理論と方法
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28 巻, 1 号
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学会賞受賞講演
  • 赤枝 尚樹
    2013 年 28 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     都市社会学ではこれまで多くの都市理論が展開されており,その中でも,C.S. Fischerの下位文化理論は現在最も有力な都市理論として位置づけられている.そこで本稿では,受賞論文を参照しながら,下位文化理論のもつ意義と可能性について考えてみたい.下位文化理論の意義と可能性については,(1)様々な国や時代への適用可能性の広さ,(2)都市社会学の議論形式を発展・精緻化する可能性,の2点が挙げられる.よって本稿では,それに対応して,第一に,下位文化理論の日本への適用可能性に関するより総合的な検討,第二に,下位文化理論の今後の展開可能性について議論する.そしてそのために計量研究の側から考えていくべきこととしては,社会調査やデータ分析の過程において,理論の再現可能性を高めていくことが挙げられる.
シンポジウム 社会階層と健康
  • 神林 博史
    2013 年 28 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
  • 疫学からのアプローチ
    近藤 尚己
    2013 年 28 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     疫学は,集団の健康状態を把握することに加え,健康の決定要因を探求することも重要なテーマとしている.近年,社会疫学により,社会階層や所得格差といった健康の社会的決定要因についての研究が進められ,階層間の健康格差が存在することは今や「確固たる事実」として認識され,様々な保健政策に応用されている.しかし,社会と健康との関係についての研究のアプローチについては,疫学とその他の社会科学とで異なる場合がよくあり,しばしば論争が行われてきた.疫学は疾病や死亡といった不健康の発生を予防する公衆衛生活動のツールであるという実学としての側面が強いことがその理由の一つとだと思われる.また,疾病の発生に関する生物学的・社会的なメカニズムが非常に複雑であることもその理由の一つであろう.社会の諸事象と健康との関連を扱う研究は,疫学をはじめとした医学系の研究者と社会科学者とによる共同作業で進めるべきであろう.
  • 浦川 邦夫
    2013 年 28 巻 1 号 p. 35-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,経済学の研究分野における「健康研究」の分析事例について近年の研究を中心にサーベイを行い,それらの学術的意義を評価・検討した.これまでの経済学の健康に対するアプローチの代表例は,健康を人的資本の一部とみなし,労働者や企業の生産性しいては一国の成長を促す重要なファクターとして捉えてその役割を評価するものであった.特に,ゲイリー・ベッカーやマイケル・グロスマンが提唱,発展させた人的資本理論は,「国民の健康水準と経済成長」の関係や「労働者の不健康な行動(飲酒・喫煙など)と彼ら(彼女ら)の賃金水準」の関係など,「健康と生産性の関係」についての実証的考察をより積極的に促してきたと言える.また,近年は,所得,学歴,職業などの社会経済変数に加えて,地域要因や企業要因と健康との関連を分析する事例が多く見られるようになってきており,健康の決定要因に関する研究は多様性を増している.また,医療経済学の分野では,「費用便益分析」や「費用効用分析」の手法を用いることにより,健康を「その達成に要する負担」と「それを享受することで得られる便益」の双方の観点から経済評価する試みが進められている.健康研究の発展に向けて経済学の果たす役割は大きいが,近年の「健康研究」は,高度化・専門化した分析課題に対応するため,医学,疫学,社会学,心理学など様々な学問分野の研究者との間での共同研究が積極的に進められている.今後も,健康の決定要因や健康の諸効果の多面的・本質的な理解を進める上で,多様な学問分野の融合が進むことが期待される.
  • 杉澤 秀博
    2013 年 28 巻 1 号 p. 53-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     社会関係が健康に与える効果を示すモデルとして,直接効果モデルとストレス緩衝効果モデルの2種類がある.この2種類のモデルは,健康の階層間格差の研究における主要な2つの課題である「階層と健康を媒介する要因」と「階層の健康影響を緩衝する要因」の解明に貢献できる.本稿では,健康の階層間格差の研究における社会関係の効果を解明する2つの分析モデルの活用状況と課題を整理したい.具体的には,第1に,健康の社会的決定要因としての社会経済階層と社会関係について,それぞれの研究の展開と両研究の接点を提示する.第2に,社会経済階層と社会関係の接点に位置する研究の到達点を整理する.以上を踏まえ,第3に,社会経済階層と社会関係との接点の研究を発展させるために必要な課題を提案する.
