理論と方法
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28 巻, 2 号
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特集 実験社会科学への招待
  • 七條 達弘
    2013 年 28 巻 2 号 p. 163-164
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
  • 七條 達弘, 秋吉 美都, 藤山 英樹, 田中 敦, 福田 恵美子, 友知 政樹, 小林 盾, 籠谷 和弘, 金井 雅之
    2013 年 28 巻 2 号 p. 165-186
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は,利用者が増えれば増える程,その価値が高まるサービスである.当初は,利用者が少ないために,SNSが活性化するのが困難である.そこで,ポイント制度によって活性化させる仕組みを考案し,その有効性を数理モデルで示した.さらに,独自のSNS上で実験を行った.このポイント制度では,個々人の活動に応じて個々人にポイントを付与し,集団的な成果に応じて,そのポイントを現金にかえる換金レートを変化させるという特徴を持っている.実験データをパネルデータに加工して分析した結果,ポイント制度が,ポイント終了後にも残る効果をもたらした事が分かった.
  • Mobility Accelerates the Cycle, but does not Change Cooperation
    小林 盾
    2013 年 28 巻 2 号 p. 187-202
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
         This paper sheds light on the role of mobility on cyclic processes in mobile social dilemmas. Olson argues that large groups will allow free-riders. Erhart and Keser's experiment revealed that people formed clockwise cycles of group size and cooperation when they can change groups. But they did not compare various levels of mobility. Thus, our research question is how mobility affects the cycle and the cooperative behaviors. We conducted a laboratory experiment (with 168 participants in 40 groups in 10 sessions). Three conditions (treatments) were introduced (immobile, high mobility costs, and low mobility costs conditions). We show the following findings. (i) Mobility did not change effects of size on cooperation (N=339 group-rounds). (ii) Still, mobility accelerated effects of cooperation on size (N=360 group-rounds). As people moved more easily, cooperative groups were more likely to expand. (iii) As a result, intergroup mobility accelerated the cycle (N=40 groups). Groups rotated faster when people moved more easily. (iv) However, mobility did not raise nor decline cooperation levels (N=40 groups). Therefore, to foster cooperation, first increase mobility to free cooperators. Then, restrict mobility to exclude free-riders.
  • 繰り返し一方的最後通牒ゲーム実験による検証
    鈴木 明宏, 伊藤 健宏, 楊 培魯, 小川 一仁, 高橋 広雅, 竹本 亨
    2013 年 28 巻 2 号 p. 203-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     本稿は,一方的最後通牒ゲームを同じ二人の被験者間で繰り返し行う条件と,毎回異なる相手と繰り返し行う条件を比較することで,提案者が金銭を分配するときにnon-monetary punishmentに対する互恵性が存在するかどうかを検討した.実験の結果,一つ目の条件では応答者が提案を承諾すると拒否した場合よりも提案者は次のラウンドで高い分配額を提案するが,二つ目の条件ではそうならないことがわかった.この結果は,金銭を分配する人々の行動がnon-monetary punishmentに影響を受け,さらに互恵的に振る舞うことを示唆している.
シンポジウム 社会階層と東日本大震災
  • 被災の現実と復興への道筋
    内藤 準
    2013 年 28 巻 2 号 p. 221-222
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
  • A Survey of Futaba District
    橋本 摂子
    2013 年 28 巻 2 号 p. 223-246
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
         This paper reports on evacuees a half-year after the nuclear plant accident in Fukushima in 2011. The survey focused on the evacuees' employment status, mental health, and desire to return home. Their divergence stems largely from gender and generation. In particular, elder men had the strongest desire to return home and to seek regional recovery. The divergent response stems in part from the differential risk to radioactive contamination but also from the different social cost of evacuation due to social status. Given the politically fraught nature of the meaning of “recovery,” we need to debate carefully the nature of support for disaster victims.
  • 東日本大震災における複数のリスク構造
    仁平 典宏
    2013 年 28 巻 2 号 p. 247-268
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     社会的に弱い層が災害時により大きな被害を受けるという脆弱性のモデルは,東日本大震災においても妥当するのだろうか.この問いに答えるためには,まず津波災害と原発事故災害とを分けて考える必要がある.津波災害に関しては,高齢者と漁業従事者が多く居住する地域で特に被害は大きかったのかという問いについて,地域間比較の分析を通じて検証を試みる.その上で,モデルから外れた事例として岩手県陸前高田市に注目し,津波や仮設住宅の生活におけるリスクをどう回避してきたのか,その条件は何かということについて調査データをもとに分析する.次に,原発事故災害について検討する.その出発点は,被曝と避難に伴うリスクが高齢者と若者で異なるという事実である.だが,被曝リスクをゼロにすることにこだわる場合,そのリスク構造の差異を適切に扱えない上に,有効な政策的・実践的方向性も示せなくなる.以上を通じて,地域や時期,問題によって,特定の社会的カテゴリーが有する災害に対するリスクが多様な形をとることとその含意について論じる.
