理論と方法
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30 巻 , 1 号
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学会賞受賞講演
  • 大林 真也
    2015 年 30 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     受賞論文では,成員の入れ替えのある流動的な集団において,どのようなメカニズムで助け合いが維持されるのか,というテーマを扱った.具体的には,コミュニティ・ユニオン(個人加盟型労働組合)で行われている助け合いを対象として,このテーマに取り組んだ.方法は経験的調査と数理的研究を組み合わせた分析的物語(analytic narrative)と呼ばれる方法を用いた.まず聞き取りと観察に基づいた経験的調査を行い,次に数理モデルを用いて分析を行い,対象となる助け合いのメカニズムに言及した.受賞論文の意義は,(1)現代的な課題である流動的な社会関係を対象として,協力が達成されるメカニズムに言及したこと,および(2)経験的調査と数理的分析を組合せることにより,社会現象に即した数理モデルを作成し,具体的な社会現象の説明を行ったことにあると考えられる.本稿では,後者の方法論に関して,その重要性を論じ,数理社会学および社会学全体に対して持つ意義を整理する.
特集 制度のダイナミクス—『社会学入門』を超えて—
  • 金井 雅之, 小林 盾, 内藤 準
    2015 年 30 巻 1 号 p. 13-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
  • 内藤 準
    2015 年 30 巻 1 号 p. 15-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,ジェンダーによる就職時の統計的差別において予言の自己成就を生み出す単純な社会的メカニズムを理解することである.分析の結果,仕事と家庭が両立できず共稼ぎ世帯の方が片稼ぎ世帯よりも家族生活全体の利得が低くなる低ワーク・ライフ・バランス社会において,求人数が求職者数を下回っているとき,企業が「女性は男性よりも離職しやすい」という予測(予言)に基づいて男性優先の統計的差別をおこなうと,その差別的採用自体が,実際に女性が離職しやすい状況を作り出してしまうことが示される.次に,男女平等な採用が企業にもたらすメリットに関する先行研究の指摘をふまえたうえで,企業が差別的な採用から男女平等な採用へ切り替えることが合理的になる条件を明らかにする.その条件の解釈を通じて,ワーク・ライフ・バランスの改善,雇用拡大やワークシェアリング,ポジティブアクションの促進,労働の質の変化といった社会経済的・政策的要因が,統計的差別の予言の自己成就のサイクルを断ちきる効果をもつことを明快に理解することができる.
  • Atsushi ISHIDA
    2015 年 30 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
         This article proposes a tool for describing historical changes as interactions between influential leaders' choices and public sentiment. For this purpose, I first point out another type of micro-macro linkage for social change that complements the type of micro-macro link described by Coleman's boat. Second, I propose an “initial condition game” of Richardson's arms race model as a concrete example of the above framework. The initial condition game represents an interdependent rational choice situation for influential players on the premise of public sentiment. In terms of the mathematical analysis of arms race and armed conflict, the initial condition game can be regarded as an attempt to integrate deterministic differential equation models with the strategic game theoretic models of arms races. Several cases of the initial condition game are analyzed as exemplars.
  • 大林 真也
    2015 年 30 巻 1 号 p. 51-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本稿では,コミュニティ・ユニオンの協力的制度に焦点をあて,制度の発生と集団の生成がどのような相互依存関係にあるのかを明らかにする.コミュニティ・ユニオンの援助行動は,間接互恵性に基づいていた.この間接互恵的交換のもつ時間差という性質からして,助け合いが発生し維持されるためには,後続の人が加入し集団が発展することが不可欠である.では組合員が少ない設立当時では組合員はどのように行為し,制度が発生するのだろうか.一方でコミュニティ・ユニオンでは抗議行動(協力的制度)などの外向きの活動によって新規の組合員を獲得するという事実が観察された.本稿ではこのような制度と集団の相互依存関係を明らかにすることが目的である.そのために,集団評判という概念を用いて集団規模の変化を組み込んだゲーム理論モデルを提示する.その結果,集団の拡大は協力的制度の発生に不可欠であり,かつ集団の拡大にプレイヤーの貢献が必要な場合は,設立時のプレイヤーが集団の拡大に寄与する利他的行動を行うことが明らかになった.