原著論文
  • 従業上の地位変化がもたらす所得変化を事例として
    有田 伸
    2013 年 28 巻 1 号 p. 69-86
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,パネルデータを分析するために広く用いられている固定効果モデルなどの手法が置いている諸仮定を確認した上で,独立変数の変化(または非変化)の内容を詳細に区別しうる代替的なモデルを築くことで,それらの仮定を緩めた分析の可能性を探る.カテゴリカルな変数を独立変数とする固定効果モデルを事例として,変数の「変化」に焦点を当てて考えれば,一般的な固定効果モデルは変化の向き・経路と非変化時の状態の違いを区別しておらず,これらの違いが独自の効果を生み出す可能性は考慮されない.しかしこのような想定は現実的には満たされない可能性もあることから,本稿では,「(独立変数の)変化が(従属変数の)変化をもたらす」という立場に立ちつつ,一階差分モデルを利用してこれらの仮定を緩め,変化の向き・経路と非変化時の状態の違いがもたらす独自の効果を捕捉することを試みる.さらにこの手法を,従業上の地位が個人所得に及ぼす影響の分析にあてはめると共に,現実的にはどのような場合に従来のモデルの仮定を緩める必要が生じるのか,事象の発生メカニズムと関連付けた考察を行い,この手法の意義と適用時の留意点を検討する.
  • 松岡 亮二
    2013 年 28 巻 1 号 p. 87-106
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
         A number of tracking studies have revealed that inequities in schools' structures and practices perpetuate societal inequities by negatively affecting the quality of education experienced by certain groups of students. However, how the structure of the school system influences students' behavior has not been well studied. To investigate whether the tracking structure shapes high school students' self-learning hours, a multilevel ordinal regression analysis was carried out with a nationally representative Japanese dataset from the Programme for International Student Assessment (PISA) 2006 conducted by the Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD). Findings of this study show that one's tracking location represented as school rank, school socioeconomic composition and curriculum tracking (general/vocational education) shape how long students study mathematics by themselves. Also, all student-level variables including students' socioeconomic status and academic disposition affect their practice of self-studying, while other variables are held constant. These results highlight the importance of understanding how one's effort is structured not only by students' background but also by the school system; how the formal education is organized facilitates socioeconomically advantaged students to study longer by themselves outside of any instructional lessons, intensifying the inequality of effort.
  • 繰り返しN人囚人のジレンマの均衡精緻化
    吉良 洋輔
    2013 年 28 巻 1 号 p. 107-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     社会的ジレンマは,プレイヤー同士でコミュニケーションを行うことによって解決されやすくなることが知られている.しかし,このメカニズムを数理モデルによって説明することは,未だ行われていない.そこで本稿では,無限繰り返しN人囚人のジレンマ(INPD)ゲームの均衡精緻化を行う.サブゲーム完全ナッシュ均衡では,1人のプレイヤーが戦略を変更する逸脱しか考慮されていない.そのために,INPDにはパレート劣位な均衡が多数存在する.そこで本稿では,プレイヤー同士がコミュニケーションを行うことによって,複数人が同時に戦略変更を行う「結託による逸脱」が可能であることを仮定した.その結果,大多数のプレイヤーが非協力を行うナッシュ均衡は不安定となる一方,ある条件を満たせば全員が協力を行う均衡は頑健であり続けることが分かった.得られた知見は次の2点である.1点目は,社会的ジレンマを解決する上で,長期的関係とコミュニケーションは異なる機能を持つことである.2点目は,より自由なコミュニケーションと行動の変更が認められている状況の方が,社会的ジレンマが解決されやすい場合もある,ということである.
  • Usic KIM
    2013 年 28 巻 1 号 p. 125-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
         This article examines theoretically how production markets vary with their social bases; i.e., institutional, relational, and cultural contexts that construct and surround the markets. Different social contexts engender various behavioral types of market actors. Market actors display global equalization behavior as well as local optimization behavior. Producers equalize globally when they watch all other producers and hold an identical revenue to the cost ratio. They optimize locally when they solely optimize production volume on their own cost function. Consumers equalize globally when they demand all producers to provide an identical satisfaction to the expenditure ratio. They optimize locally when they demand each producer to optimize locally for consumers' satisfaction given the expenditure. Based on the diverse behavior types of market actors, four different market types are identified. This article shows that market performances are different in diverse market types. The finding shows that institutional, relational, and cultural contexts shape and construct markets as social bases.
数理社会学会ワンステップアップ講座(6)
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