会科学の研究者の間で,その存在を知っている人はそれほど多くない.エントロピーについて深く理解するためには双方を熟知している必要があり,前者だけではエントロピーの破壊的な側面は理解できても,創造的な側面は見落とされてしまう.本論文はあまり知られていないMEP原理に焦点を当て,それを社会科学に移植する試みである.簡単な人間社会モデルによってMEP原理の基本的な考え方を説明した後に,社会現象においてもこれが機能すると仮定し,地球上に存在する社会形態の多様性とMEP原理の関連を考察する.
数理社会学ワンステップアップ講座(3)
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