原著論文
  • 三谷 はるよ
    2015 年 30 巻 1 号 p. 69-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     東日本大震災後に展開されたボランティア活動に関して,かつて災害に遭った時に支援を受けた元被災者が,新たな災害に遭った被災者を支援するという「被災地のリレー」現象が指摘されている.これは,C. Lévi-Straussが「限定交換」に対比させた「一般交換」の具体例といえる.しかし国内外の先行研究において,災害ボランティア活動に一般交換の側面がみられるかを計量的に実証したものはない.
     そこで本稿では全国調査データを用いて,東日本大震災後のボランティア活動に一般交換の側面がみられるのか,みられる場合にはいかなる条件下で一般交換が発現しやすいのかを検討した.その結果,(1)過去の被災時の被援助経験は,被災地・被災地以外での震災ボランティア活動への参加に影響を与えること,(2)被災低リスク地域に住んでいる場合,被援助経験と被災地での震災ボランティア活動の関連が強まることが明らかになった.以上から,東日本大震災後のボランティア活動には一般交換の側面がみられること,さらに災害が珍しい地域で受ける “思いがけない恩” が一般交換を促す可能性が示唆された.
  • 大林 真也
    2015 年 30 巻 1 号 p. 85-100
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,集合財ゲームにおいて,集団の人数が増加することの影響を明らかにすることである.ゲーム理論の分野では,集団規模効果はこれまでワンショットのゲームまたは静的な分析が行われてきた.しかし本研究では繰り返しゲーム,とりわけ確率的ゲーム/動的ゲーム(stochastic game/dynamic game)の枠組みを用いて,ゲームが繰り返されるごとに,集団の人数が大きくなることの影響を明らかにする.またその際に,単純に人数が増えるのではなく,前期のゲームの結果によって,増加する人数が変化するという集団評判効果(Group Reputation Mechanism,以下GRMと略記)を導入する.企業の評判(業績)が個人の転職や購買行動に与える影響や,社会運動体の集合行動の大きさや成功が新規会員の参入を促す効果が指摘されており,GRMは経験的にみられる現象である.しかし,これまで理論的に充分な分析がされてこなかった.本稿では確率ゲームを応用して,こうしたGRMを分析する方法を提示する.分析の結果,非競合的で非排他的な純粋集合財供給ゲームで,前期の協力者の人数に比例して集団規模が拡大するGRMの場合,懲罰のような選択的誘因がなくても協力が達成されることが明らかになった.
  • 原田 謙, 杉澤 秀博
    2015 年 30 巻 1 号 p. 101-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,居住満足度に関連する要因を地域環境に着目して明らかにすることを目的とした.具体的には,社会的凝集性,地域荒廃度,犯罪被害認知という個人レベルの地域環境評価,そして町丁目ごとに集計した地域レベルの地域環境評価が居住満足度に及ぼす影響を,マルチレベル分析によって検討した.データは,東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県内の30自治体に居住する25歳以上の男女4,676人から得た.
     分析の結果,第一に,個人レベルで地域の社会的凝集性が高いと評価している者ほど居住満足度が高く,地域レベルで社会的凝集性が高い地域に住んでいる者ほど居住満足度が高かった.第二に,個人レベルで地域が荒廃していると評価している者ほど居住満足度が低かった.また地域荒廃度のクロスレベルの交互作用効果が有意であり,個人レベルの地域荒廃度が居住満足度に及ぼす影響は,荒廃してない地域よりも,荒廃している地域において顕著であることを示唆していた.第三に,地域レベルで犯罪被害認知が高い地域に住んでいる者ほど居住満足度が低かった.
  • 落合 仁司
    2015 年 30 巻 1 号 p. 117-125
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/10
    ジャーナル フリー
     社会構造と個人行為の因果関係は,社会学の根本問題で在り続けて来た.いわゆるコールマン・ボートは,この社会構造と個人行為の因果関係を適切に図式化している.本論は社会構造を多様体で,個人行為を微分形式で表現することにより,コールマン・ボートの微分幾何モデルを構成する.このとき社会構造が個人行為を規定すると考える方法論的集合主義と,個人行為が社会構造を規定すると考える方法論的個人主義は,各々,社会構造の圏,マクロ圏と個人行為の圏,ミクロ圏との間の関手と見ることが出来る.これより多様体上の微分形式の積分に関するストークスの定理を用いて,マクロ圏とミクロ圏は同値であることが証明され,方法論的集合主義と方法論的個人主義はいずれも正しく同値であることが帰結する.
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