  • 暮らしの面と心の平穏の面に焦点を当てて
    麦倉 哲
    2013 年 28 巻 2 号 p. 269-288
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     東日本大震災の被災地の一つである岩手県大槌町の被災―復興状況について,脆弱性と階層性という観点から検討した.検討にあたっては,関係する各種資料や筆者が実施した仮設住宅調査結果をもとに分析した.被災地には,次の3つの次元の脆弱性と階層性がある.第一に,被災地東北の置かれた状況から,地域社会の経済指標の面,人口減少・高齢化という面,地区レベルでの公共圏の担い手などの点で,脆弱性を抱えていた.第二に,被災死者・行方不明者をみると高齢者が多く,特定の階層が避難において脆弱であった.第三に,被災存命者の間に,社会階層がみられることが明らかとなった.第三の点について,仮設住宅調査の結果を少し詳しく分析した.階層は多様であるので,筆者は,暮らし(物質・生計)面と,心の平穏(メンタル)面の2つの軸で分析した.その結果,被災前の暮らしのきびしさが,被災後にも影響を及ぼし,被災による生活への打撃があったために,暮らしのうえできびしくない層は,2割程度であった.また,心の平穏の面で,平穏の状態にあるのは,3分の1程度であった.二つの軸を組み合わせてみていくと,暮らしの面でも,心の平穏の面でも問題を抱えている層は5割を上回り,逆に,いずれの問題も意識していない層は1割程度であった.
  • 社会意識の階層的・年代的分断とその意図せざる帰結
    遠藤 薫
    2013 年 28 巻 2 号 p. 289-308
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     東日本大震災は,日本社会あるいは世界に大きな衝撃を与えた.それからすでに2年半が過ぎた現在,日本社会はどのような方向に向かおうとしているのか.本稿では,筆者らが2012年11月に実施した「東日本大震災からの復興に向けた総合的社会調査」の全国調査および被災三県調査の結果をもとに,震災後の社会意識の地域,社会階層,年代による分断の様相を分析した.その結果明らかになったのは,震災後の社会意識のあり方と社会階層,年代による分断の様相を分析し,その意図せざる結果としての社会的分断の再生産のメカニズムを指摘する.
招待論文
原著論文
  • 河野 敬雄
    2013 年 28 巻 2 号 p. 319-336
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     プレイヤーどうしの提携に基礎をおくノイマン・モルゲンシュテルンの協力ゲーム理論にしろ均衡戦略の概念を主要な分析手段に用いるナッシュの非協力ゲーム理論にしろ,確かに経済学において多大な成功を納めているが,社会学にそのまま応用した場合必ずしも成功しているとは思われない.その主因のひとつは提携形ゲームが依拠している結託の概念や非協力ゲームが依拠しているナッシュ均衡戦略の概念が社会学に適用するには強すぎる公理を仮定しているためではないかと思われる.本論文において,従来のゲーム理論が依拠する相手プレイヤーの合理性を期待せず,代わって保証水準という概念を導入することによって自然に導かれる合理的選択がMaximin原理であることを示し,いくつかの例についてナッシュ均衡に基く合理的選択理論よりも社会学的に有益と思われる結論が導かれる場合があることを示す.一例として,チキンゲームに基く核抑止力の説明には一定の合理的根拠があることが示される.
  • 教育達成の階層間格差における下降回避仮説の検討
    毛塚 和宏
    2013 年 28 巻 2 号 p. 337-354
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/01
    ジャーナル フリー
     教育達成の階層間格差を説明する相対リスク回避仮説(Breen and Goldthorpe 1997)の検証は世界各国で行われたが,日本においてはおおむね否定的な結果が得られている.本稿では,日本における受験制度を考慮して,下降回避仮説の代替モデルとして,定員と自分の成績を参照して,進学するか否かを決定するという「単純進学モデル」を構築し,マクロ・ミクロの両面から下降回避仮説と比較・検討を行った.下降回避仮説としては,BreenとGoldthorpeの相対リスク回避モデルと,学歴に対する下降回避を考慮した二重回避モデルを想定した.マクロレベルでは,数理モデルを構築し,各モデルに基づいて大学進学率を導出した.これを経験的データと照らし合わせてモデルの妥当性を検討する.ミクロレベルでは,数理モデルから導出された個人の意思決定に関する命題に対して,JGSS-2000, 2001データを用いて検討を加えた.ミクロレベルの分析には,ロジスティック回帰モデルを用い,モデルを同定するために,一部の変数に対しプロビット変換を施した.結果,下降回避仮説を導入した2つのモデルは現実のデータに対する説明力を欠き,,単純進学モデルが最も妥当性が高いことが示された.特に,相対リスク回避モデルはマクロレベルの検討において棄却された.
数理社会学会ワンステップアップ講座(7)
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